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女性のキャリアは「そこそこ」でいいのか

「女の子の学歴はそこそこでいい」


史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんの父親が、「私は娘の翼を切らなかった」と子育ての極意を語ったのは有名な話である。女子教育が抑圧された環境において、女性が教育を受けることを願うことは命と引き換えになることも多い。アフガニスタンを統治している武装組織「タリバン」は、女性に対する抑圧を日に日に高めている。
日本では、縁のないような話に思える。しかし、日本では気づかない間に女性の翼がバキバキ切られている場面を私は12年間の滞在を通して見聞きした。

日本では、家庭において「女の子だから」と娘の翼が切られることは多々ある。「女の子」だから勉強はそこそこでもいい、「女の子」だから無理に上京しなくてもいい、「女の子」だから文系の方が向いている、「女の子」だから高学歴になると相手が見つかりにくい、など「女の子」だからという呪縛に囚われながら翼を切り刻まれていく。2024年度東大一般選抜の全合格者に占める女性の割合は19・4%、学校推薦型選抜などを含めた全合格者では20・6%だった。ちなみに、Harvard Universityにおける学部(Undergraduate)の男女の割合は、男性47%、女性53%である。男女における合格率(Acceptance Rate)は、男性3.240%、女性3.241%なので女性を優遇しているわけではない。以下参照

学部においても、理系学部に占める女性の割合は非常に低い。夫は工業大学の工学部出身であるが、何百人いる学生の中で女性は数人だったそうである。私は歴史が大好きだったので、学部では文系(歴史学科)の学士号(Bachelor of Arts)を取得した。その後、リーマンショックの影響で学者になることを諦めて弁護士を目指したのだが、「女の子だから」という概念は持っていなかった。

「母親だから仕事はそこそこでいい」

日本では、「母親だから」という大義名分のもとにキャリアチェンジを余儀なくされる女性は非常に多い。私自身、大学院生で妊娠した時は就職活動を辞め、大学院を休学した。出産後には、復学し就職活動を再開しようと考えていたのだが「お母さんなんだから」という元夫の希望で3歳まで家庭で子育てに専念することを嘆願された。結果的に、元夫の母親像の呪縛から逃れるために離婚を決意した。私が離婚したのは、10年以上も前の話だが現在に至るまで「母親」だからという固定概念は健在である。

個人が「子育て」を優先順位としたキャリアプランを描くことは自由である。しかし、国の制度や企業独自の支援の多くは女性が家事や育児を多く負担するという前提で提案されていることは問題である。その結果、女性は結婚・出産をするとキャリアチェンジを余儀なくされるという概念から結婚や出産を躊躇う女性が増加してしまう。他方、男性に対しては「女性がキャリアダウン」する前提であるため女性よりも高い年収が求められてしまう。その結果、女性のキャリアに対してリスペクトできない男性が年代層を問わず続出してしまう。

結局、「女性はそこそこでいい」という概念が存在する間は、少子化も加速するであろうし、性別に関係なく自由にキャリアを描ける時代は日本に来ないのでは?と思ってしまう。



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