見出し画像

3年かけてやっとサービスが売れた話

はじめに

トランザクティブ・メモリーとAIを活用したチームコラボレーションサービス「parks(パークス)」を2024年2月7日に正式リリースしました。
構想し始めたのは2020年7月。あれから3年。
構想に至った背景から、正式リリースまでのストーリーをお話していきます。


1.なぜ3年間走り続けられたのか

起業しサービスが売れるまで3年間走り続けた理由は3つあります。
1つ目は、自分自身の原体験。
2つ目は、自分の問いに惚れた。
3つ目は、やめられない理由がある。

(1)原体験

原体験①人と出会うことによる気づき

新卒で入社した会社に半年勤めた後、私は自分の業務をスムーズにこなせるようになりました。しかし、その時点で、私はただ指示された仕事をこなすロボットのようになってしまっていたのです。人間性を失い、ロボット化してしまうことへの危機感を抱いた私は、変化を求めました。そこで、同僚や先輩たちがどのような思考で仕事に取り組んでいるのかを学ぶため、積極的に彼らとの対話を求めました。その結果、自分で仕事を見つけ出す人、効率よく業務をこなす人、特定の分野で専門的な知識を持つ人など、多様な働き方に触れることができました。これらの出会いが、新たな気づきを与えてくれ、私の仕事に対するマインドセットを形成するのに役立ちました。

原体験②近そうでまだ遠い情報

事業を推進し、新たな事業を創造する過程で、「この情報を持っている人は社内にいないだろうか?」と思う瞬間がしばしばあります。必要な情報を持つ人物を見つけるため、一見関連しそうな部署の知人に連絡を取り、適切な担当者を紹介してもらうことがよくあります。しかし、紹介を受けた部署の同僚も正確な情報担当者を知らないことが多く、結果として多くの人を経由し、ようやく必要な情報を持つ人物に辿り着くことが度々ありました。このような社内での情報のたらい回しには多大な時間と労力が費やされました。さらに、情報を探す過程が面倒になり、自力でゼロから始めることもしばしばありましたが、実際には他の部署で既に同じことが検討されていることもありました。誰が何をしていて、どのような情報を持っているのかが不明確であるため、労力の無駄遣いや、情報を持つ人物を見つけることを諦めた結果の機会損失が生じていました。他のビジネスパーソンにこの問題について聞いてみると、私だけではなく多くの人が同様の課題を抱えていることがわかりました。これらの経験から、これは個人の問題だけでなく、会社全体、さらには社会全体の課題であると感じました。

原体験③ハードからソフトへの転換

これまでの体験を通じて、人と人との出会いが生み出す「化学反応」に興味を持つようになりました。この関心を背景に、私は不動産会社でワーケーション施設、インキュベーション施設、オフィスラウンジなど、出会いの場を提供する物理的空間(ハードサービス)を提供しました。これらの施設を運営していくうちに気づいたのは、物理的な場所は出会いの機会を提供することはできるものの、人々の間で生じる化学反応を一貫して再現することは難しいということでした。このような化学反応は、その場所で働くコミュニティマネージャーや運営チームのエネルギーに大きく依存していました。私は、「人と人との出会いによって生まれる化学反応を一貫して強化できるサービス」がまだ存在しなかったため、テクノロジーを駆使してこのアイデアを実現したいと考えました。そうして、2020年7月にサービスづくりを始め、2021年7月には株式会社Rondを立ち上げました。

(2)自分の問いに惚れた

起業を決意したもうひとつの理由は、自分自身が提起した問いに対して、深い魅力を感じ、そのロマンに心惹かれたからです。人間という存在は複雑で変動しやすく、時と共に変わります。まるで掴みどころのない水のような存在です。しかし、人と人が交わることで生じる化学反応は、単純な足し算以上の価値を生み出したり、時には減算になったりもします。この人と人との出会いから生まれる化学反応を、一貫して高いレベルで再現し続けることができれば、個人も、企業も、社会もより豊かになるという考えに、私は深く魅了されました。

(3)やめられないとまらない

起業した私は、資金も、仲間も、専門知識もない状態からスタートしました。しかし、事業を進める楽しさに完全に魅了され、それがもはや趣味のような存在になったため、今も変わらず楽しんでいます。これが「やめられない」理由の一つです。私の頭の中には常に新しいアイデアが浮かび、恋愛事業、カフェ事業、コテージ事業など、次々と挑戦したいことが溢れています。しかし、今はそれらを我慢し、手がけている事業を成功させ、社会に価値を提供することに集中しています。それが完遂されることが、次の事業への挑戦への「ご褒美」となると信じています。この絶え間ない興奮と探求の旅は、価値を生み出し続けることでしか終わらせることができないのです。

