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橋口亮輔「渚のシンドバッド」

新宿武蔵野館で、橋口亮輔「渚のシンドバッド」

ゲイの高校生(岡田義徳)が親友のイケメン(草野康太)に初恋。転校生の不機嫌な女生徒(浜崎あゆみ)が岡田に急接近するが、草野はあゆみのことが好き。優しいが故に傷付け合う3人の誤解が夜の渚の大喧嘩で瓦解する長回し。切なさに感動が止まらない90年代を代表する青春映画の傑作。

優しさは時に相手を酷く傷付けることもあるけど、それでも優しくあり続けることをやめちゃダメ!と橋口監督の大人目線から包み込むように性の一致、不一致にそれぞれの事情から絶望に陥りそうな少年少女を励ます、この作品自体が愚直なまでに徹底的に優しくあり続ける。

本当は、今日はこの作品を観る予定じゃなかった。凄く観たかったけど予定が合わず諦めかけてたら急に予定が空いた。前回キネカ大森で観た時も併映作品の方が目的だったのに、いざ観始めたら高校生の男女3人の背負う業と残酷な三角関係と最期のカタルシスに震撼した。つくづく縁というものを感じます。

ところで今更過ぎるけどwあの浜崎あゆみが出演してます!1995年の作品だから16歳!歌手デビューする前のキッズ・アイドル時代の代表作だと思うのだが、イメージを損なうどころかむしろ評価を上げるにふさわしい大役を、瑞々しい好演してるけど、死神テイストキャラではありますw

浜崎あゆみは歌手デビューする前も後も関係無くて、あゆみはあゆみって気がしますw鉄仮面で無表情な彼女は、前の学校でレイプ被害にあった生徒というシリアスな役ですが、レイプシーンが出てきません(念のためw)でも、いくつか際どい場面はあり、書き留めておきたいw

長尺(129分)だし、長回しだし、高校生しか登場しないし、ドキュメンタリータッチだし、本来は私が苦手なことばかりの作品で(笑)実際に前半は観ていて苦痛すら感じるのに、岡田、草野、あゆみ3人の性癖としての立ち位置が怒濤の長回しで襲って来る大波を観客席で全身に浴びる快感!

親友の草野に恋してしまった岡田、前の学校で同級生にレイプされた過去を持つあゆみは比較的はっきりとしたキャラ設定なのに対し、優しすぎるが故に全て背負い込む草野が主人公。岡田に迫られてキス、あゆみに愛を告白するが「私が女だから?」フラれる彼の閉塞感がキモ。

前後半にかけて色々と騒動はあるんだけども、決着の渚が画も劇伴も素晴らしく、等身大で白熱の演技する岡田、草野、あゆみの3人による殴り合いの喧嘩→レイプの再現→海に飛び込み→必死で救出→人工呼吸からの大団円までの息つく暇もない夜の渚の美しさを堪能したい。

あゆみはレイプ被害にあって極度の男性不信に陥り、それがきっかけでゲイの岡田にシンパシーを感じて近づく。つまりあゆみは岡田と違って同性愛者ではない、レズビアンではないのだけど、その境界線を引けるほど16歳は熟していない。まだ性癖を固定するような歳じゃない。

あゆみは実家に戻って草野と再会した時、白いワンピースを着ている。草野は愛の告白するけど振る。その後、あゆみは岡田に白いワンピースを貸す。岡田はそのワンピースを着て、岩場の影からあゆみが草野に返事をして、思わず草野が抱きしめると、それはあゆみでなく岡田w

タイトルの通りワンピースを着たまま少女が海に飛び込んで泳いでるシーンが出て来て(*'ω'*)あゆみ、ビショビショで乳首見える?とかゲスなこと考えちゃうんですけど残念!これは女装した岡田でしたって一旦はオチを付けといて、あゆみは突然、砂浜に寝っ転がるのよね。


来たよ、来ましたよ、あゆみが草野に「ここで犯してよ!」がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!草野はビショビショで少なくとも下着は透けてる(←もういいよw)あゆみに乗っかり犯そうとするんだけど、着衣のままどさくさに紛れて終わったか終わって無いのか分からんw

あゆみが草野に犯されながら、「死んじゃう!( ゚Д゚)びっくりする草野。あゆみが死んじゃうんじゃなくて、岡田が死んじゃう。あゆみは岡田が草野を好きだってこと、ずっと前から知っていて、草野が私とセックスしてるの見たら飛び込み自殺しちゃうよ!って悲痛な叫び。

そんなこんなで(←そんなこんなで、じゃねーよw)あゆみたんの制服姿や可愛い私服姿、それにちょっとサイコパス入った演技は拝めますが、露出度は低いです(←16歳だから当たり前だろw)でも、他の高校生たちと混じって彼女が存在している不思議さは感じたりします。

冒頭から学校の様子が不協和音だらけで、吹奏楽部の指揮者を務める草野、トロンボーンを担当する岡田、転校生でクラリネットを担当することになるあゆみ、そして何気にキーマンとなる同じくクラリネットを担当している高田久実。物語の軸となるのはこの4人だけです。

バク宙が得意で岡田のゲイを暴露する山口耕史、教室をニセカンパして小遣い稼ぎする勇静華&安西ひろこ。主役たちにとって邪悪でしかない存在のクラスメートは、前半は目立って前面に出て来て、学校や教室がいかに生き辛い過酷な場所であるかを延々と強調し続けるw

岡田の父親の村井国夫は息子がゲイと知り病院に行かせるが橋口亮輔医師に「ゲイは病気ではない」と看破されても納得しない。岡田はゲイであることをずっと学校で隠しているが、親友の草野のことが好きすぎて、キスをせがみ、バク宙男のせいで彼はゲイと教室中にバレる。

