【エピローグ】おやじパンクス、恋をする。#249
そうそう、その雄大だが、今だに謹慎処分を食らって、部屋に閉じ込められているらしい。ざまあみろ。
え? 佐島さんは全部なかったことにするって言ったんじゃないのかって?
いやいや、雄大を監禁しているのは他でもねえ、雄大の姉ちゃん、つまり彼女だ。
バカで甘ちゃんな雄大は、次の日から何もなかったように出勤しようとすら思っていたらしい。その余りに自分勝手な考えを、彼女は全身全霊を持ってぶち壊したんだそうだ。
「もう、何発ビンタしたかわからないわよ。手が腫れちゃって、まだ痛いんだから」
「愛のムチ、もといビンタだな。雄大、むしろ喜んでんじゃねえの」
カズが言って、彼女が睨む。
「バカなこと言わないでよ。でも、今の雄大なら、私の愛情が嘘じゃないって、分かってくれると思う」
「ちげえねえ」
俺は頷いて、彼女に笑いかけた。
「あいつ、部屋で何やってんだ? 一人でよ」
カズが聞くと彼女は肩をすくめ、「どんな仕事をしようか考えてじゃないの。あいつ今、無職だから」と言った。
「え? あいつクビなの?」
驚いて聞くと、「もちろん。当たり前じゃない」と彼女は頷いてみせた。
「はは~。でもまあ、そりゃそうか」
いくら全部を水に流すつっても、自分を殺しかけた野郎を会社に置いておくわけにはいかねえよな。
いやでも、梶さんが社長だったらどうだろう。あの独特の表情を浮かべて、バカなことをした社員を、むしろそれまでより気にかけるような気もする。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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