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物語をつづるデザイン。

学校法人Adachi学園さまより、学園グループのデザイン系専門学校4校が合同で行うデザインコンペティションの、ロゴ(とシンボル)デザインの依頼をいただきました。
私は大学卒業後に、同グループの大阪デザイナー専門学校に進学した経緯がありますので、参加する学生たちは自分の後輩にあたります。

かわいい後輩たちにロゴデザインで残してあげられるものはないかと考えたときに、ロゴを作ることで、社会に出る学生たちに餞別、エールのメッセージを含ませられないかと考えたのでした。

拙著「たのしごとデザイン論 完全版」では、つくるデザインそのものを「コンテンツ」、それを取り巻く文脈や状況、背景、埋め込まれた物語を「コンテクスト」と呼んでいて、この「コンテクスト」をどう作るかが今後、クリエイティブ業にとって一つの鍵となる、と示してきました。

というのは、デザインの表現や表層についてある種の「出尽くし」が起きていて、表現の定型化や類型化、そしてその再生産が進むと、表層だけからは差別化がしづらくなるからです。たとえば円形のシンボル、円という形態をしたシンボルはごまんとあります。であれば「この企業(団体)はどうして円なのか?」という背景や文脈のほうに、オリジナリティやアイデンティティを強く委ねることができます。

デザインで物語をつづり、その物語をすべてのステークホルダーに共有することは、内部的なコミュニケーションとしても、対外的なコミュニケーションとしても大きな効用があります。「どうしてそんなカタチが生まれたのか?」それは、会社の理念を今一度見つめ直したり、ブランドのメッセージをお客様に再び理解してもらうための、大切な橋渡しになるからです。

そんな物語の重要性を、参加する学生たちとも共有したいと、「紙芝居(スライド)仕立てのプレゼンテーションシートを作ってみました。ロゴやシンボルのプレゼンテーションシートといえば、デザインを何案か作ってその周囲に簡単なコンセプトテキストを配置し、これをめくりながらプレゼンテーションすることが多いと思うのですが、昨今のリモート化においては、直接相手と対峙することがままならなかったり、書類だけが一人歩き(回覧)されることがあります。

だからこそ、書類が一人歩きしても、きちんとメッセージを伝えられるような紙芝居型のプレゼンシートは、とても強い武器になると考えています。タイトルに「Story」と記載しているのは、まさにここから物語を語り始めますよ、という合図のようなものです。

シンボルに込められた制作者がつづった物語を読むことで、学生たちが自分達の学びに誇りをもってもらう、と同時に、デザインに物語を埋め込むことの楽しさや価値を知ってもらいたいなと、思っています。

あわせてポスターもデザインしました。コンペ(コンペティション)は賞をとっても、とれなくても、とても意義のあることだと思います。なによりコンペに参加することで、自分の作品を客観的な位置におくことができるからです。また、落選するという体験と悔しさは、他の作品を見る目や意識を、これまでとは見違えるように変えてくれます。だからこそ、コンぺテイションはそれ自体がゴールではなく成長のための「通過点」だと記述しています。

ロゴ・シンボルやポスターデザイン、なによりコンペティションをつうじて、学生たちが大きな価値ある体験をしてくれますように、その体験にデザインが優しく併走してくれたら嬉しいなと思いました。

このnote記事はAdachi学園さんのご協力により、掲載することができました。プレゼンシートまるまるを作品として掲載ご快諾いただいた、Adachi学園さん、本当にありがとうございました。




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