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RENAの軌跡

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シンガーソングライター 鳥居れなさんの連載エッセイを、まとめました✨ 幼少期や10代の頃を、感じたままに綴られています⏳ 語り口がユニークで、一篇の物語としても楽しめます📖
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2021年3月の記事一覧

10.こめじい。こめばあ。

10.こめじい。こめばあ。

父と一緒に暮らさなくなってからは、
月に1度だけ、
父親と兄と私で会う約束があった。
父が車で迎えに来ると、
まずは抱っこで体重測定。
父は丁寧に毎月違う感想を述べてくれた。

そして今日の旅のお供を
近所にあった駄菓子屋の、
大津製菓へ調達しに行った。
父は大津製菓のことを
「ジャモージさんのところ」と言っていた。
アンパンマンに出てくる
〝ジャムおじさん〟のことを言っていたのだろうけど、
そこ

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09.ナマモノ

09.ナマモノ

何かが生まれようとする瞬間は
いつも突然で、振り回されることもよくある
それは電車の中でも、眠りから覚めた瞬間でも、
熱したフライパンに卵を落とした瞬間にも。

(たまごが、)と思いながらも…

慌ててスマートフォンのメモアプリを開いて
たったいま浮かびあがったばかりの、
まだ輪郭のないぼんやりとしたものを
一生懸命、文字に置き換える。

慌ててスマートフォンのボイスメモを開いて
体の中で鳴ったメ

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08.ステージ

08.ステージ

noteを書くようになってから
鳥居れなの5歳頃には
大切なものが色々と詰まっていることを知った。

5歳当時は、環境が色々と変化していたようだが
母親はそれでも私と兄に習い事をさせてくれた

英会話教室
親戚が先生をしていたこともあり、通っていた。
記憶に残っているのは、
イラストカードを見て名詞を英語で答えるものと
クリスマスのイベントで、甘い香りのする毛糸のたてがみをつけた馬のぬいぐるみを貰

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07.ミモザ

07.ミモザ

平成10年3月26日、木曜日。 天気:くもり
鳥居れなが人間のカタチをして、この世に嬉々として誕生した。
いや、わからない。
うまれた時の涙が嬉しみの涙か、はたして絶望の涙だったか。
どちらにせよ、泣きながらうまれたのだ。

鳥居れなはよく泣く。

感情のメーターを振る針がきっと敏感なのだと思う。

小学校低学年の頃に母親の膝の上で
突然にボロボロと泣き出す演技をしたことがあった。

母に「どうや

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