見出し画像

【全部エースを切る美術館】ひろしま美術館 コレクション企画展示「水辺の風景」



すごかった。
印象派からキュビズム、フォービズムなどなどの一級品が揃う。
西のアーティゾン美術館と言っても過言ではない。

上野界隈で代わる代わる行われる、作家ワンマンピックアップ展覧会の出品作品の中に「これいいな」と思うと所蔵先に「ひろしま美術館」と記載されているものがわりとあって「国内にあるじゃない!」となる場面が過去何度かあった。ピカソ、マティス、ルノアール…などなど

というわけで、ここ数年関東近郊でおめにかかった名品を本家本元の所属先で再会、というおもしろい鑑賞体験となった。

都美術館のマティス展にいらっしゃいましたね
良い作品お持ちですなぁ…赤い室内シリーズだ。

3度目の正直


ピカソのこの子供と羊の絵なんて府中市美術館、POLA美術館で見て3度目の正直でここひろしま美術館である。

3箇所の美術館で見たピカソの絵



この絵は個人的にも面白いエピソードがあった。
夫の祖父の趣味に油絵制作があり、この絵にそっくりな絵を描いていた。
しかしモデルはヤギと幼少期の夫である。子供特有のお腹がぽっこりした体で白いランニングを着せられててもうザ・昭和の子供という出で立ちの夫が描かれている。
本人曰く、お腹のポッコリさは夏でも腹巻きを巻かれていたからだという(寒冷地出身の夫、40数年前は夏でも30度になることは稀な地域だった)

このピカソの絵を知ったときにには既に義祖父は他界していたので、参考にしたのかただの偶然なのか真偽はわからないが、初めて見た府中市美で二人して「おじいちゃんのあの絵と一緒じゃん!」と笑った思い出がある絵だった。

モーリス・ド・ヴラマンク


あまり、意識してみてなかったヴラマンク。


冬景色 1920年ごろ


これは引き込まれる、冬の坂道。
平べったいのに頑張って奥行きつくってるというか。地面の雪道と絵の具のテクスチャが合致してる。両脇の家の描き込みが好きなんですけど、枝みたいな人間も歩いているという。

この辺の絵を見て、その20年後に日本で描かれた松本竣介の「並木道」を思い出した。

松本竣介 並木道 1943年ごろ 
東京国立近代美術館蔵
TORIO展に出ていたのも記憶に新しい。



あぁ、構図的には一緒だな。人の描き入れ方とか見ても影響はあったのだろうか。


そして24年の1月に青森で見た奈良美智の初期絵画。1979年ごろ。
松本竣介に影響を受けていると本人が言うように、画面の共通点は多いと思う。

奈良美智作品
こちらは青森県立美術館で行われた奈良美智展の展示風景。


このヴラマンクから奈良美智まで60年かぁ。
道の絵って題材として沢山あるのだが、こうして自分の中に印象に残っている道を取り出してみると、自分がなぜ惹かれるのか、と思うのだ。
自分自身でわかってることとしては
・自分は路地、道端が好きということ。幼い頃から。道草ばかりだった。
・散歩が好き
・道が好き。方向感覚にも長けている方
・赤瀬川さんの影響から路上観察が好きだから
・その当時のその街の様子がわかるから
とか。

なんの変哲もない道の絵。なのだけども。
でも好き。
スマホのカメラロールを辿ると道の絵が多数見つかる、ということは写真におさめて手元にのこしたくなるくらい惹かれるのだろう。

自分の住む地域から離れてみて、一つの絵を目の前にして、思いを巡らすのも旅の楽しみの一つでもある。

ゴッホもあるよ。


しかも「ドービニーの庭」だよ!!!!


人集りももないのでマジマジと見つめてきた。
いつ見ても筆跡がすごい。


うわぁ、色きれい。でも筆跡が…キテるなぁ。
ゴッホの絵はやはり別格というか。
グググ…ゴゴゴ…といいながら迫ってくるものがある。

しかし世界に3枚の「ドービニーの庭」のうち1枚がここ広島にあるのか。
ほぼ遺作とみなしても良い作品といわれている。
74年に購入。
某生命保険会社がひまわりを買う10年以上も前、か。
この絵の出自については紆余曲折あってここ広島にある。

ひろしま美術館の沿革。

平屋建てです

ひろしま美術館は、1978(昭和53)年11月3日に開館しました。この年創業100周年を迎えた広島銀行が、地域とともに歩んだ歴史の記念事業として設立したものです。

ひろしま美術館公式WEBサイト

というわけで地方地銀が主体となった美術館。
全国的にも珍しいのではないかと思う。
近年は銀行だって安定とはいえず、譲渡だなんだの話題に上がる銀行関連美術館の名前もあるぐらいなので、このコレクションが散在ということにならぬよう、末永く運営をがんばってもらいたい。

実は日本美術もあります。
雀、かわいい。
竹内栖鳳 作 「喜雀」
英語のキャプションは「Four Joyful Sparrows」。
4羽のジョイフル雀…か。かわいいな。
福田平八郎ですよ。
この空間独り占め。
この展示室気づかない人も居るのでは?もう少し動線がわかりやすいといいな。


この後、ここから歩いて原爆ドームの目の前まで行った。
うん。もう何も言えない。

そして市電で広島駅→高速バスで広島空港。
空港でオイスターバーに入りカキフライとレモンサワーで一杯。

これがめちゃくちゃ美味かった。カキフライってこんな旨いのか。
離陸です。さよなら広島。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?