デザイナーになることを志したとき、なんとしても東京で就職したいと思いました。 CDジャケットや書籍装丁、雑誌デザインなど、いわゆるカルチャー系の仕事をしたいと思っていて、大手レコード会社や出版社のほとんどが東京に集中していたからです。 無事就職できた先は、東京・築地にある、印刷会社の下請けを主とする制作会社だったので、デザイン誌で紹介されるような派手な媒体広告を手がけることもなく、パンフレットやカタログなどの販促物を粛々と制作する日々でした。 独立してからは友人のツテや営
春ですね。 何か僕も春から新しいことを始めてみたいと思い、メイクに挑戦してみることにしました。(といってもアイメイク、リップ、チークなどの盛るやつじゃなくて、肌を綺麗に整えるベースメイクです)。 以前からメイクに興味があったのはもちろんですが、僕が今年から研究指導する大学院生女子の研究が「メンズコスメのプロダクトデザイン」、メンズメイクに関する価値観の再定義だったので、指導の参考になるという大義名分もあったりします。 ぼくは大学教員とは別にグラフィックデザインのアートディ
モダンデザインが萌芽した20世紀初頭から100余年が過ぎた今、デザインの機能はひろく大衆に認識され、デザインを武器に社会で活躍する人も飛躍的に増えました。 今現在、日本でどのくらいの数のデザイナーがいるのでしょうか。 およそ4〜5年毎に発行されている(今年あたり新版出るといいな)「デザイン政策ハンドブック(2020年版)」によると、デザイナーの統計総数はこのようになっています。 2015年の国勢調査ですのでかなり古い結果ですが、総計19万人。2005年から5年ごとの伸びを
美大や専門学校、その他の学び舎でデザインを学び、卒業し、社会に出ることになったみなさん、本当にこれまでよく頑張りました。 大学は学校や専攻などによって学ぶ人と学ばない(遊ぶ)人の差は激しいと聞きますが、デザイン学科を含む美大生の課題量は相当なもので、卒業した人は多少の差はあれど、とんでもなく苦しい夜を何度も過ごしたのではないかと思います。 本当にみなさんよくやってきたと思います。 そして辛いと同時に、とても幸福な時間もたくさんあったのではないかと思います。夜のハイテンショ
たまにクライアントさんから聞かれることがあります。 「前につくってもらったチラシのpdf、あれをそのまま拡大してポスターを作っていいですか?」 わざわざ確認いただくのは、とてもありがたいのですが「基本的にポスターとチラシの構造は違っているので、ポスターに合わせてサイズの調整作業(リサイズ)を行ってもよいですか?」と返答・お願いをします。 デザイナーでない人にとっては「どういうこと?」と思われるかもしれません。 また大学でポスターの課題授業をやっていても、チラシをそのまま拡大
4月から美術大学や専門学校、あるいはデザイン科の高校や高専などに進学する人、おめでとうございます。 また、4月から職業訓練校や社会人講座などを通じて、あるいは書籍や動画などを見ながら、自分もデザインを学んでみよう、キャリアチェンジ、リスキリングをしようと思われている社会人のみなさんも。 ようこそデザインの学びの世界へ。 私は東京造形大学という美術・デザイン系の大学の教員をやっていますが、デザインを学び始める全ての人への祝辞として、10個のアドバイスを送りたいと思います。
日経平均株価が1989年12月以来の史上最高値(3万8,957円)を超えようとしています。1602年にオランダで世界最初の株式会社が生まれて400年以上、みんなでお金(資本)を出し合って会社を持ち、その利益を資本を出し合った人どうしで分配する、株式と資本主義の仕組みはすごい発明で、今でも世界の大半の国がこの資本主義というシステムで経済を動かしています。 株式で得た利益は株主に分配したり、設備投資に回したりしてさらにその利益を成長させていきます。新しく追加された資本が元の資本
2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」。日本の企業もさかんに「サステナビリティ」を掲げるようになりました。「サステナブルデザイン(Sustainable Design)」における「デザイン」の指すところは「ビジョンを描いて計画・実行していく」ということでしょうか。とにかくこれからの世の中は「持続可能性(つづいていくこと)」が強い価値観になっていくようです。若者のエコ意識の高まりもすごいです。 経済を振り返ると、1950-70年代は日本で「高度経済成長
