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おやじパンクス、恋をする。#152

「よお、何してんだよ」と涼介。

「何って、別になんだっていいじゃねえか、何の用だよ」

「おいおい、何をそうピリついてんだよ、情報をやろうって思ってんのによ」

「情報だあ? 何の」

「パーティだよ、パーティ。お前、スーツ持ってるか?」

「はあ? なんでだよ」

「だから、梶商事だって。嵯峨野パイセンのパーティ、第二回の情報がアップされてんだ。なあ、一緒に行こうぜ」

 俺は思わず吹き出しちまった。こいつ、あんだけボコボコにされたのに、懲りねえなあ。

 それに、だ。

 そう、それに、もうそのことはいいんだよ涼介。

「いや、もうそのことはいいんだよ」俺は脳内音声を再生するみてえに、ゆっくりと、いい気分で言った。

「はあ? もういいってどういうことだよ」

 涼介が声を荒らげてやいやい言い出したので、俺は耳からiPhoneを離して、いつの間にか自動販売機で缶ビールを買って飲んでる彼女に差し出した。

 こいつに対しては俺がうだうだ説明するよりこうした方が早い。彼女はきょとんとしてたが、「涼介」と俺が言うと、嬉しそうに手を伸ばした。

 俺は彼女の手からビールを奪うと、自販機にもたれて座り込み、タバコに火をつけた。後ろのほうで彼女が、「やあ、元気?」と言っているのが聞こえる。

 涼介、どんな反応すんだろうな。

 意外と本気で祝福してくれるような気もする。そうだな、ボンやタカやカズにも報告しなきゃな。あいつらはあいつらで、俺のために力を貸してくれたんだから。背中に彼女の楽しそうな笑い声を聞いていると、世の中に嫌なことなんて何もねえんじゃねえかって気がしてくる。人間なんて単純なもんだよな。

 ビールのロング缶が半分くらいになった頃に彼女が戻ってきて、笑い疲れたのか、目の縁に浮かんだ涙を指で拭いながら俺にiPhoneを差し出した。

「涼介、なんだって?」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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