2.自分の過去の課題に基づくサービス提供の難しさ

サービス開発において重要なのは、「誰のどのような問題を解決するのか」という点です。私は、自分自身の過去の課題を解決するサービスを考えることから始めました。過去の自分が直面した問題を深く掘り下げ、その問題を解決できるようなサービスがあればと思い、最小限の機能を持つプロトタイプ(MVP)を作成し、何度も検証を重ねました。しかし、これらの試みは成功せず、なかなか思い通りの結果には結びつきませんでした。

(1)原体験の課題は変数が多すぎる

そこで、自分が捉えている課題と仮説を立て150社以上の企業の経営者、人事、DX推進者にヒアリングし最大公約数的に課題を発見していきました。
そこでわかったことは、原体験の課題は変数が多すぎるということ。
上記の原体験①〜③も近そうな課題で全然違うものです。
この原体験に基づく課題の本質を捉えつつ、社会が直面する最大公約数的な課題に焦点を当てることが重要ということがわかりました。

(2)課題の発祥地を見つける

私が直面した原体験の課題と、150社以上の企業からヒアリングを通じて見えてきた共通の問題点は、社員間や部門間でのコラボレーションが生まれにくいということでした。しかし、この課題の表面的な記述だけでは、解決に向けた具体的なサービスを設計するための十分な情報が得られません。そこで、なぜコラボレーションが促進されないのかという根本原因を探る必要があると感じました。

コラボレーションが進まない主な理由は、コミュニケーションが十分に活性化していないからです。しかし、なぜコミュニケーションが活性化しないのかと深掘りすると、社員同士がお互いにどのような人物であるかを理解していないからということがわかりました。さらに、なぜお互いを理解していないのかと問うと、スプレッドシートやタレントマネジメントシステムに自分の強みやスキルを入力することに抵抗感があるからです。そして、なぜそのような入力が難しいのかというと、自己の強みやスキルを言語化し公にすることに対して恥ずかしさを感じるからでした。

この一連の問いを深めることで、この課題の「発祥地」を見つけ出すことができました。

(3)お金を払う明確な理由がいる

しかし、課題の発祥地を見つけられても、これを解決することでどれだけ成果に繋がり経営を良くするかに納得感がないとお金を払って使ってもらえるサービスになりません。
お金を払うことは、ありがとうの気持ちの量。
そう考えている私は、ボランティアでなく事業として成立させるために、お金を払う明確な理由があるサービスを考えました。
特に、捉えている課題の特性上、売上増(生産性向上)、コスト削減(離職率低下)を表現するのに他の変数が多く簡単ではなく、納得感を得づらい領域です。
だからこの問題から逃げていては、サービスを買ってもらえません。
そこで、私が捉えている課題と解決方法が学術的に成果があると立証されている概念があるのではと考えました。
様々な論文を読み漁っている中で、「トランザクティブ・メモリー」という概念に辿り着きました。
1980年代に海外で立証されている「組織内で『誰が何を知っているか』を把握している程組織のパフォーマンスが向上する」という学術的に立証されている概念です。
そこで、「トランザクティブ・メモリー」の概念に基づきサービスを構築しました。
その結果、営業をする際も経営に寄与するイメージを想起いただけることが増えサービスが売れるようになりました。

3.仲間との出会いがもたらした変化

そして何よりも、素晴らしい仲間との出会いがあって今のRondがあります。自分一人だけでは、今日のサービスを創造し、提供することはできなかったです。また、仲間たちがいなければ、このプロセスをこれほど楽しむこともできなかったはずです。私が持ち合わせていない才能を持つ仲間たちとの出会いがあってこそ、私たちはプロダクトの構築と提供を進めることができました。

4.サービスリリースはスタートライン

こうして、9社の企業が私たちのサービスを有料で利用してくれるようになり、今日、サービスの正式なプレスリリースを行うことができました。これは、長い道のりの始まりに立った瞬間です。これからも、プロダクトとお客さんの両方に真摯に向き合いながら、社会に真の価値を提供できるサービスへと進化を続けていきます。このプロセスは、サービスをリリースしたことで終わりではなく、むしろ新たなスタートラインに立ったばかりです。今後も、継続的な改善と成長を通じて、より多くの企業や社会に貢献していくことを目指します。

株式会社Rond出航です。