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学生時代は全ての製作課題にレースを取り入れて2度の卒業製作で学院長賞とデザイン賞を受賞…

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学生時代は全ての製作課題にレースを取り入れて2度の卒業製作で学院長賞とデザイン賞を受賞。卒業後株式会社ルシアンのレースデザイナーとして勤務し、「パリ・オートクチュール組合学校」留学を経て現在はフリーランスデザイナーとして活動。レース研究会を主宰し、定例勉強会を開催。OIDFA会員

マガジン

  • 16世紀の印刷メディアとレース

    印刷技術の発明により飛躍的に刊行数をふやしていった16世紀から17世紀前期にかけてのレースのための図案集の歴史についてまとめています。

  • あるブリュッセルのレース商の物語

    絶え間ない努力により、18世紀の四分の三世紀にわたりヨーロッパ諸国の宮廷の御用レース商人として世の人々に羨望された特権の名声を支えた【 ゴドフロワ家 】の家族の物語です。 18世紀の歴史的な背景とともに、レース商人一家の人間模様を綴りました。

最近の記事

  • 固定された記事

アンティークレースの世界をご存知ですか

 私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 人生を変えたアンティークレースの魅力と出会い ー アンティークレースとの出会い  私が二十歳のころ、アンティークブームが起こって各地で催事などのイベントが行われていました。そのうちのひとつで、銀座のデパートで開催されていたアンティークフェアがきっかけでした。  はじめて実際の古いアンテ

    • 16世紀の印刷メディアとレース その4

       私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 前回の記事は↓こちらをお読みください。 16世紀末から17世紀初頭 ー ヴィンチオロ以降  ヴィンチオロがパリで図案集を出版した同時期の1591年に、ヴェネツィアでジョヴァンニ・バティスタ・チオッティGiovanni Battista Ciottiが《 Prima parte de'

      • 16世紀の印刷メディアとレース その3

         私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 前回の記事は↓こちらをお読みください。 パガーノ以降の図案集 ー ドイツの刊行物  ストラスブルクで1556年にハンス・ホフマンHans Hoffmanの手になる《 New Modelbüch. Allen Nägerin unnd Sydenstickern Sehr nutzlic

        • 16世紀の印刷メディアとレース その2

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 前回の記事は↓こちらをお読みください。 図案集とレース ー マッテオ・パガーノの登場  イタリア人のマッテオ・パガーノMatteo Pagano ( 1515年 - 1588年 )はヴェネツィアで多くの図案集を出版した人物で、1544年に《 Spechio di pensieri de

        • 固定された記事

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        • 16世紀の印刷メディアとレース
          4本
        • あるブリュッセルのレース商の物語
          10本

        記事

          16世紀の印刷メディアとレース その1

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 活版印刷と木版画の活用 ー グーテンベルグの登場  ヨーロッパでは1445年ごろにヨハネス・グーテンベルクが活版印刷術を最初に行ったとされています。  ヨハネス・ゲンスフライシュ・ツア・ラーデン・ツム・グーテンベルJohannes Gensfleisch zur Laden zum G

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          AGNUS DEI 神の子羊のポワン・ティレ

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 祭壇布 ー 色糸のポワン・ティレ  ポワン・ティレ( point tiré )はフランス語でドロンワーク( drawn work )を意味して、布地の経糸緯糸を引きながらステッチをかけたり糸をかがったりして模様を描く技法です。  16世紀初期にイタリアで発展した技法とされ、イタリアでは

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          マリー・アントワネットのレースの肩掛け

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 フランスのオークション ー SOUVENIRS HISTORIQUES  2017年のフランスのオークションで手数料込みで8,595ユーロで落札されたレースのフィシュー( 肩掛け )は、フランス王妃マリー・アントワネットが身に着けたと伝わるものでした。  マリー=アントワネット=ジョゼ

          マリー・アントワネットのレースの肩掛け

          わたしの蒐集履歴書 その4

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 #私のコレクション  前回の記事は↓こちらをお読みください。 19世紀のレース ー ポワン・ド・ガーズとポワン・ダランソン 私のコレクションというお題。  日本でレース好きの方が好まれるのは、多くはポワン・ド・ガーズやポワン・ダランソンと呼ばれる19世紀後期以降のレースではないでし

