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『稲盛和夫一日一言』 11月4日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月4日(土)は、「世のため人のための経営」です。

ポイント:今、資本主義社会の中でリーダーシップをとる人に求められる倫理観とは何か。「自分のため」という考え方を脇に置き、「世のため人のため」という考え方に立脚した経営を行うことを使命として自覚しなければならない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、「リーダーに求められる次元の高い考え方」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人間は、どんな考え方をしようと、その結果を自分自身で負う限り、それは自由です。しかし、企業経営者をはじめ、集団のリーダーはそうではありません。リーダーの考え方が及ぼす結果は、自分一人だけでなく、従業員にも、また社会にも累を及ぼすからです。

 集団を幸せにし、また社会を豊かなものにするために、リーダー、またはリーダーを目指す人は、素晴らしい考え方を持たなければなりません。
 どんなに環境が変わろうとも、鍛え抜かれた不動の「人格」を確立していかなければ、真のリーダーたりえないのです。

 たとえ成功を収めても、足るを知り、謙虚さを失わず、幸せであることを周囲に感謝する。同時に、他の人も幸せになるよう、何かをしてあげようという「利他の心」を持つことが大切です。成功を収め、絶好調のときに、そのように「他に善かれかし」という考え方ができるならば、決して没落の引き金を引くことにはならないはずです。

 私はボランティアで、「盛和塾」という若手経営者に経営を指南する経営塾をやっています。研鑚を積んできた塾生の中には、上場や店頭公開を果たした方も多くおられますが、中には上場した途端に勉強会に来られなくなるような方がおられます。時折ですが、そのような方が道を踏み外し、会社の業績を大きく悪化させたということが耳に入ってきたりもします。

 自分を取り巻く環境が変わるにつれて、「考え方」が変貌を遂げ、会社経営そのものも変わっていったのでしょう。人一倍「考え方」の大切さを学んだような人でも、ともすればそのようなことに陥ってしまうのです。

 「考え方」の大切さをよく理解し、日々絶えざる反省を繰り返すことを通じて、自分のものとしていかなければなりません。そうすれば、私たちの人生や仕事は、今まで以上に豊かで実り多いものになると、私は確信しています。(要約)

 今日の一言には、「世のため人のために尽くすことが、人間としての最高の行為である」という名誉会長の信念が込められています。
 またその根底には、「本来、人間は誰もが、人を助け、他の人のために尽くすことに喜びを覚える、そうした美しい心を持っている」とする考え方があります。

 しかし、利己的な思いが強過ぎると、そうした美しい心は発現してきません。利己的な思いを抑え、「利他の心」を持って世のため人のために尽くす。そうすることで、私たちの心はさらに美しく、純粋なものになっていきます。
 そのことは、名誉会長の市民フォーラムにおける「人は何のために生きるのか」という講演内容にも通じるものです。

 「人生という道場の中で、善きことを思い、善きことを行うよう努めていただきたいと思います。そのことによって、皆さんの魂、心は磨かれていきますし、そうして磨きあげられた美しい心で描いた思いは、自分の人生を必ず素晴らしいものへと変えていくはずです。」(要約)

 リーダーシップをとる人が、尊敬に値するだけの倫理観、価値観、哲学を持っているのかどうか、リーダー自らが自問するだけでなく、誰もが一市民として厳しい眼を持って、世の動向を注視していかなければならないのではないでしょうか。


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