くさかげとんぼ

とんぼみたいに自由に飛んでいる人。人間について考えるのが好き。仏教徒。 風俗嬢、障がい…

くさかげとんぼ

とんぼみたいに自由に飛んでいる人。人間について考えるのが好き。仏教徒。 風俗嬢、障がい者福祉、農業の仕事を通して気付いたことを投稿していきます。 セクシュアリティのことも。 私が見たもの感じたものしか書けないのでエッセイかな!

最近の記事

デビュー戦

 SMの風俗店なのに明るい雰囲気の店。受付のお兄さんと、店長のおばちゃんの人柄がよくてこの店で働くことに決めた。  お店のシステムと仕事の内容を聞いた。でも、これは基本で、お客さん一人ひとり違うから、どんな仕事になるかやってみないと分からないらしい。 お店のホームページに載せるためのプロフィールを書く。 プレイ内容にはわからない言葉がたくさん並んでいるので、一つ一つ意味を聞きながら、自分が出来るものとできないものにマルバツを付けていく。 小島さんにこっそり小声で聞いた。 「私

    • ザクロ「ここで働かせてください!」

       私はいったい誰にだったら心を体を解放できるのだろう?その謎は解けなかったが、恋愛もセックスも知らない、そのことに劣等感を抱いて足元を掬われているダサくてカッコワルイ自分を私は嫌いだった。 こうやって立ち止まっている時間がもったいないから進ませて。  南口の生垣が今年も甘く香るので、立ち止まっては嗅いだ。いい匂い。この白い花はなんと言う名前だろう。まだ知らない。あたしは駅ビルの、大きな本屋に寄った。  植物図鑑の樹のページ、六月の開花で白い花、どうやらクチナシだ。生垣のクチ

      • 恋愛できるかな

         一人旅の帰り、鹿児島空港から羽田へ向かう飛行機で、私はさらに体調が悪くなった。幻覚のような妄想のようなものが見えていた。やっとの思いで家にたどり着き、這いつくばって、ベットに倒れこんだ。寝付けずに、うなされた。頭が割れそうで狂ってしまうのではないかという恐怖に襲われた夜だった。 一人ぼっちを楽しむための一人旅で、私は虚しさを抱えて帰ってきたのだ。  それからひどい自己嫌悪に陥っていった。  私はあの時に、性を解放できなかったことを後悔していた。あの男の子達の中では、バカや

        • 夜の世界を知らなくちゃ

           少し怖いけれど知りたいこと、それは夜の世界の人たちのこと。 子供の頃、商店街には昼間は閉まっているお店があることを知っていた。その裏路地が夜になると、紫やピンクの看板が出て輝きだす。 「ここは何のお店屋さん?」母に聞いても教えてくれない。教えてもらえないと知りたくなる。夜になるとその扉は開いた。お店から出てくる、おしゃれをして短いスカートをはいた女の人は、化粧をしない素朴な母とは違う種類の女性だった。 そのうちに水商売という仕事があると聞いて、秘かに憧れるようになった。 艶

          しょうがいふくしたのし

          私は福祉に十年ほど関わってきた。作業所、グループホーム、ヘルパー、放課後デイなど、ボランティアも含めたら、何かしらの形でずっと障がいのある人たちと関わっている。  障がいのある人たちに興味を持った光景をはっきりと覚えている。 小学校六年の音楽会。 市民会館の大ホール。 太くて長い蛇腹のホースを振り回す子。 聞いたことのないユーモラスな音。 その時の私はとても愉快な気持ちだった。  市内の小学校の六年生が一同に集い、課題曲と自由曲を発表する音楽会。私たち第四小学校も練習

          しょうがいふくしたのし

          一人旅

           サラの行動力を吸収した私は、イラク戦争の反対運動に一生懸命になり、授業をサボっては国会議事堂前やアメリカ大使館へ通う日々を過ごしていた。 その時に出会った大人たちの一人、70年代にヒッピーだったハルさん。ゴールデンウィークの連休は、ハルさんを頼って鹿児島へ行くことにした。そこから屋久島へ行こう。  いつか映画で見た屋久島。屋久杉は千年も生きている樹を見たいな。   仕事帰りにさっそく登山道具を買いに行き、アウトドアショップで、リュックと、カッパと、トレッキングシューズなどを

          脱皮(親友と心の別れ)

           彼女の姿をはじめて見たのは、文化祭の夕方のステージ。ショートカットの彼女はマイクを握り一人で歌っていた。そんなパフォーマンスをする子は他にいなかったからとても印象に残っていた。  そのころ高校一年生の私は全てが虚しかった。中学校から抜け出せて、高校は楽しくなるはずだった。けれど現実はそうでもない。自分のコンプレックスばかりに気づかされる日々。膨らんだ自意識を持て余し、私はまだ自分の小さな世界にいた。でもそのことに気付き始めていた。  二学期、たまたま彼女と隣の席になった。

          脱皮(親友と心の別れ)

          発見(介助の仕事にて)

           中学一年の時の同級生が、帰り道に近所の知的障がいの子を「シンショウ」と言って笑った。小学校の頃にはほっぺをつねり、虐めていたと言う。彼女は「この子たち、何も言わないから」と被害を訴えることの出来ない相手を、当たり前のように虐め、楽しんでいた。欲望の赴くままサディティックな快感をむき出しにする同級生を見て、私は自分の中の一番いやなものを見ているようではっとした。  そしてこの感じが、大人の社会の中でも蔓延しているのを知ったとき、私は障がい者のことを理解したいと思った。  高

          発見(介助の仕事にて)

          風俗嬢になった内訳(処女ですが…)

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          私の知らないクリトリスの世界

          私の出会ったFTMの彼の体には、まだおっぱいがあった。「男だけど……女?」トランス男性だと認識しているのに、一瞬、私の脳が混乱した。 子供の頃、スーパーサイヤ人になりたくて修行を積んだ彼は、18歳でホルモン治療をはじめている。声も、顔も、服を着ていれば男性にしか見えない。 男性ホルモンの作用については知っていたので、彼の成長したクリトリスを見た時、あ、こうなっているんだね!と思って、指で撫でて挨拶をした。 彼はキスがとても上手い。ゆっくりとしたリズムが私をリラックスさせる。私

          私の知らないクリトリスの世界