おやじパンクス、恋をする。#115
「もう不動産業はやんねえの?」とボン。
「完全になくすことはないと思うけど、物件管理メインで、開発はやらないかもね」
「梶さんは何て言ってんだ?」とカズ。
「もちろん、よくは思っていないわ。でも、自分がああいう状態だし、仕方ないと思ってるんじゃないかな。それに、ウチが不動産事業に変わる食い扶持を探してたのは、ホントだから」
「で、そのご褒美にてめえの女を差し出したってわけか」
しばらく黙っていた涼介が、唐突に言った。
その悪意ある言い方に、彼女も驚いた顔で涼介の方を見る。そして一瞬口を開いたが、何も言わずに閉じる。
「涼介、お前、少しは言い方ってもんがあるだろ」とカズ。
「けど、まあ、結局はそこの話になるんじゃねえの」とボンがのんびり言う。
確かにそうだ。俺は別に、嵯峨野のビジネスについて聞きたいわけじゃない。俺たちの姫が何に困っていて、どうやったら助けられるかを知りたいだけだ。
俺は腹をくくった。
「嵯峨野がキミを狙ってるって話を聞いた。本当は突っぱねたいけど、梶さんが入院してる今、会社のことを考えるとそうもいかねえ。で、パーティで嵯峨野は新しいビジネスを発表。いよいよキミは逃げらんなくなった。そういうことなんだろ」
しかし彼女の反応は意外なものだった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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