草野は岡田に「キスして」と迫られても、特に断る理由がない。親友だと思っていたからだ。で、岡田は強引にキスする。でも草野ははっきりと違和感を持つ。草野は岡田がゲイと知っても疎遠になるどころか、虐める不良から彼を庇う。ホントに優しくてイイ奴過ぎるのだ。

あゆみは転入してすぐに岡田に興味を持つ。トロンボーンを弾いてると聞いて「こんな大きいの吹いてんの!」自分はちょっと小さめにクラリネットにする。あゆみの協調性のなさは吹奏楽の演奏を乱し、指揮する草野はイライラして、クラリネット仲間の久実が面倒見ることに。

久実は優等生で、不良女子がカンパと称して小遣い稼ぎすることも黙っているし、鉄仮面のように不愛想で周囲から嫌われているあゆみにも優しく接する。草野は久実とダイハード3で映画館デートし、ロープウェイで岡田&あゆみと合流、ここまでは四角関係かと思われた。

久実はあゆみの挙動を見て「あなた、同性愛者の方?」と尋ね、あゆみにブチ切れられた。思い込みが激しすぎるのだ。岡田がゲイならあゆみはレズ。だから岡田とあゆみは仲がいい。そんな早合点をする久実の単細胞さを繊細なあゆみは許せなかった。一方、草野と岡田の仲は悪くない、うん、悪くは無いのだ。

草野は密かに恋い焦がれるあゆみと気さくにデートする岡田に「いいよな、お前」と言ったが、岡田にとってそれは非常に悲しい一言であった。ロープウェイで登った山頂の景色は美しかったが、岡田も草野もあゆみも灰色。どうしてこんなにうまくいかないの?と思う。

この作品が俄然、面白くなるのは後半からである。あゆみは「私の実家にはミカン畑があってその中で寝そべっていると甘酸っぱい匂いがして気持ちが良くなるの」と言った。一方、岡田は大好きな草野の読む本の栞を舐めたりw2人乗りバイクで後ろからギュッと抱き着く幸せ。

草野は岡田に愛の告白をされたが、「で、俺はどうすればいいって言うの?」岡田に尋ねるが彼は答えることが出来ない。好きだって言う気持ちを伝えた後、じゃあ何をできるのか、方やゲイで方やノンケ、草野は岡田を親友だと思って来たし、これからもそうだと思ってる。

あゆみは静華&ひろこの不良コンビに「お前、私らの金、盗んだだろ!」因縁付けられ、カバンをひっくり返すどころか制服も脱ごうとして草野が止めて「お前ら、できてんの?」草野はこの一件で「俺が好きなのは岡田ではない、あゆみの方だ」と確信し、突っ走り始めた。

岡田は草野に声をかけ「あゆみの実家に行ってみよう!」田舎の駅で降りて、ミカン畑に入った。「こんなんで本当にあゆみに会えるの?」訝しがる草野。彼は岡田に導かれるまま、公園で待つ私服姿のあゆみに会った。草野あゆみに愛の告白をする「お前のことが好きなんだ!」

草野はあゆみが前の学校でレイプ被害に遭ったことも知っていた。あゆみは草野に叫ぶ「私が女の子だから好きなの?」「私が男の子だったら、それでも好きなの?」呆然と立ち尽くす草野。彼は今度はあゆみに導かれるまま、もうすっかり夜も更けて暗闇の中、渚にやって来た。

渚にはワンピース姿の少女が立っていて、あゆみの声で「私のことが本当に好きなの?」思わず少女を抱きしめる草野。でも、それは女装した岡田であった。声は岩場からあゆみが出してる。( ゚Д゚)騙された!気づいた草野はついに積もり積もったフラストレーションが爆発!

ずっと恐々、遠慮して接して来た岡田に対し、怒りの感情に任せて殴りかかる草野。すると、あゆみが砂浜に身体を投げ出し、「私のことを犯してよ!」草野はあゆみの上に乗っかると犯し始めたが、どうも様子がヘンだ。あゆみはしきりに海の方を気にし続けているのだ。

あゆみにとって岡田との仲を繋いでいた「彼は草野が好きだ」という事実。あゆみは草野とセックスしている姿を岡田が見たら、私に対する嫉妬で死んじゃう!そう思った。犯されても私は死なない、もっと悲しむのは犯してる草野に狂おしいほどに思いを募らせる岡田であると。

岡田は絶望のあまり、白いワンピース姿で海に飛び込んだ。( ゚Д゚)気が付いた草野も海に飛び込んで懸命に泳いで岡田に追いつき、陸に上げてマウスツーマウスで人工呼吸。意識を取り戻した岡田の一言は「やればできるじゃん」だった。草野は岡田の熱い思いに思わず泣いた。

夜の渚で二人きりで泣きじゃくる岡田と草野の間にあるのは友情なのか?それとも愛情なのか?二人の間にどうしても割り込みたいあゆみが間に入って一緒に泣く。三人の関係は男女、男同士の複雑な恋愛感情を超えることが出来るのか?真の友情は生まれるのか?夜の静かな渚と、そして3人のシンドバッド。

あゆみは夏の日差しが降り注ぐミカン畑で空を見上げている。草野は、いつか岡田があゆみと2人乗りしていた自転車を捨てた海から引っ張り出すと猛烈な勢いで漕ぎ始めた。そしてローカル線に乗って地元に帰って行く岡田と草野は少し離れた席に座っている。走り続ける汽車。線路は続くよどこまでも。

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