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スマートホーム。海外比較と事例から考える日本ならではの普及の姿

2023年4月、RoomClip住文化研究所は、LIVING TECH協会、スタティスタ・ジャパンとの協働で、スマート家電・スマートホームに関する生活者調査レポート「普及が遅い?どう広がっていく?2023 日本のスマートホーム事情」を発表しました。今回は、LIVING TECH協会さまをゲストにお迎えし、レポートについて解説したライブの模様をお届けします。(※本テキストは、2023年4月に実施されたライブ配信「日本のスマートホーム。今後の伸びしろは?」のダイジェスト版です)

・ゲストスピーカー:一般社団法人 LIVING TECH協会 PR担当 田形梓さま
・スピーカー:
 ルームクリップ株式会社 RoomClip住文化研究所 研究員 竹内優、水上淳史

●完全版テキストは文末のリンクからダウンロードいただけます●

LIVING TECH協会らと行った共同調査

【田形】スマートホーム市場は大きな成長が予測されています。「Matter」という新しい規格も始動し、日本企業は世界のスマートホーム市場にどんどん参入しています。

【竹内】そこで、LIVING TECH協会さまより相談をいただき、調査をスタートしました。調査レポートの作成にあたって、2つ主要な取り組みを行っております。1つがアンケート。そしてもう1つが投稿イベントです。

 アンケートでは、RoomClip、LIVING TECH協会さま、スタティスタ・ジャパンさまの3社で、日本の一般世帯の普及状況調査や海外との比較調査などを行いました。また、RoomClipで投稿イベント「わが家のスマート○○」を開催し、そこで集まった投稿内容を分析しました。

普及が遅れる日本のスマートホーム。
海外との意識の違いと、そこから見えた
日本における普及モデルとは?

【竹内】各国のスマートホーム、スマート家電の所有率を見ると、所有率が高い国と日本との差は5倍以上の開きがありました。

このギャップの背景として注目したのが、スマート化に対する印象の違いです。

 日本では、スマート化による利便性の向上には関心が高いのですが、スマート家電が防犯や省エネなどで役立つという印象が他国に比べて低いという結果が示されています。

 これまでスマートホームのマーケティングにおいては利便性を高めて生活の豊かさを増やす観点を訴えてきた反面、それを贅沢とも感じる人がいて導入の優先順位が上がらない面もあるのではないでしょうか。

「暮らしのつらみ(ペイン)やリスクを減らす」という課題解決面でのアピールが必要だと感じました。

アーリーアダプターのコミュニティとしてのRoomClip

【竹内】RoomClipユーザーのスマートホームやスマート家電の所有率は48%で、日本の一般よりも導入が進んでいます。

 しかし、RoomClipユーザーは「スマート家電は設定が複雑だ」とも思っていてます。決してITに自信があるわけではない方々がスマート家電を一生懸命利用されているコミュニティです。この結果から、RoomClipユーザーの動きは、今後世間一般でのスマートホーム普及を考える上でケーススタディになるのではないかと考えました。

投稿イベントに見る、スマート家電事例

【竹内】RoomClipユーザーがどのような情報源をきっかけにスマート家電を導入したのかを見てみると、SNSが上位に現れます。

 SNSの1つであるRoomClipの投稿を参照すると、スマート家電を導入した様々な立場のユーザーのエピソードがコミュニティ内に充実し、それらが共有されていったことで、スマート家電の話題が盛り上がっていった様子が伺えます。

 つまり、SNSの中でパーソナルなエピソードが充実するほど、スマート家電は自分事化されて導入されていく。個々の暮らしの課題解決につながる提案の充実が、大切な要素になるのではないかと感じます。

 また、スマートホームに関する投稿には、ユーザーが様々DIYを駆使している様子も投稿されています。こういったアイディアからは商品に反映できるものが見つかるのではないかとも想像できます。

求められる設計レベルでのスマート化

【竹内】LIVING TECH協会さまは、日本のスマートホームの普及に当たってはビジネス側の設計レベルでもっとスマートホームやスマート家電の活用を前提とないと、多くの方が享受できるものにはならない、という視点を持っておられますよね。

 RoomClipの中でのわかりやすい例として挙げていただいたのが、このルンバ基地でした。

【田形】「ここに置きたい家具があるのに、スイッチがあるから置けない」とか、「スマート家電を色々と置こうとするとタコ足配線になって見た目がスマートじゃない」という声も聞きます。最初からスマート化を前提で設計することで、デザイン性や内装の自由度も高くなるんですね。私たちは設計のノウハウをためて、皆さんに展開していきたいと考えています。

スマートホームの今後の鍵を握るのは、
ペインの解決

【水上】RoomClipにおいて、ユーザーの動きには2つの大きな軸があると感じます。1つはいわゆるゲインの軸、自分の暮らしをいかに豊かにするか。もう1つは、暮らしの中で感じるつらみ=ペインをいかに軽くし、解決していくか、という軸です。

 世帯のかたちが多様化し、それまでカルチャーの中心であった専業主婦世帯を前提に作られた住宅や暮らし方と、現実の世帯構造にずれが発生しています。かつての専業主婦世帯では1日10時間を家事に充てられていたという統計がありますが、今の共働き世帯では家事の時間が足りません。あるいは、昨今の電気代の大幅な値上げの中で、電気料金がかかりすぎる家電を買い替えたりして、ユーザーのライフスタイルや消費行動も変化しています。

 ペインを解決していく手段としてスマート家電が選択肢の1つに提案していくという視点が、今後のスマート化の広がりに示唆を与えるのではないでしょうか。

スピーカー
(左) ルームクリップ株式会社 RoomClip住文化研究所 研究員 竹内優
(中央) ルームクリップ株式会社 RoomClip住文化研究所 主任研究員 水上淳史
(右) 一般社団法人 LIVING TECH協会 PR担当 田形梓さま

トークセッションおよびスライド資料を掲載した完全版テキストは、こちらからダウンロードいただけます。