こんな、質問をいただいたので回答したいと思います。 ある意味とても興味深いです。質問者様の意図と違った回答であればすみません。 まずは、僕自身が美術大学ではなく、いわゆる一般大学の心理学専攻(社会心理学)を卒業してからデザイナーになったので、質問者様にモヤモヤされる側なんだろうなあ、と恐縮いたします。 心理学を学んでいたというと、カウンセリングとかの知識があるんですか? とか人の心が分かるんですか、などなかば冗談だとは思いますが聞かれたりします。社会心理学を学んだ人ならわ
学校法人Adachi学園さまより、学園グループのデザイン系専門学校4校が合同で行うデザインコンペティションの、ロゴ(とシンボル)デザインの依頼をいただきました。 私は大学卒業後に、同グループの大阪デザイナー専門学校に進学した経緯がありますので、参加する学生たちは自分の後輩にあたります。 かわいい後輩たちにロゴデザインで残してあげられるものはないかと考えたときに、ロゴを作ることで、社会に出る学生たちに餞別、エールのメッセージを含ませられないかと考えたのでした。 拙著「たのし
今日は質問箱にこんな匿名のご質問をいただいたので、このnoteを使って回答を論じたいと思います(ご質問文の引用は質問者様に許諾を取っています)。 現職に対して疑問を持ち、自分にとっての適職を探すうち、デザインの世界にたどり着く人は多いと思います。僕はプロダクトデザインについては門外漢で恐縮なのですが、プロダクトデザインは単なるモノのデザインではなく、人の行動や暮らし、社会の構造をより良く作り変える働きがあり、大きな価値を社会に寄与できる素晴らしい仕事だと思います。 では、
4月から社会に巣立っていく新社会人のみなさんに、社会人先輩の立場として「新社会人に知っておいてほしい10のルール」としてnoteに書きとめておきます。 人も会社も千差万別。それでも、多くのことは共通するように思うのです。 なるべく簡単に、短い文字数でまとめるようにしました。 1. 結果ではなく過程を共有しよう。 過程(プロセス)を仲間や上司と共有することはとても大切です。あなたの中で一人悩んで試行錯誤したアウトプットは、仲間や上司にとっては他人事、簡単にちゃぶ台返しできます
先日、仕事の受注判断を単純な4象限でまとめてみては?とツイートしたら、結構賛同してくださった方がいらっしゃって。 「面白くてお金がたくさんもらえる仕事は何がなんでもやる」「面白くてお金が少ないこともやる」「面白くなくてお金が多いこともやる」「面白くなくてお金が少ないことは絶対やらない」というアホっぽい4象限ですが、なぜわざわざ図に起こしてまで話したかということでして。 (ちなみにここでいう「面白い」の定義は広めに考えており、「新しい分野を開拓できる」「自分の能力がきちんと求
今回はデザインへの記名の話をしたいと思います。 著作物には「著作者人格権」という原則譲渡できない強い権利があり、その中で「氏名表示権」は、自分の著作物の公表時に、著作者名を表示または非表示することを決めたり、実名か別の作家名かを決められる権利です。 しかし実際のところ、会社員デザイナーの仕事は「職務著作」として個人ではなく会社の名前が記録されたり、そもそも会社も個人も、ほとんどの商業物や広告のデザインには制作者の名前が記されることなんてないですよね(いわゆる著作者人格権の不
<この記事は2020年3月のコロナ禍に書かれた記事です。卒業に際して、対面でメッセージを送ることができなくなったので、その代わりに書きました。> 私の勤める大学の卒業式が中止となってしまいました。楽しみにしていた学生の気持ちを考えると、身も裂かれる思いですが、卒業というタイミングは、学生が社会へ旅立つ節目でもあるので、特にクリエイティブ系の学校を卒業する学生へ向けての話を書きたいと思います。 よく社会人が「学生時代はよかった」とか、学生に向かって「(学生である)あなたの立
少し落ち着きましたが、デザイン系学生の就職活動はかなりギリギリまで続きます。4月以降の求人でキャリアをスタートする新既卒学生(変な言い方ですが)も意外といます。就職活動でおなじみの通過儀礼といって思いつくのが「自己分析」。これまで自覚しなかったり、気後れして取り組まなかった「自分とは何か」という、たいそうな命題にぶつかって多くの学生が苦しみます。 そこで一般によく言われるアドバイスとして、自分の原点を探るわけですが、その自分探しのスタートが「そもそも自分は何が好きだったのか