【エピローグ】おやじパンクス、恋をする。#248
達巳さんを説得できなかったという美樹本さんからの連絡を受けたカズは、何が起きても絶対言うなよっていう俺の言いつけを破って、彼女に電話をかけた。そしてその彼女から、達巳さんに連絡が行ったってわけだ。
「小さな頃から見てきた倫ちゃんだ。彼女を佐島さんが困らせてるって知って、カーっとなっちまったんだろうな」
そうだった。梶さんと兄弟分くらいの関係だったカズのおやっさんは、彼女のことをずっと前から知っていた。カズは一人っ子で女兄弟がいねえから、もしかしたら彼女を娘みたいに思ってたのかもしれねえ。
「そうなったらもう止まらねえ。あの親父、業務そっちのけで従業員かき集めて、客用のバスで飛び出したってわけ」
「なるほどなあ。さすが神崎達巳」
「ああ、息子の俺も、ちょっとカッコイイなと思ったっけ。まさかハッピ着たまま登場するとは思わなかったけどな」
まあそんなわけで、カズのおやっさん及びスーパー銭湯の社員たちの活躍、そして俺とタカと涼介による見事な暴れっぷり、そしてカズやボンによる様々な工作のおかげで、事件はなんとか収まったってわけだ。
――まさかマサさん、もしかして嵯峨野をボコボコにすれば問題は解決するとか思ってます?
この時俺の頭の中に、いつか雄大に言われたその言葉が思い浮かんだ。
ああ、そうだよ。相手は嵯峨野じゃなくボディガードや他の社員たちだったけど、確かにボコボコにぶちのめすことしか頭になかったよ。皆がいろいろ動いてくれなきゃ、今頃俺はブタ箱の中だったのかもしれねえ。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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