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おやじパンクス、恋をする。#217

「そりゃ、そもそも雄大が来るのかも分かんねえんだし、それに」

「それに、なんだよ」と狂犬・涼介が噛み付いてくる。

「いや、なんつうかよ、うまくいえねえけど」

 俺が口ごもると、ボンがふう、と煙を吐いて、言った。

「なんか嫌な予感がする。そういうことだろ?」

 俺たちは誰ともなく顔を見合わせ、それから無言で窓の外へと視線を戻した。

「おい、あんまり露骨に見るなよ、気付かれるだろ」

 一番身体のでけえタカが言って、「別にいいじゃねえかよ、後でどうせ会うんだしよ」と涼介が答える。

「それにしても俺ら、最近こういうシチュエーション多いよな」

 俺の言葉に皆が頷きつつ、俺らは窓に鼻をくっつけるようにして今夜の戦場を見下ろす。確かに、ついこないだも例のレストランから彼女の部屋を覗いていたんだっけ。

 やがて階段の脇のスペースに受付台が出されると、どこからともなく客が集まり始めた。

 どいつもこいつも、クラブに遊びに来たとは思えねえかしこまった格好だ。なにが悲しくてジャケット着てクラブに来なきゃいけねえんだよ。

「あ、やべえ、ケチャップがシャツに……」カズが悲鳴を上げておしぼりで拭いたが、拳銃で撃たれたみてえな薄赤色のシミが胸元に残った。

「まあ、二度と着ねえんだからいいじゃねえか」

 そういって笑った涼介は、こないだと同じ店で同じ値段で買ったっつう黒スーツを着ている。

「それにしても、意外と俺ら、こういう格好も似合うな」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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