架空の予告編を文章で書く①波の音と美少女
画面が真っ暗な中、波の音がする。
ゆっくりと明るくなり、白い雲と青い空が広がる。
カメラが下を向き、縁側が映る。縁側から足を下ろせば、太ももが濡れるくらいにまで水が来ている。
縁側近くの部屋から、ローテーブルの前に座った美少女が縁側の方をじっと見る。
見ているのは水ではなく、壊れた木のボート。ボートといっても、人が二人乗れるくらいのサイズ。
だが、すでに乗れるようなものではなくなっていた。半壊したもののさらに半分が沈んで浅瀬に刺さって先頭が空を向いているもの、木片レベルにまで破壊されたもの、見た目は壊れていないが、完全に水中にあるもの。それらを一つ一つ眺めてはため息をつく美少女。
次に彼女が思い浮かべたのは、ある青年との約束。
___必ず帰ってくるから、待っているんだよ
壁には青年と身長比べをした跡が残っており、その下にはいくつも刻まれた正の字。最初は綺麗に定規を使ったみたいに綺麗な線も床にたどり着くころには乱雑にきりつけるようなものになっている。
彼女は立ち上がって、壊れているボートを引き寄せて、まだ使えそうな木の部分を剥ぎ取って、縁側に並べていく。
___どうしても辛くなったら少し沖に出て星を見るといい。
そういったかつての青年。彼は何やらを唱え、縁側に100隻ほどのボートを出す。
100隻のボートをドローンで撮影したみたいな図。
そこから一つ一つ消えていく。壊れていく。少しずつなくなっていく速度と船数も増えていく。
そしてボロボロになった船たちをの図。
縁側で足を拭く美少女。縁側に滴る水(涙っぽい)
『いつになったら戻ってくるの? 会いたいよ……』(黒い画面に白い字でしばらく出る)
涙を拭き、綺麗で使えそうな木を使って船を作り始める。
完成したのはイカダ。縁側には食糧と水が並べられ、美少女は青年に手渡されたブローチを手で握る。
沖へ出た美少女は寝転がって星を見る。目を閉じて波の音を聞く。
再び画面は暗く、波の音だけ。
ドコッという音で目を開ける。イカダが壊れたかと思って焦る美少女。しかしそこには一隻のボート。ボートにはかつて縁側から海へ旅立った青年を幼くしたような見た目の少年。
家に連れて帰り濡れた体を拭く、すると少年は目覚める。
「お前、誰だ」
そこから口喧嘩する二人の図が描かれる。
『似ていると思ったのは、違ったみたい』(黒い画面に白い字でしばらくでる)
「お前、渚っていうのか。俺と名前、似ているな!」
「えっ」
そこから二人は話すシーン(音はなく映像だけで)
「私、会いたい人がいるの!」
「会いに行けばいいじゃん」
「でも、だめなの!」
「どうして?」
「どうしてって、わかんないけどだめなの!」
「じゃあ! わかるまで一緒に行ってあげるよ!」
そう言った少年に手を引かれ、彼が乗ってきたボートに乗せられ、海へ出る美少女。
目を閉じている美少女(心の声:どうせまた、途中で壊れる。)
船の音、ギィギィ
目を閉じている美少女アップ(あの家の外になんかいけっこないんだ!)
「うわぁ! 綺麗だなぁ!」
そこには先ほど一人で見たのとは違う綺麗な星空
美少女の瞳のアップ。
思わず青年の名前を呼ぶ美少女。
そのよこで飛び跳ねて喜ぶ少年。
「危ない! 落ちちゃうって!」
「ごめん」
「でも、どうして驚いたの?」
「わかんねぇ! でもなんか、嬉しかったぞ!……俺は決めたぞ! なんで嬉しいのかわかるまで、お前と旅をする!」
旅をすることに恐怖を感じた美少女は、目を閉じる。
暗い中で波の音がする。
タイトルドーン!
予告編終了
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