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note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その9最終章 結婚してようと人は人を好きになる。
大事なもの さて、ここまで三つの五十代の恋を見てきた。 私は、市山和樹君と朝井雪乃さんの飲み友達の景山良一というものだ。 趣味は、小説を書くこと。若い時は小説の新人賞にも応募していたけど、一度最終予選に残ったのが最高の成績だった。でも、書くことの楽しさを忘れることができずに書き続けている。もちろん今は趣味としてだが、納得のできるものが書けたら五十代ではあるけれど、新人賞に応募してみたいと思っている。晩年の楽しみにしている。 市山君と朝井さんが付き合い始めたのはすぐに
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その7。高校時代の恋人と再会するとどうなるのか?
駐車場に到着しエレベーターで三階に上がった。孝太は、僕が下に降りるとLINEが入っていたけれど、二次会前に少しは二人の時間が欲しかったので、そのままそこに居てと伝え三階まで上がった。 エレベーターが三階に到着し扉が開いた。一階は混んでいたけど三階まで上がると空いていて数台の車しかなかった。 その時、一台の車のドアが開き、 「お〜い雪乃、こっち」と声がした。 その声を聞いた瞬間、子宮が疼いた。身体の頭のてっぺんからつま先まで電流が走った。孝太が私の視界の中に居る。満月の
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その6。高校時代の彼氏との再会。一番多感な時期を一緒に過ごした相手との再会。
お久しぶりです。覚えていますか?佐藤です、佐藤孝太です。 胸が激しくドキドキしていた。 すぐに承認した。この機会を逃さずに、同窓会こないの。と入れた。 同窓会とか苦手で。 あの頃から団体行動が苦手やったもんね。と入れ、返事を待たずに、というか、頭よりも心が先に反応し、久しぶりに会いたかったな。と入れてしまった。入れてしまってから、なんてことをと思ったけれど、入れてしまったものは仕方ない。実際に会いたいのだ。孝太も私に会いたいと思っていてほしい。そう願った。 次の返
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その4。高校時代の恋人が体の中に住み着いた主婦。
初恋の相手 私にはどうしてもやりたいことがあった。孝太に会いたい。 夫には悪いけど、死ぬまでにもう一度会いたい。もちろん、付き合いたいとかではない。家庭を壊す気は無い。一度でいいから会いたい。高校卒業後一度も会っていない。会わずに死ねばきっと後悔する。高齢者になって認知症になっても、孝太のことは覚えていると思う。忘れるはずがない。忘れられるはずがない。好きだった。夫には悪いけれど、心にずっと孝太がいる。高校を卒業して三十二年たっても忘れられない。夫のことも忘れないとは思
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その3。家庭からの独立宣言。自分の人生を歩み始める。
独立宣言 今日、同窓会がある。 同窓会はこれまでにも何回もあったけれど、今回の同窓会は違う。孝太が来る。 孝太は私の高校時代の恋人。最も熱く生命力が爆発的に溢れていた高校時代の三年間をほぼ一緒に過ごした人。青春の思い出と言えば、それは文化祭でも試験勉強でも部活でもない孝太だ。青春時代のすべては孝太で埋め尽くされている。 孝太に会いたい。ずっとそう思ってきた。でも、実際に会うのは怖かった。自分の気持ちがどうなるのか分からなかった。もしお互いにあの時のような気持ちになっ
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その2。セックスレスの男が他の女性と体験しできるようになって、妻ともできるようになった。それは不倫なのか。
その恋は「できるようにしてあげよっか」の一言から始まった。 三日間の社外研修があり、その研修終わりに参加していた五十代の人たちばかりで呑みに行った。気が合い、その後もたまに呑みに出かけるようになった。 その呑み友達の中の一人の女性、朝井雪乃さんが酔った際に周りに聞こえない声で 「セックスレスなの?それならできるようにしてあげよっか」と僕の耳元で囁いた。顔を見るとクスっと小悪魔のような笑みを浮かべていた。 「なんで僕がセックスレスだと知ってるの」と聞くと、前回の飲み会の時
note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方や恋愛についてのあれこれ』その1。子育てが終わってからも後30年も40年も生きる、その時間は何のための時間?
子育てが終わってからも生きる。それって何のための時間? 人間が長生きするようになった。 しかし、人類そのものが身体的に、あるいは脳が、あるいは精神的に進化したわけではない。 進化したのは、医学や科学や栄養学や衛生学であり、それらを支え進歩させることが出来る豊かさを実現した経済の力である。それらの進化によって人類は、種の保存という生命の最大の目的を果たした後も何十年も生きる長寿を実現した。 それによって社会は大きく変化した。 しかし、人間自身は何も変わっていない。