おやじパンクス、恋をする。#153
俺が言うと彼女は思い出し笑いなのかまたケタケタ笑い、「あんたの性癖を事細かく教えてもらったわ」と言う。
「はあ? あのバカ」
「あんたたち、そんなプライベートな話までするのね。仲がいいこと」
「いや、ちょっと待て、何を聞いたんだよ」
焦って立ち上がろうとして、腰にピキンと痛みを感じて呻く。ああくそ、もう若くねえ。
「別にそんな焦ることないじゃない。減るもんじゃないし」
「いや減るとか増えるとかそういう話じゃねえだろ」
「そうそう、今夜はちょっと仕事があるから明日か明後日、って言ってたわ」
「はあ? 何がだよ」
彼女が手を差し出してくれたので、ひとまず言葉を飲み込むと、その白い、柔らかい、顔の作りとはバランスのとれていないちょっと短い指を、この上なくキュートだと思いながら握り、俺は立ち上がった。明日か明後日? いったい何のことだよ。
「涼介、変なヤツだけど、いいヤツよね」
「あー、まあ、そうだな」
俺が同意すると、彼女は嬉しそうににっこりした。
「なんか羨ましい。いい友達がいっぱいいて」
「何だよそれ」
彼女はそう言って、少しだけ寂しそうな顔をした。
「まあでも」と俺。
「これからはキミも否応なくメンバーなわけだから」
「本当に?」
「ああ、そらそうなるだろ。俺と、なんつうか……一緒にいるならさ」
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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