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【富士山地区】体験から気づき、共有して学びあう―ローカルSDGs人材育成プログラムの現場報告

 ろうきん森の学校では、“学校”というキーワードから人材育成に焦点を当てて取り組んでいる。特に、若者と地域の課題解決に取組み、リーダーシップの取れる人材を育成する『ローカルSDGs人材育成』を、富士山地区と広島地区で2022年より試行している。今回は富士山地区で2024年1月に行われた、のべ2日間に亘る試行プログラムの概要をリポートする。

※ローカルSDGsとは、『地域循環共生圏』のことで、国の第五次環境基本計画(2018年4月閣議決定)で提唱された、地域づくりの考え方。地域で環境・社会・経済の課題を同時解決する事業を生み出していくことを指します。

環境省HPより

 今回富士山地区で実施した「ローカルSDGs人材育成研修会」は、主に20代の若者を対象とした研修会である。SDGsやローカルSDGsを現場での体験を通して学びながら、「何を学んだか」よりも「どう学んだか」というプロセスを重視し、自己評価と他者(森の学校スタッフ等)からの評価を通じて「学び方」を学ぶことを目的としている。

 参加者はホールアース自然学校につながりがある大学生や、ホールアース自然学校の若手スタッフ5名である。
 研修のオリエンテーションを終えると、早速青空の下、二人一組でノコギリを使った丸太切りを体験した。このノコギリは二人で息を合わせて引かないとうまく切れないため、自然と相手のペースをつかんだり、声を掛け合う等コミュニケーションの機会が増える。知り合い同士もいたが、この体験で初めての参加者同士も打ち解けることができた。

丸太切り体験を通じて打ち解ける参加者

 昼食後、野外での作業ができる装備を整えてホールアース自然学校が普段活動している竹林へ向かった。ここはろうきん森の学校の活動フィールドの1つで、「里山つなぎ隊」として竹林整備活動を定期的に行っている。
 作業前に、地権者の斎藤さんに挨拶をし、裏山の竹林へ。いきなり作業に入るのではなく、事前にどのような危険が起こりうるかを出し合う「危険予知トレーニング」を受けた。その後、実際に竹林内に入って竹を伐る作業を行った。作業後は、再度斎藤さんから竹林が拡大してしまった経緯等について話を伺った。

作業前に危険予知トレーニングを受ける
竹林伐採をする参加者
作業後、地権者の斎藤さん(右)に話を伺う

 ホールアース自然学校に戻り、竹林での整備作業の経験や、斎藤さんの話を聞いての感想などを付箋に書き出し、それを模造紙にまとめて、発表した。

感想を書きだし模造紙にまとめた

 「竹林作業自体は大変だったが楽しかった」という感想が多く出て、このような体験を広めていきたいという意見や、竹についてもっと知りたいという声、また竹林整備をするばかりではなく、竹の利用方法も考えていかないと竹林問題は解決しないのではないか、という提案などがあり活用についての様々なアイデアが出された。互いのことを知り、地域の課題解決に向けたアイデアが出たところで1日目は終了した。

 2日目はあいにく朝から強い雨となった。そもそもなぜこの研修会に参加しようと思ったかと、自分が現在積極的に取り組んでいることを紹介しあい、2日目の研修がスタートした。

研修参加の動機や取り組みを紹介した

 スタッフから改めてホールアース自然学校の紹介があり、その後「30人の学級が5人になったらどんなことが起こるか?」というテーマのもと、ディスカッションをした。中山間地の過疎化についての現状について紹介があり、その課題解決に取り組んでいる一事例として「柚野(ゆの)商店」を見学した。

 柚野商店はホールアース自然学校からほど近い、富士宮市柚野地区にある唯一の商店である。以前はガソリンスタンドとミニコンビニが併設された個人商店であったが、店主の高齢化などが理由で閉店することとなった。閉店すると近隣に商店がなくなるため、高齢の地域住民を中心に日常の買い物が不便になる。この課題を解決すべく、地域の女性たちが店を引き継ぎ2022年、リニューアルオープンした。

柚野商店で話を聴く参加者

 柚野商店での見学を終えて昼食をはさみ、感じたことを共有した。話題提供として、ムーブメントがどのように発生し拡大していくのかを紹介した動画を視聴し、人口減少する地域の中で、自分だったらどのような活動を起こしていきたいかについて、まずは自分自身のリソース(好きなこと、関心のあること、これまで取り組んできたこと等)を模造紙にまとめるワークを実施した。

各自が今後のアクションプランをまとめ、発表した

 その後、地域の実情を踏まえながら、自分を活かした活動について考えてもらい、それをそれぞれ用紙にまとめて発表し合った。出てきたプランとしは、
・地域の自然資源をフルに活かした自然体験大会
・広大な富士山麓で表現教育のワークショップ開催
・在日外国人が日本の日常的な文化を学ぶ里山留学
・ゆるキャン等活かしたコンテンツツーリズム実施
・企業が出資し、地区住民が先生の交流センター開設
などが紹介され、各自の特性を盛り込んだユニークな発表が続いた。

 今回のローカルSDGs人材育成プログラムは、竹林整備という作業体験だけでなく、地域の方から直接話を伺ったこと、また柚野商店の事例では、地域課題解決に取り組む現場に実際に足を運んで当事者に話を聴くなど、一歩踏み込んだ内容となった。そして、それぞれの気づきをグループで共有することで、学びにつなげることができたと感じた。

 現場で体験し、当事者に話を聴き、皆で気づきを共有する。このプロセスを通して個々の学びが深まり、地域課題を解決するためのアクションプランのきっかけが生まれていく。今回の富士山地区での試行で、2024年度以降のローカルSDGs人材育成プログラムの大枠をつかむことができたのではないだろうか。

報告者:大武圭介(ろうきん森の学校全国事務局)

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