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浦山桐郎「キューポラのある街」

2022年5月ラピュタ阿佐ヶ谷で、浦山桐郎「キューポラのある街」  原作は早船ちよ。 脚本は今村昌平との共同。

鋳物の街・埼玉県川口市に住む中3のジュン(吉永小百合)は、昔気質で職を失った鋳物職人の父親(東野英治郎)を恨みつつ、修学旅行には結局行かず、自活のために定時制高校への進学を決意。ジュンの悪ガキ弟の子分サンキチが帰国事業で北朝鮮へ別れの汽車が寂しい、貧しき者こそ美しく、珠玉の労働者讃歌。

観るの3回目位だけど、最初から「これ、暗い映画だったよな」覚悟して観たけどやっぱスゲエよ、これ。東野英治郎演じる一概にダメオヤジとも言い切れない時代の波に取り残された昔気質の鋳物職人が、もう登場するだけでムカムカ来ちゃって、それって思うツボなのかw

浜田光夫が吉永小百合と百恵&友和風味な純愛路線だったっけ?とうろ覚えしてたら全然違いましたw浜田は何かと「労働組合はいいぞお」と加入を勧めて来る組合の勧誘員のような人で(笑)意外にも俗物で、負けん気強いが世間知らずが危うい小百合と好対照を成してる。

そもそも(←そもそも、じゃねーよw)吉永小百合主演かと言えば確かに一番多く登場するけど、感情の琴線を激しく揺さぶるのは東野英治郎を除けばw弟のテツハルと子分のサンキチ、貧しい中の少年同士の鳩に祈りを込めた友情物語で、小百合主演がフェイクっぽくもある。

映画の後半に北朝鮮への帰国事業で川口から汽車に乗って新潟に出て船に乗る家族の話が出て来る。圧倒的な物語に全て消し飛ぶほど、この朝鮮人家族の運命が切なくて、痛ましくて、もう小百合が頭から吹っ飛んじゃうよ!アイドル映画としては完全に失敗だと言えますw

脚本が今村昌平との共同で、スジは明らかに左翼系、というより富める経営者と貧しい労働者の階級対立の構造を未だ維持していて「もう時代が変化し始めてるんじゃね?」と思うし、昔気質の東野が鋳物職人一本で階級闘争に惨敗し家族に迷惑かけまくっているイヤな感じw

キューポラによる鋳物の製造工程が職人による流し込み作業からオートメーション化した自動作業に代わったことに、鋳物職人・東野の悲哀と怒りを痛烈に描いてる。この話、川口の鋳物産業では偶々この時期だったというだけで、数多くの業種で共通に見られた悲喜こもごも。

オートメーション革新で一番、悲劇的だったのは港湾荷役業界。肉体労働の代表的な産業だったからそこに利権やら何やら纏わりついた。でも労働者の保護ばかりしてたら国際競争に負ける。旧き敗残兵は去れ!という残酷な仕組みがオートメーション化、仕方ない部分もある。

木造駅舎の川口駅が印象的に登場。貧しさに絶望し先生が修学旅行の金貸してくれたのに駅に行かず河原で絶望した哀しみの川口駅は帰国事業でマンセー!マンセー!沸き立った後に北朝鮮に帰る人たちの何も知らないキラキラ表情に覆い尽くされ、小百合以上に観るのが辛い。

ロマンポルノ的にはですね(←この作品でそれかよw)吉永小百合16歳のピチピチしたお色気が拝めます。サユリストの人たちにマジでぶん殴られそうだけどwまさか16歳の吉永小百合様にお色気見どころがあったなんて、彼女の身体を張ったプロ根性には脱帽するばかりです!

弟が480円もするおニューの半ズボン買って貰って嬉しさのあまりその場で履き替える時、来たよ、来ましたよ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!なんとそれに合わせて小百合様もセーラー服のスカートを脱いで白のシュミーズ姿を露にした後、私服のスカートにナマ着替え!

弟に鳩のひな売りの件でコケにされたチンピラが小百合様がバーで踊り飲んだジュースに睡眠薬入れてレイプするシーンもキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!純白のブラがはっきり見えてる!凄く無残な場面なのに、小百合様の胸元をガン見しすぎて一瞬、物語を忘れた(笑)

映画の内容そのものは、小百合が中学3年生の2大関心事、修学旅行と高校受験。小百合は修学旅行に行きたいのに頑固バカオヤジの東野の甲斐性なし!高校は地元でトップの浦和高校に進学したいのに、これも頑固バカオヤジ東野の甲斐性なし!全部、東野の野郎が悪いのだw

浜田光夫より圧倒的に男前の加藤武先生がお金貸してくれて、小百合は修学旅行に行けることになったのに、当日急に来ない。借用書を破り川に捨てて川口駅に遅れてやって来た小百合はもう踏ん切りがついていた。貧しいなら貧しいなりにど真ん中ストーレートの人生勝負!

組合はいいぞを盛んに喧伝する浜田の尽力で元の会社の新工場に戻ることになった元ダメオヤジ東野は上機嫌。これで小百合を浦和高校にやれる!でも断る小百合。彼女は夜間高校で苦学しながら大学進学を目指す道を選ぶ。身の丈に合った選択、彼女の中で答えが出たのだ。

小百合が金を工面するためにパチンコ屋でバイトしたり、弟の子分の父親が朝鮮人だったりで、何かきな臭さは最初からあったのだが、来たよ、来ましたよ、北朝鮮への帰国事業がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!ここからの主役は、誰がどう見てもサンキチ少年、その人です!

サンちゃんは小百合の弟と鳩のヒナを売るバイトをしていたので、彼から帰国時の餞別に鳩を二羽貰う。小百合もサンちゃんの姉から自転車を貰う。そして、一人だけ帰国できないサンちゃんの母親は日本人。愛する息子に手土産を渡そうと、そうっと川口駅までやって来た。

もう会うはずの無かった日本に残る母親に会いサンキチは激しく動揺。小百合弟との約束で鳩を北浦和と大宮で一羽づつ空に放つことになっていたが、汽車に乗って「さようなら」と一度別れたのに、なぜかサンちゃん、弟と一緒に牛乳かっぱらて飲んでて小百合はびっくり仰天!

聞けばサンちゃん、大宮駅から空に放った鳩が川口に向かって飛ぶの見て、母親の元に帰りたいと号泣して一度帰されたらしい。そして吹っ切れるとサンちゃんだけ再度、新潟行きの汽車に乗車し、車窓から身を乗り出し「さようならー(*'▽')」と手を振るサンちゃんに私の心は、モヤモヤと複雑だ。

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