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2000年のWEBマガジン『mixer』【1】「最初の記憶」

さかのぼること20数年前、2000年に友だちが『mixer』というWEBマガジンを趣味で立ち上げまして、そこに寄稿させていただいた原稿が発掘されました。

現在、もうそのWEBマガジンはないのですが、ファイルを見ると27本ものコラムを書いていたみたい。

更新頻度は2週間に1度、毎回「お題」が出されて、そのお題に関する内容で、数人のライター陣がコラムを執筆する、というルールのWEBマガジンでした。

すべてのコラム(27本)を公開しようと思ったのですが、いま読んでみると、読むに堪えない原稿ばかりで、ホント泣きそうになりますが、そのなかでも「このくらいの"恥"なら、まあいいかな?」というレベルの駄文をいくつか小分けにして公開してみます。

加えて、最後に、いま過去の自分のコラムを読んでみた感想も付け加えておきまっす。

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mixerからのお題:「最初の記憶」

タイトル:「彼女の最初の記憶」

 「記憶力を高めるソフトウェアは現在13本揃っています。お好きなソフトウェアを選んでダウンロードしてください……」。

 kids memonic(愛称キッズメモ)は、2歳から5歳くらいまでの幼児及びその親を対象とした最強の学習サイトだ。

 画面に日本の県名が表示され、日本地図の中から正しい場所をクリックする、いろいろなポーズをとっている動物が画面上に現れ、並んだ絵の中から同じ絵を探すなど、子どもと一緒に親までもが童心に戻って楽しめる多彩なコンテンツがウリだ。

 私の最終学歴が中卒というコンプレックスもあると思うが、ぜひ我が娘には頭のイイ子に育ってほしい。金のムダ使いと言われようが、親バカだと言われようが、私は50万円もの大金をはたいてキッズメモサービスに登録したのだ。

 さっそく私は、2歳になったばかりの愛娘を呼びパソコンの前に座らせた。パソコンと電話回線を接続し、郵送で届いたばかりのキッズメモ専用アダプターをパソコンに取り付け、キッズメモサイトにログインした。しかし、コードの先がペンのように鋭い専用コントローラーをどのように使用するのかがわからずオンラインヘルプを参照することにした……。

 「脳はすでに知っている他の情報と関連づけて新しい記憶を保持しようとします。それは、以前学習した内容や過去の経験、イメージやストーリー性などを記憶の種として、新しい情報と関連づけて情報を定着させるのです」。

 キッズメモのオンラインヘルプにて記憶に対する説明が音声と文字で解説される。

「……学習のポイントを記憶の種として最初に残せば、それに関連した新しい情報はその種を核にして網の目のように定着していきます。ですからできるだけ最初"記憶の種"を増やしていきましょう。しかもその種は、出来るだけ印象に残るように、突飛な方が良いでしょう……では専用コントローラーの使い方を説明します……」。

 ……私はペンのように鋭い専用コントローラーの先を娘の前頭葉に間髪入れずにブッ刺した!

「ギャアアアァアアアアアアア!!!!!」

 という断末魔のような悲鳴をあげ、娘の頭部からはドス黒い血が噴水のように噴き出したが、これが本人のためになるのなら、彼女も本望だろう……。

◆    ◆    ◆

「とにかく種を植えるんだ。種を植えるんだ。記憶力のいい子に育てるためには頭に種を植えればいいんだ……最初"記憶の種"を増やしていくんだ。その種は、出来るだけ印象に残るような突飛な方がいいんだ……いいんだ……絶対そうだ、そうに決まっている……」。

 ……彼女の最初で最後の記憶は、血走った目でペンのようなモノを見つめている父親の顔だった……。

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【いま読んでみた感想】

なんか、ショートショートの小説にハマっていた時期だったこともあり、かっこつけてノベル形式のコラムにした記憶が。なお、他のライターさんは、「最初の記憶」に関するきちんとしたエッセイを書いていたと思う。

当時は、自分で「すげえかっこいい!」と感じていたと思うのだけど、いま読むと、とくにひねったオチでもないし、"若さゆえの過ち"ってこういうことなのね、と。

ただ、"若い"といえど、当時30歳で、すでにいいおっさんだったのですが!(笑)


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