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キューバの建築はなぜかわいい?

はじめまして、ロンロ・ボナペティと申します。
普段は建築デザインを中心に、書籍の編集をしております。
ノートでは日常で目にする町並みや建築を題材に、「建築ってこんなにおもしろいよ」「建築のことがわかると町歩きが楽しくなるよ」ということをお話できればと思います。

◆キューバの町ってどんな町?
先日、キューバの首都ハバナへ行ってきました。
キューバと言えば、1959年のキューバ革命以降、社会主義を貫いてきた国として有名ですね。
なぜキューバに惹かれたか、筆者は漫才師オードリーの若林さんが書かれた『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』という本がきっかけで興味をもったのですが、キューバ社会については置いておき、資本主義社会とは異なるルールで社会が動いているキューバの「町」に注目してみたいと思います。
革命によって政権が変わったキューバでは、建物もすべて新しい制度に合うようつくりなおされたのか? というと全くそんなことはなく、それ以前に使われていた建物がそのまま転用され現在でも使われ続けています。
特にハバナの旧市街地はスペインの植民地時代に建てられた建物も多く残り、まるごと世界遺産に登録されていて、観光スポットになっています。
町中を歩いているとヨーロッパのバロック様式や新古典様式と呼ばれる様式を再現した建築物が目につきます。
それだけなら本場のイタリアにでも行けば良いのでは? と思われるかも知れないので、キューバならではの面白さをご紹介しましょう。

◆町に広告がない!?
これは若林さんほか、いろんな方がキューバに行って驚いたこととして書かれていることですが、キューバには市場競争の原理がなく、それゆえ町を歩いていてもほとんど広告を目にすることがありません。
町を遠くから見るとこんな感じ。

石やコンクリートでつくられた建物の外壁が連なるばかりで、確かに広告らしきものはないですね。
渋谷のスクランブル交差点や、ニューヨークのタイムズスクエアと比較すると社会体制がそのまま町の表情に現れているのがよくわかることと思います。
ではキューバの町は無機質で無味乾燥な面白みのない町なのか? というとそうではなく、社会主義ならではの面白さが表出しているのです。

◆「時」の価値は金のみに非ず
時は金なりという言葉がありますよね。
いろんな言語に違う言い回しがあるほど世界共通の概念ですが、キューバにおいては少し意味合いが違ってくるかもしれません。
一部の人々を除き、基本的に皆公務員として同等の給料をもらっているキューバ人にとっては、恐らくより良い生活のために仕事を頑張って出世を目指すという考えはありません。
仕事中でも関係なく、客である我々を放っておいて友達とお喋りしている姿をあちこちで見ましたし、混んでいるお店でも店員の手さばきはノロノロ。
少しでも多くの売上を上げて今月の給料を稼ごう、という発想がないのだと思います。
それもそのはず、いくら頑張ったところで給料が上がるわけじゃなし、だったら仕事の時間自体を楽しめばいいじゃないか、ということでストレスの掛からない彼らのペースが生まれていったのでしょう。

◆町はのんびりつくったらかわいくなる?
そんなキューバ人が建物をつくったらどうなるか。
先述したとおり、ハバナの市街地は古い建物がそのまま使われているのですが、柱や壁といった躯体は古いままでも外装や建具などは経年劣化で絶えず更新されているはずです。
そしてそれらに目を向けてみると、あれ、なんかかわいくないですか?

外壁がカラフルに塗装されているのは、日差しの強い地域ではよく見られる現象ですが、建具や窓まわりのちょっとした装飾、壁面のあしらいなど遊び心があって見ていて楽しい建物ばかりです。
おそらく植民地時代の、統治を目的とした権威主義的な建物のつくりかたではこうはならず、日々使われる中で徐々にバージョンアップしていったのでしょう。
そして面白いのは、これらの建物が商店でもホテルでもなく、ごく一般の人が住む住宅、しかも個人が選んで買ったり借りたりするものではなく、公営の住宅であるというところ。
そもそも住む場所を国に指定されるキューバ人は、個人の趣味嗜好で家を選ぶことができないんですね。
ではなぜこのような遊び心が建物に現れるのか?
それは、つくる人たちがその仕事を楽しむため、そして使う人たちが楽しむことを目指しているからだと思うのです。

建物をつくる設計士や大工さんからすると、単調な建物を効率よくつくるのは楽しくない、しかも効率を上げたところでメリットはないわけです。
であるなら、自分が楽しんでつくれるものをつくろう、という発想につながってもおかしくはないのではないか、と。
資本主義社会では、同じ性能なら少しでもコストを安くするために、建物のデザインも工事も効率良く、が基本です。
特にオフィスビルやマンションなどでは、余計な装飾がない無表情な建物が量産されますよね。
投資する側にとっては無駄に思えるこうした遊び心も、使う側からしたら、日々のちょっとした楽しさや愛着につながるのではないかと思ったのでした。

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建築ライター・編集者。建築の魅力をたくさんの人に知ってもらいたくて活動する黄色い鉛筆です。建築の面白さを広く伝える翻訳家になりたい。https://ronro-bonapetit.github.io ←名刺サイトはこちら

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コメント5件

コメントありがとうございます! 楽しく更新していけるよう、励みます^ ^
まるで絵本の世界に迷いこんだみたいな雰囲気が好き。
投資する側にとっては無駄に思えるこうした遊び心も、使う側からしたら、日々のちょっとした楽しさや愛着につながるのではないかと思ったのでした。

それだって、思いました。目から鱗というか。私は、賃金同一に対して、手を抜くのでは、とか、ネガティブに捉えていましたが、そうではなかった。楽しむ方にシフトチェンジするんだ!、て。

日本もこうなってほしいなって、思いました。100年くらいかけて。
思想として、そういう考えありだよね、みたいな感じになったら、もっと日本が素敵な国になるかもな~とか、色々考えてしまいました。
大野さん、コメントありがとうございます!
建築に限らず、色んなシーンでもっと遊び心があればと思うことありますよね。
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