オッパおごって!〜日韓食文化比較〜

私は韓国料理が大好きだ。食べると体からエネルギーがふつふつと湧き上がる。韓国に留学していた10年前、1食は約5000ウォン、約500円でお腹いっぱいの韓国料理が食べられた。学校を出ると美味しいご飯屋がズラリ。日替わりでいろんなお店に行くのが楽しかった。

韓国料理の美食っぷりは誰もが知るところ。今回はそんな食事にまつわる文化を日本と比較してみたい。

一人で食べんといて

韓国で食事の基本と言えば、「みんなで」食べることだ。ご飯屋に入っても、2人分以上じゃないとオーダーできないメニューがたくさんある。

不便に感じたのは一人で食事をする時だ。忙しい日など、パパっと適当に食事を済ませたい。だが、一人で食べているところを知り合いに見られると「なんで一人なん?そんな寂しい事せんといてくれる!?」と半分怒りのテンションで話しかけられる。だから一人の時は、誰かに会う前に食べ終わろうと、超高速で食べていた。

思い返せば、日本や中国の大学に通っていた時は平気で一人で食事をした。韓国ほど一人で食べるのが気まずいと思った事はなかった。

とにかく、食べ物はみんなで分けて食べるのが当たり前。お菓子や飲み物でも、何かを口にする時、自分一人だけ食べるというのは、ある意味で自己中心的な人だという印象を与えるようだ。

ある日、一人で食べている小さな子どもを叱る母親を見かけた。「なんで一人で食べんねん!みんなに分けてや」。小さい子の食事は大人と違うのだから、子どもの分は子どもが食べればいいのではと思ったが、何でも必ず分けて食べるという文化は、小さい時から教え込まれるようだ。

ちょい残しが妥当?

ちなみに、料理は少し残すくらいが妥当な食べ方であったりするのも韓国ならではかもしれない。食べ終わってしまいお腹が空いていたら可哀想だと、家庭でも食堂でも食事はいつも多めに出てくる。おかわりもできるよう多めに準備してある。それは、人をもてなすための作り手の思いやりなのだ。

私は当初、日本人的な感覚で、出されるものは完食しなくては失礼だと思い、片っ端から一生懸命食べていた。食べても食べても、どんどん食事は出てくる。あまりの多さに、若干気持ちが悪くなることも・・・。日本のようにご飯を残す事で「口に合わない、美味しくない」といった印象を与えてしまうことはないのだと、途中で気がついたのであった。

食事の量が多い韓国や中国で暮らして日本に帰ると、外食での量の少なさに驚く。人の家にお呼ばれしても、やっぱり量は圧倒的に少ない。「少なっ!」という心の声は、決して口に出してはいけない。韓国や中国の友達も、日本に来ると同じことを思っているのだろうか。

オッパおごって!

先輩が後輩におごる。まあ、どの国でもだいたいそうだと思うのだが、韓国はかなりその傾向が強い。「先輩!ご飯おごってください!」なんて、相当気の知れた先輩にでもないと、馴れ馴れしくて言えないが、韓国ではそう言って慕って来る後輩が可愛がられる。

韓国の友人から、とにかく「オッパ!(オンニ!)ご飯おごってください!」って言って先輩と仲良くなりなさい、とアドバイスをもらったことがある。そんな失礼じゃないか、と気が引けていたのだが、勇気を出して言ってみた。あっさりオーケー。「ぜひ機会があれば」とかいう言葉でお茶を濁されるのではなく、「じゃあ来週はどう?」と、具体的な返事が返ってきた。

こうして、韓国の先輩には、さんざん美味しいものをご馳走していただいた。私が先輩になり後輩におごる番になった時には、「韓国で先輩にさんざん美味しいものを食べさせてもらったのよ」と必ず言うようにしている。

キムチ依存症

韓国といえばキムチ。私は大のキムチファンだ。韓国のキムチは種類が豊富で美味しい。一般家庭には普通の冷蔵庫とは別にキムチ冷蔵庫があるほど、韓国人にとってなくてはならない存在だ。

とにかく何を食べても、キムチは副菜で出てくる。パスタなどの洋食屋でも、なぜかキムチ。これがないと、なぜか口寂しく、食事が終わった気がしないのが韓国人だ。

私も1年間、毎食キムチを副菜で食べていた結果、何を食べてもキムチがないと落ち着かないという境地にまで達してしまった。日本に帰るとキムチがないのが、つらくてしょうがない。市販のキムチでは物足りず、自分でキムチを漬けるほどにこだわった。具材を微妙に自分の好みに調節する。やっぱりキムチは手作りが一番美味しい。

韓国料理は辛い、ニンニクもふんだんに使う。だからだろう、食後には女子がトイレにズラリと並んでシャカシャカ歯磨きをする。日本や中国ではあまり見ない光景だ。このお陰で、私もいつしか歯ブラシをカバンに入れていつでも歯磨きをする良い習慣が身についていた。

食事はいつも文化とセットだ。その国の文化にどっぷり浸かって食べるご飯は美味しい。そういえば、韓国留学から帰って約9年。キムチ依存症はいつの間にかどこかにいってしまったなあ。

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