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こばなし
2023年5月31日 18:12
彼女と初ドライブ。名所を目指したはずが、なぜか見慣れた海辺に着いた。 ナビの故障?「綺麗ね」「ま、まあね」 ここは前職の頃よく来たのだ。 ……人気がなく死体捨て場に丁度良い。「ッ!?」 視線を感じ振り返る。「どした?」「……いや」 そこには苦楽を共にした、愛車があるだけだった。
2023年5月30日 18:36
「誰よ、その女」「いや、知らん」「この期に及んで言い逃れする?」「言い逃れって……」「もういい、さよなら」 彼女は泣きながら俺の部屋を去った。 まただ。同じパターンで5人にフラれている。 決まって身に覚えのない浮気を糾弾される。 非難の目は必ず、俺の左肩をにらみつけているのだ。
2023年5月29日 19:48
「新キャラ実装されるんだって。旬な声優さんがCV」「マジか」 教室の扉が開き、担任が入ってくる。「今日は転校生を紹介します」「転校生の黄島ニコです」 先ほど友人と話した新キャラの名前と同じで、声は人気声優のそれだった。「さっきの話って、ゲームの話だよな?」「そうだけど?」
2023年5月29日 07:11
「ピンポーン」 騒音の苦情を言うべく、隣の部屋のインターホンを鳴らす。 応答は無く、ただ沈黙が広がるのみ。「ピンポーン」 別の時間に訪れても同じ結果。 日を改めて繰り返す。 なのに騒音は毎日のように止まない。 しびれを切らし、大家に連絡を入れると。「その部屋に人は住んでいませんよ」
2023年5月28日 19:35
カッとなって夫を殺した。遺体は山に捨て、見つかることは無いだろう。「おはよう。昨日はひどかったな」 なのに翌朝、その夫が平然と現れた。「なんで……!?」「なんでって。いや、残機」「残機?」 呆れた様子で頭を掻く夫。「リアル過ぎるのも考え物だな。ま、現実じゃなくて良かった」
2023年5月27日 19:47
内定0の俺は、就活強者の友人にたずねる。「なんか裏技無いの?」「面接室で、前に一歩、右に二歩進んだ位置で回れ右して、最敬礼してそのまま退室してみろ。必ず受かる」「なんだそのバグ技」 後日。「マジで受かった」「良かった。これ使えるの、ベータ版の間だけだからな」 ベータ版……?
2023年5月26日 20:04
「30まで独身だったら結婚しよ?」「ははっ。30まで独身とか無いわ」 そして12年後、俺たちは30歳になった。 結婚どころか俺には恋人すらできなかった。 だって、「分かってたんだ。俺にはお前しかいないんだって」「えっ」 すると彼女は引き気味に言う。「まだ結婚してないの……?」
2023年5月25日 20:33
愛が、ずっと欲しかったの。 でもね、ママやパパに優しくされようと、どんなイケメンと付き合おうと、愛は手に入らなかった。 だけど、やっと気付いたの。「元気な赤ちゃんですよ!」 愛は、与えるものなんだ、って。 産声を上げる我が子に捧げる。「……愛してる」 初めから、私の中にあったんだ。
2023年5月24日 19:49
「なあ、知ってるか?」 友人は唐突に口を開く。「寝不足になると、コミュ力が落ちるんだとよ」 へえ、それは知らなかった。「いきなりしゃべり出したりするんだとさ」 じゃあ、君は今まさに寝不足なんだな。 ……と突っ込みたかったが、虚ろな目で空中を見ている友人が恐くて、そっと無視を決めた。
2023年5月23日 20:32
「でね、彼氏がさ」「うん、うん」 10分後。「なんと、私の友達と」「うん……うん」 30分後。「ごめん、私の話、つまらないよね。帰るね……」「は? ダメだよ」「……え?」「ちゃんと終わらせなきゃ」「う、うん……?」「これは」「……」「あなたが始めた物語でしょ?」「進撃?」
2023年5月22日 21:08
「なあ、知ってるか」「いきなり何だよ?」「世の中には二種類の人間がいる」「二種類?」「自分が変態であることを隠す変態と、隠さない変態だ」「……お前、何が言いたい?」「つまり、お前も変態ってことさ」「……でゅふふ。ならばお前も変態でふ!」「ウフフ。さらけ出し合いましょう!」
2023年5月21日 19:27
俺は編集者。将来有望な作家の卵を探している。 ある時、小説投稿サイトを通じ、才能を感じる人と出会った。「君、すごいね。本当にアマチュア?」「いやいや、自分なんて全然だめです」「それは謙遜でしかないさ」「自分なんて芥川龍之介先生レベルでしかないっすよ」「むしろ自信過剰だった」
2023年5月20日 20:18
コンビニにて。 新人バイトの俺は、先輩と共にレジに立つ。「「いらっしゃーせー」」 いかつい客が入ってきた。「69番」 なんだそれ。タバコの番号だろうか?「……AKー69」 銃じゃねえか。あるわけねえだろ、とまごついていると、先輩が助けに来てくれた。「どうぞ」「なんであるんだよ」
2023年5月19日 19:32
「これ、平面だろ」 僕の作ったアート作品【落とし穴】を前に友人が言う。「さあな」「絶対に平面だ」 確かに、我ながら高いクオリティだ。「確かめてみろ」「証明しよう。それっ」 彼は穴に吸い込まれていった。「完成」 この作品は【思い込みという落とし穴】にはまることで真に完成するのだ。