note創作大賞 恋愛部門応募作。『50代からの生き方、恋愛についてのあれこれ』その9最終章 結婚してようと人は人を好きになる。
大事なもの
さて、ここまで三つの五十代の恋を見てきた。
私は、市山和樹君と朝井雪乃さんの飲み友達の景山良一というものだ。
趣味は、小説を書くこと。若い時は小説の新人賞にも応募していたけど、一度最終予選に残ったのが最高の成績だった。でも、書くことの楽しさを忘れることができずに書き続けている。もちろん今は趣味としてだが、納得のできるものが書けたら五十代ではあるけれど、新人賞に応募してみたいと思っている。晩年の楽しみにしている。
市山君と朝井さんが付き合い始めたのはすぐにわかった。二人からは体を合わせたものにしか醸し出せない雰囲気が出ていた。それで、市山君に真相を確認した。
何も隠し立てせずに、むしろよく聞いてくれたとばかりに幸せな顔をして嬉しそうに話してくれた。
そんなに嬉しいものなのかと思い興味が湧いたので、朝井さんにも話を聞かせてほしいとお願いすると、軽く承諾してくれた。そして、市山君と同じく嬉しそうに話してくれた。
そんなにいいものなら五十代の恋愛を小説にしてみようと思った。
朝井さんは、市山君との付き合いだけじゃなくて、ご自身の高校時代に付き合っていた人と再会してしばらくだけど付き合っていた話もしてくれた。
市山君との恋は会えば会うほどに楽しくなっていくが、高校時代の人とは再会がピークで後はだんだんとつまらなくなっていき一年持たずに別れたそうだ。
朝井さんの紹介で他にも五十代で恋を始めた友達がいると萩野さんを紹介してもらい話しを聞かせてもらえた。
三人とも共通して幸せそうだった。
セックスレスの男が再びセックスができるようになる。
忘れられない昔の恋人と再会し最高の一夜を過ごす。
年下の彼ができる。
どれも、人生の絶頂と言ってもいいほどの幸福な時間を味わえるものだろう。しかし、この人たちの話しを読んで嫌な気分になる人もいるだろう。
苦しむ人がいるのではないですか。ということだ。旦那さんであったり、妻であったり。そのことにこの三人ともが同じ答えをしている。
「もう五十年も生きてるんやから、そんなんしっかりやってるよ」
みんな家庭も仕事も自分の生活もしっかりと考えて幸せを作り出している。それができる人が大人というものなのだろう。それができない人は恋などしてはいけないのではないか。
生命最大の目的は種の保存だ。良き子孫を残す。その相手を見つけるために本能で恋をする。では、その目的を果たした後はどんな目的で、人は人を好きになるのか。
わからない。
でも、わからないながらも、人は人を好きになる。いくつになっても、結婚していても、子育て中であっても。どんな時でも人は人を好きになる。
神様が人間をそう作ったようだ。
五十代、六十代で人生が終わっていたものが八十代、九十代まで生きる時代になり、これからは百歳まで生きるのが普通になるかもしれない時代が来ている。
健康で長生きができればそれは楽しい時間かもしれない。しかし、苦しみつつ長生きするのであれば長寿は苦しみでしかない。
五十代からでも後三十年、四十年生きるのである。
これは、夢を持った二十代が五十歳までの時間に相当する。本当に長い時間だ。
その時間を楽しく有意義に健康で生きる。
新しい道徳や倫理などというものがこの超長寿社会に置いては必要なのだろう。そして、それはまだない。
今の六十代、五十代や四十代が作っていかなくてはいけない。
どんな生活をしたいのか。どんなものを誰と食べたいのか。どこで暮らしたいのか。誰と暮らしたいのか。どんな形で仕事をしたいのか。どう社会とかかわるのか。誰と酒を飲みたいのか。人を好きになったらどうしたらいいのか。
生きる。
その中で答えを見つけていくしかないのだろう。この三人の恋模様が少しでもお役に立てればと思う。
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