おやじパンクス、恋をする。#224
さっきの男がひどく気になった。
俺達は雄大がいつものスーツ姿で来るもんだって勝手に思ってたんじゃねえか?
雄大の立場で考えてみれば、その先入観がいかにアホかがすぐ分かる。
あいつがもしここに現れる気だったとして、そして何かしらの行動を起こすつもりだったとして、それを俺に察知されたかもしれない状況で、堂々と現れると思ってるほうがどうかしてる。
「おい、待て、おい」
既に姿の見えないニットキャップの男に呼びかける。
もうすぐで人混みから解放されるってところで、後ろから激しく肩を掴まれて引っ張られた。すごい力だった。俺は決して小柄な方じゃねえが、まるでボーリングのピンみてえに回転して、そいつと真正面に対峙した。
「おいこら、痛えだろ」
そいつは背の高いスーツ姿の男で、首を斜めに傾げ、笑っているような呆然としているような危ねえ表情で言った。
俺よりは若いだろうがかといってロン毛にパーマをあててるようなバカガキとはちょっと違う、今どきリーゼントちっくなオールバックをして、ノーネクタイのシャツを一番上のボタンまで留めている。
そう、一言で言えば「気合の入った感じ」の男だった。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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