おやじパンクス、恋をする。#113
だけど、そんな俺らを軽蔑するような目で見て、カズは彼女に聞いた。
「けど、涼介みてえな何の関係もねえやつまで入れるかね。めぼしい社長とかを招待するってんならまだしもよ」
もう、そういう時代じゃないのよ、と彼女は首を振る。
「嵯峨野の目線の先にいるのは、古臭い考えの社長じゃない。むしろ新しい何かを求めている一般人なのよ。それこそ、普段からああいう場で遊んでいるような若者たちも、メインターゲットになり得る」
「ああ、だからお前みてえなのも入れたんだな」カズがケラケラと笑い、涼介が「うるせえバカ」と舌打ちする。
「で? 成果のほどは」ボンが聞く。
「上々だった。100人以上の集客があって、そのかなりの部分が無料の会員登録をして帰っていったわ」
「へえ。そりゃすげえ。どんな奴らが来てたんだ?」とカズ。
「普通の人。フリーターとか大学生とか、人脈広げのために来た社会人一年生とか、フライヤー見て飛び込みで入ってきた子とか、まあいろんな意味で、若い、一般の人たち。……嵯峨野はまさに彼らのような子たちが欲しいのよ」
「なんでだよ」堪らず聞く俺。彼女が何を言っているのか、笑ってしまうくらいにわからない。
「だからね、これからの時代、大事なのはネットワークなのよ。それも、情報に敏感な若者たちのね」
「ネットワークつったって、100人ぽっち集めてどうすんだよ」
「もちろん、今回きりじゃないわ。嵯峨野は今後もああいう場を頻繁につくるでしょうね。それにね、考えてもみてよ。会員が1人増えるってことは、その人の裏側のネットワークも手に入れたようなものでしょ」
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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