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2000年のWEBマガジン『mixer』【3】「蛇」
2000年に友だちが『mixer』というWEBマガジンを趣味で立ち上げまして、そこに寄稿させていただいた原稿が発掘されました。
その原稿を小分けにして公開しています(ひさしぶりとなりますが、今回で3回目となります)。
また、最後に、いま過去の自分の原稿を読んでみた感想も付け加えておきましたので、あわせてお楽しみください!
『mixer』の詳細は1回目を参照のこと。これまでの原稿は下記をクリック
mixerからのお題:「蛇」
タイトル:「蛇一家の食卓」
ボクの家は父、母、姉、そしてボクの4人家族。なんのこともないどこにでもいるようなありふれた家族だ。
父は、もとボクシング世界【ヘビー】級のチャンピオン。蝶のように舞い蜂のように刺し、そして【蛇】のようなクネクネとしたねちっこい戦法が得意だったという。
そんなねちっこい戦法で母を射止めたとよくボクに自慢する。鋭い目つきの父だが、顔に似合わずやさしい性格だ。
母は若い頃、ギリシャ神話で有名な西洋の【蛇女メデューサ】似の美しい女性だったという。いまではそんなかけらもないけど……。
もともとメデューサは美しい姿だったのだが、神の嫉妬を買ってしまったために、あのような醜い姿に変えられてしまったのだと、よく話してくれる。
しかしどこまで本当なんだか、いまのブクブクと肥えた母を見ているとまったく想像もつかない。
そして4つ上の姉は今年で22歳。美人といえば美人だが、食事のときカエルを丸飲みするときの顔は、じつの弟でもひいてしまうほどの形相だ。
姉には同年代の彼がいるのだが、先日キスをしようとして間違えてかみついて殺してしまったらしい。うちの家系は代々からの【毒蛇系】なので、ボクも彼女ができたときには気を付けないと……思う。
さて、今晩のオカズは母が腕によりをかけて……あ、蛇だから腕はないんだっけ? これって【蛇足】?
そんなことはおいといて、今晩のオカズは母が作ってくれた殿様カエルのソテー。夕食は決まって4人で食べる習慣だ。
父は先がふたつに分かれた舌でチロチロとビールを舐めながら琉球放送のハブ対マングースの試合中継を楽しんでいる。もうほろ酔い気分だ。
根っからのハブファンで、「現役の父さんならなあ、あんなマングースいちころだ!」がいつもの口癖。最近の試合は八百長試合が多いのでけしからん……と自分はクネクネとした容姿なのに曲がったことは大嫌いという正義感溢れた男だ。
となりでは、目を細めながらまた姉がカエルを丸飲みしてる。牙から毒が垂れてるよ、キタナイなあ。姉の品位のない食事はどうにかならないものか。
そんな姉を横目に母が言う、「おとなりの奥さんが、蛇ハンターに狩られたらしいのよ、なんでも蛇皮は人間のあいだでは高く売れるらしいんですって。恐いわねえ。
アンタも草原を移動するときは人の足音に気を付けないよ」……だって。ま、うちの姉は心配ないだろう。肌もキタナイし、好き好んでこんな姉を捕まえる奇特なハンターなんていないんじゃないかな。
そんなこんなで夜が更けていく。
蛇も鳥も魚も植物も人間もみんな生きている。生きるという意志だけを何十億年も継承している。
寝ればまた明日の朝、日が昇る。こんなことを何十億年も繰り返している。
ボクの家は父、母、姉、そしてボクの4人家族。なんのこともないどこにでもいるようなありふれた家族。
ただひとつ違っているのはボクらが蛇だってこと……でも地球上に存在している生き物という意味では人間や植物などと同じだ。
上手に共存していこうと思う。
【いま読んでみた感想】
このときの原稿の「お題」は、"蛇"でした。
前回(2回目)の原稿の感想でも書きましたが、やっぱりね、むかしに書いた自分の文章というのは、いま読むととても気持ちが悪いわけですよ。
こう、若いときのエネルギーをそのままダイレクトに放出している、というか。つつましさがないというか。
とはいえ、そういう若さゆえの"衝動"というのは大事だったりもするのですが、自分の過去を振り返るとまた別だったりもします。
当時は、"共存"というテーマにはまっていたんでしょうね。こう、生き物・植物も含めて、すべてが"平等"という考え方を、ショートショートの小説風にまとめた感じでしょうか。
もう一度いいますが、気持ちが悪い、です!(笑)
ただ以前も書きましたが、原稿の内容(書き方や構成)がイマイチなだけで、"共存"することはとても大事で、また生けるものすべては"平等"である、という考え方そのものはいまとそんなに変わってないですねー。
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