やさぐれ犬の哀歌

犬だからって、みんながみんな帰巣本能が
ある訳じゃない。苦手なヤツもいる。
オレもその一人だ、いや一匹だ。
血統書なんかないよ、雑種だから。

元々、捨て犬なのさ。
お決まりの、段ボールの中にいた所
他の兄弟は毛色も良いし、愛想も良かったのだろう。
すぐに連れて行かれたが、オレだけ残ったんだ。

いいよ、別に。オレは媚びなかった。
雑種のちょっとしたプライドさ、ハハハ。
と言っても仔犬だ、腹は減る。
しぶしぶでも、拾ってくれたご主人は
可愛がってくれたよ。仔犬時代だけはね。
けど成犬になったら、ほったらかし。

最近、散歩にも行かないし、オレに声すらかけないよ。
唯一の救いは、庭で放し飼いにしてること。
いつもこっそり抜け出して、勝手に散歩してるんだ。

で、帰れなくなっちゃったって訳。
家を探すの面倒くさいし、このまま自由を満喫でも
いいけど、野犬になっちまうな。
いつか捕まるだろうし、それで殺されるのは
何か腹立つな。
やっぱり家に帰るか・・ってオレ、帰巣本能問題を
抱えていたわ。どーしよ。

あれ？ご主人がやってきた。
まさか、オレを探して？
ん？何か嬉しいぞ！
知らず知らずのうちに、オレはちぎれんばかりに
シッポを振って、本能のまま喜びを表した。

ハイ、ただの犬です。
おい、オレ！雑種のプライドはどこに行った・・。