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2000年のWEBマガジン『mixer』【4】「カソウ」

2000年に友だちが『mixer』というWEBマガジンを趣味で立ち上げまして、そこに寄稿させていただいた原稿が発掘されました。

その原稿を小分けにして公開しています(今回で4回目となります)。

また、最後に、いま過去の自分の原稿を読んでみた感想も付け加えておきましたので、あわせてお楽しみください!

『mixer』の詳細は1回目を参照のこと。これまでの原稿は下記をクリック


mixerからのお題:「カソウ」

タイトル:「欽ちゃんの「仮想」大賞」

「はい13番、アサガオの観察日記っ!」

……チッ、13番か……。

ポリゴン欽ちゃんの声を聞いてガッカリした。

そう、ボクは日本中のゲーマーのあいだでブームとなっているテレビゲーム、『バーチャル欽ちゃんの仮装大賞』をプレイしているまっ最中なのだ。

このゲームは仮想空間で繰り広げられる3Dシューティングゲーム。ヘッドマウントディスプレイとデータグローブを装着し、専用のネットワーク回線を介して日本全国の猛者たちと通信対戦で殺し合いをするという人気ゲームだ。

3Dフィールド内に落ちている仮装アイテムを入手することよってプレイヤーはさまざまな仮装をすることができる。現在確認されている仮装アイテムは全121種類。仮装の種類によって使用できる武器が異なるので、使えない仮装アイテムを取ってしまった日にゃ目も当てられなくなる。

ボクはプレイヤーたちのあいだで通称"13番の金曜日"と呼ばれている仮装アイテム、『アサガオの観察日記』を取ってしまった。コイツの武器は……果物ナイフ……。こんなモンで人なんか殺せんのか?

……クソッ! 使えない仮装アイテムを拾ってしまったときに限って、前方に敵2体確認! 56番の『お正月』と74番の『打ち上げ花火』! ということは、武器はガトリング砲とマシンガン……。勝ち目はない! 即座に背を向け逃げ出そ……まずい囲まれている! 振り向いた先には21番の『流れ星』、そして11番の『スキージャンプ』が待ちかまえていた!

しまった! と思った瞬間背後からマシンガンの音……と同時にモニターが真っ赤に染まり、ゆっくり浮かび上がる"GAMEOVER"の文字……。

……アー、クソッ! クソッ! 殺してやるよ、こんど会ったらブッ殺してヤル……覚えテロよ! 74番の『打ち上げ花火』! 

   ◆   ◆   ◆    

……このゲームのリアルさとその迫力には病みつきになる。銃を撃つ、ナイフで刺す、その感触はこの最新鋭のデータグローブによってボクの手に直接伝わってくるのだから。

しかしながら、ボクは実際に銃を撃ったことはないし、ナイフで人を刺したこともない。このデータグローブから伝わる感触は、実際のそれと同じなのか? ……ふと確かめたくなる。リアルな感触がウリのこのゲームだけに。

ホントウニ……銃を撃つ感触、ナイフで人を刺す感触は現実とオナジモノナノカ?

ボクはどうしても気になってしまい、他のプレイヤーにチャットで聞いてみることにした。

「このゲームさぁ、現実同様のリアルな感触がウリだっていうけども、本当にそうだと思うかい?」

「うーん"という言葉は"仮に現実のこととして考える"という意味だし、あくまでも"仮"だ。現実と違っていても当然だよ。仮想という言葉を逆から読んでごらんよ(笑)……」

逆から? カソウ……ウソカ、仮想……嘘か。…………嘘だったのか! 現実同様のリアルな感触というのは嘘だったのか?

イママデリアルな感触だと思っていたのは嘘だったノカ? ナメテンノカ、コノゲーム! 大金ハタイテ買ったノニ! ゲームの分際で人間をダマしてイタノカ! 

台所にあった果物ナイフを持って街に出た。こんどはデータグローブから伝わってくる嘘の感触ではない。リアルな感触を生身の手で感じるンダ! 

「ケケケケケケ、果物ナイフで殺っテヤるよ! 会ったらブッ殺してやるカラな74番の『打ち上げ花火ィィィィイイ』!」


【いま読んでみた感想】

第1回目の原稿の感想でも書いたのですが、当時、ショートショートの小説にハマっていた時期だったこともあり、ノベル形式のコラムにした記憶があります。

この回のコラムのテーマが「カソウ」だったので、「仮想」と「仮装」のダブルミーニングにして、VR(仮想現実)ゲームと『欽ちゃんの仮装大賞』を組み合わせたんですよね。

知り合いの(先輩)ライターさんから……

……クソッ! 使えない仮装アイテムを拾ってしまったときに限って、前方に敵2体確認! 56番の『お正月』と74番の『打ち上げ花火』! ということは、武器はガトリング砲とマシンガン……。勝ち目はない! 即座に背を向け逃げ出そ……まずい囲まれている! 振り向いた先には21番の『流れ星』、そして11番の『スキージャンプ』が待ちかまえていた!

↑この部分の書き方が、スピード感があって良い! と褒められて嬉しかった記憶があります。

個人的には、『アサガオの観察日記』、『お正月』、『打ち上げ花火』、『流れ星』、『スキージャンプ』といった、実際の『欽ちゃんの仮装大賞』に出てきそうな作品名にこだわって書いたのを覚えてます。

オチの「ウソカ(嘘か)」も含めて、その発想は「まあ、がんばったな」と思うのですが、文章力は「まだまだだな」と感じてます(笑)。

ライターと小説家は似て非なり。


<まとめページ>【ローリング内沢の】エッセイ・コラムいろいろ

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