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          わたしの蒐集履歴書 その3

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 #私のコレクション  前回の記事は↓こちらをお読みください。 初期のレース ー 16世紀末から17世紀前期 私のコレクションというお題。  その2では17世紀後期のレースについてお話ししましたが、アンティーク・レースのコレクションを重ね徐々に研究や知識が深まると同時に初期のレースに

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          わたしの蒐集履歴書 その2

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 #私のコレクション  前回の記事は↓こちらをお読みください。 17世紀のレース ー グロ・ポワン・ド・ヴニーズ 私のコレクションというお題。  その1でお話ししたように私のコレクションはアンティーク・レースなのです。そして、それは18世紀前期のニードルレースを主に蒐集していたのでし

          わたしの蒐集履歴書 その2

          わたしの蒐集履歴書 その1

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 #私のコレクション 糸の宝石 ー 古い染織品  私のコレクションというお題。  私はもちろんアンティーク・レースなのですが、実は古い染織品全般、ファッションブック(版画に手彩色で着色した図版が綴じ込まれた18世紀から20世紀初頭にかけてのファッション雑誌)、ヴィンテージウエアなどなど

          わたしの蒐集履歴書 その1

          最後期のポワン・ド・フランス

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 ブリッド・ピコテ Brides picotées ー ポワンクト・ド・フランス  1665年にフランス国王ルイ14世は、財務総監のジャン=バティスト・コルベール ( 1619-1683 )の献言を受け入れてフランス各地に《 王立レース製作所 》を設置することを決定しました。  国王は王

          最後期のポワン・ド・フランス

          羊皮紙と不透明水彩 ー ある家族の細密肖像画 ー

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 #私のコレクション Karl Ludwig Fernow カール・ルートヴィヒ・フェルノー ー オランダからはるばる日本にやってきた細密画  私のコレクションというテーマ。  私のコレクションのなかにある一枚の水彩画。グワッシュという不透明なゴム水彩絵具でヴェラムと呼ばれる羊皮紙に描

          羊皮紙と不透明水彩 ー ある家族の細密肖像画 ー

          アンティーク・レースと出会える博物館 ー フランス共和国編 ー

          ノルマンディー ー Musée des Beaux-Arts et de la Dentelle  ノルマンディー地方オルヌ県の街アランソンに所在する美術館。  絵画、素描、版画、彫刻などの美術品とともに1900年に設置された民俗学に基づいたカンボジア美術、アランソンの街でかつて産業として発展したポワン・ダランソンをはじめとするアンティーク・レースが所蔵展示されています。  同館は1857年に開館し、絵画などの芸術作品が19世紀後期に集中してコレクションされました。ア

          アンティーク・レースと出会える博物館 ー フランス共和国編 ー

          メヘレンの広幅レース ー超レア・シリーズー

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 18世紀のレース商人たちー メヘレン・レース  フランスでマリーヌと呼ばれたメヘレン・ボビンレースは、18世紀を通し夏の装い用のレースとしてレース商たちは4月頃から取り揃えた季節商材でした。  一般的に連続糸技法のボビン・レースだと考えられているメヘレン・レースですが、製作された地域によ

          メヘレンの広幅レース ー超レア・シリーズー

          あるブリュッセルのレース商の物語 最終話

           私は東京と大阪で活動している、アンティークレースを研究する研究会『Accademia dei Merletti』を主宰し、「アンティークレース」についての考察や周知を行なっています。 前回までのあらすじ  パリに住む兄のジャン=バティスト2世は妹に宛てて、王太子( のちの国王ルイ16世 )と神聖ローマ帝国の大公女マリー・アントワネットとの婚礼に伴う祝宴にブリュッセルに住む妹を招待するのでした。 競合との鬩ぎ合い ー カロン夫人  兄が親愛の情を示すこの愛すべき妹は、

          あるブリュッセルのレース商の物語 最終話