おやじパンクス、恋をする。#114
「う、裏側のネットワーク?」
なんだそれ、なんかエロい話?
そんな俺の考えを知ってか知らずか、ボンがゆるゆると言う。
「今はネット時代だからな。誰だって100人200人くらいの知り合いとは繋がってるだろ」
あ、ああ。そういうことね。
「け、けど、そういうネットワークを手に入れて、何すんだよ」
彼女は肩をすくめる仕草をして、言う。
「どうとでも。メンバーに対して何かを売ってもいいし、メンバーに何かを売らせてその売上をピンハネしてもいいし、それに、ネットワーク自体を売却したっていい。私もそういう世界にはまだ疎いけれど、要するにね、ネットワークを持ってるってこと自体が価値なのよ。活用の仕方はそれこそ無限にある」
「なるほどなあ。頭いいなあ」とボン。
「結局のとこ、新手のねずみ講じゃねえかよ」とカズ。
「私だってそう思うけど、でも、これは別に嵯峨野が考えだしたことじゃなくて、東京とかでは当たり前にやられてるビジネスなんだって。まあ、だからって好きになれる仕事じゃないけど」
そして彼女はビールを煽り、姿勢を正すようにして俺たちを見回した。
「とにかくね、重要なのは、梶商事は今までと全然別の会社になりつつあるってこと。社長がいなくなったってだけじゃなくて、その業態まで変わろうとしてる」
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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