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1頭のトラと10匹の猫

1、1頭のトラ
 日本のどこかの屋敷に仙波さんという10匹の猫を飼ったお婆さんがいた。仙波さんの日課は、5時くらいに起きて、猫達に餌くをあげてからトイレに行き、縁側に出て二度寝をすることだ。今朝も縁側で二度寝を楽しむ。朝の風が気持ちいい。食事を終えて縁側に来た猫たちはは寝ているものもいれば、戯れているものもいる。そうやって涼しい風に当たっている時、隣の家のおじさんが猛ダッシュでやってきた。どうやら焦っている。

「どうしたんだい?」と眠そうに仙波さんが問いかけると、おじさんは怒鳴った。
「おい!何をしているんだ!外になんか出て!」仙波さんは縁側から降りながら、
「一体全体どう言うことだい?」と言った。
「トラだよトラ!」
「トラがなんだい?」
「あんた昨日の放送聞いとらんのか?」
「放送?」
「昨日の夜だよ!何度も放送しとっただろうが!」
「えっ?昨日の夜?わたしゃ、寝てたから聞いとらんなぁ」仙波さんがのんびり言う。すると、全くなんも知らんのかと言いながら、おじさんは息を整えて、猛スピードで話した。

「実はな、昨日の夜、トラが檻を脱走する事件があっただってよ。なんでも南獅子動物園の飼育員さんが、トラの檻の鍵をかけ忘れて、賢いトラは檻から出てしまったんだってよ。」
これを聞いて仙波さんは詳しい話を聞きたくなった。
「でもどうしてそんな事が分かるんだい?」
「その映像が監視カメラにも映っていて、昨日の夜も何度も何度も放送されていたんだ。そんな大変な時に、あんたはいつも通り縁側で寝ているもんだから。俺はびっくりしてが飛んできたわけだ!」

仙波さんは、ポカーンとなった。なるほど、昨日の夜は寒いかったら毛布を重ねてゆっくりと寝ていた。その時〜ピンポンパンポーン〜と高い音が電柱の上のスピーカーから聞こえた。次に人の声がする。

『皆様にお知らせします、昨日の夜、午後10時ごろ、南獅子動物園のトラが逃げ出しました。警察が市内を捜索しておりますが、今だに見つかっておりません。その為、トラが見つかるまで、建物から出ないようにしてください。これは、皆さんの安全のためです。どうか建物から出ないでください。もう一度繰り返します。トラが南獅子動物園から脱走しました。ゼッタイに建物から出ないでください。どうぞご了承くださいますようお願いします』

色んな所からざわめきが聞こえる。家から出るなよとおじさんは念を押して家に帰って行った。

まぁ大変、大変と言いながら、仙波さんは、猫達を2階に連れて行って、あたふたしながら朝ごはんを作った。今日の朝ごはんは、仙波さんの大好物の厚焼き卵とご飯。落ち着きたい時はこれに限ると仙波さんは思う。朝ごはんを食べて、やっと一息つけた、少しだけホッとする。そして、猫がちゃんといるか確認する。みたらしがいない!少しだけ窓が空いている。ここから逃げたのか!みたらしは、縁側で寝るのが楽しみだったので、それを邪魔されて、怒ったのかもしれない。とするとまた外に戻っていることになる。
ならば、みたらしがトラとと出くわしているかもしれない。気になって窓を開け、下を見てみる。

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