見出し画像

シン・九州 結 弐~とある次元の物語~

結 西都市へ

2024年1月3日(水) 16:03pm 健軍1丁目X-Y 東家
「おめでとうございますぅ」「どもぉ」「あけおめぇ〜」
玄関が開く音 大栗 駿慈国 大志咲雷 吾郎の声
「いらっしゃぁーい」「お兄ちゃーん」が飛び出る、笑顔満開で。
「久しぶりタイ」駿と大志が二人を抱き上げると、
「いらっしゃーい、武も丈も朝からズーッと待ってたのよ」と京子が、
「おめでとう、さぁ どうぞどうぞ」と明日香が、奥から顔をだした。
吾郎「こいはお土産、すき焼きン材料ですらい。肉は鹿児島の黒毛が手に入ったケン、三人でカラスミ出しあって奮発したと。それと小っちゃかバッテン、ケーキたい」
京子「うわぁぁぁ 嬉しいありがとう。最近クリーム系はご無沙汰で」
吾郎は真顔で「イヤいや、武君の誕生日ケーキちゃ」
京子は アッ と止まり「ア ハ、アハハハ」とごまかすと、武を抱っこした駿が冷たい眼で「可笑しくなか」とツッコむ。その横で「それじゃぁお邪魔すっタイ」と大志は丈を抱っこしたまま靴を脱いだ。

去年の9月4日に、ピアクレス配給店街で起きたオープンキャバクラ事件のあと、駿たち3人は東家に遊びに集まるようになった。最初は京子や明日香会いたさで、でもそのうち武や丈と過ごす月に一度の暖かな団欒が、いつの間にか3人の癒しの時間になっていた。
今日で10歳になった武の誕生日のお祝いと、ついでにお正月をマッカラン30年で祝っちゃお、と京子と明日香のお誘いに、3人とも雄叫び喜んでこの日を待ちわびたくせに、会えば少しも顔には出さず、平然を装う九州男児の悲しいサガ、まぁそこが可愛いんだけど。

2024年3月7日(木) 16:26pm ツクシノシマ・サーバー棟 制御室
制御室正面の巨大なメインモニターに映っていた、九州連邦放送協会KHK人気番組『ゆうがた九州』の人気コーナー『突撃!隣の大統領』で、大統領選に立候補した暫定大統領 長崎 皿うどんのインタビューが終わると、西 俊はメインモニターをKnetセキュリティ監視の映像に切り替えた。
ツクシノシマ・サーバー棟に危険をもたらすような異変はKnetには起きていないようだ。
皿うどんへの怒りが段々と収まり冷静になるにつれ、一人ぼっちの寂しい部屋に戻っていく。
「ふぅ」と一息吐いてドスンッと椅子に腰を下ろし、誰もいない部屋を見回しながら「断ればよかったんだ」と去年の6月を想い出した。

去年の5月末、暴動の嵐が下火になって、ジャバン(邪蛮)へ帰る密航船を探していた頃、小倉市役所からUSKカードと携帯電話KTTドコデン配給券付きの出頭命令が届いた。無視するつもりだったけど、携帯電話欲しさに、厭々 市役所へ顔を出すと、窓口の馬面のおっさんが
「あん部屋で待っとかんか」と部屋をアゴで指した。馬にアゴで使われた...
怒りが腹から駆け上がり、馬面を睨みながら、喉のところで飲み込んだ。
ずいぶん待たされたあと、挨拶もなく部屋に入って来たガラの悪い馬面は、携帯電話と書類を投げて寄越し、乱暴に机に腰掛けると
「こいが勤め先」と指をあてた先に 土木作業員とある。
「ど 土木?」と馬面を見返すと「なんかぁ」と睨み返してくる。
「フン、んなのや やったことない」と横を向くと、馬面は ん?と眉を寄せて「勝手にふて腐れとかんか」と部屋を出ていった。
と、直ぐに色白美人が入れ替わり分厚いファイルを抱えて入ってきて
「気分の悪か想いばさせてしまって、ほんなごて申し訳なかです」
と深々と頭を下げた。
馬面とのあまりのギャップに、しばし茫然とその綺麗な顔を見つめていると
「ご職業がインフラっち聞いとりましたケン、福岡州労働局が公共工事の作業員ば割り当てたっち聞いとりますバッテン、おかしかですか?」
に、ちょっと盛って「コ コンピュータのネットワークインフラです。ぼ 僕は情報セキュリティのプ プロです」と姿勢を正すと、美人は大きな瞳をさらに見開いて「ネットワーク...インフラ」と呟き、ちょっとのあいだ固まると
「ほんなごて申し訳なかです。すぐに、すぐに労働局から折り返し電話ばさせますケン」と、何度も何度も頭を下げた。
謝られながら、一緒に玄関まで来たところで周りの視線に気がついた。
空気が怒りに包まれている…誰が見ても、美人をイジメるオタク野郎…
「も もういいですから」と逃げるように市役所をあとにした。
なんか申し訳ない気分でしばらく歩いてハッっと気がついた、
イヤいやイヤいや なんで僕が悪くなってんだ? あれ?
なんか…うまいこと誘導された? まさか馬面からの美人は作戦?
「どうでもいいや、早くここから逃げなきゃ」と頭を振って、見失っていた自分を想い出した。

ところが、その日から一週間も経たずに小倉一帯の密航漁船はすべて摘発され、ジャバンへの逃亡手段は消え失せた。途方に暮れてアパートのシャトーヒサシ3番館で引きこもっていたある夜、ドコデンが鳴った。
「西さんの携帯ですか?」
「はい」
「私はミチザネと申します。初めまして」
「ど どうも」誰だろ?
「小倉市役所からご職業のクレームがありました」
労働局か「ク クレームってわけじゃ」
「前職はどちらに?」
「ふ 福岡銀行でITセキュリティを担当してました」
「あぁ、じゃぁインフラはインフラでも ネットワークインフラですね」
「えぇ」
「そうでしたか、そんな貴重なスキルを。失礼しました」
「いえいえ」貴重かぁ
「改めて西さんのお勤め先を検討しますので少々お待ちください」
「はいはい」と返す自分が笑顔なのに気がつき…うんざりした はぁ〜

そして、次の日 6月14日(水)のお昼過ぎ、ピンポーン コンコン
「西さんいらっしゃいますかぁ、労働局ですがぁ」
「はぁ〜い」 早っ
と開けたドアの隙間から吹きかけられたスプレーに、一瞬で気絶した。

2024年3月4日(月) 10:42am 室井チーム
「やっぱり何かいるね、この政府の背後には」
長崎府 常盤区の大統領官邸での『突撃!隣の大統領』の収録を終えて、西坂町のKHKへの帰り道、出島電停に向かう途中でKHK報道局プロデューサー 室井 剛は、暫定大統領 長崎 皿うどんのインタビューを振り返ってポツリとつぶやいた。
局カメラマン 竹田 鉄雄は「執務室に入る前に、中から聞こえた大阪弁の怒鳴り声、あれは何やったとかねぇ。入ったら部屋には誰もおらんやったし、ラジオっち誤魔化しよったバッテン、関西弁の番組はKIPでは聞いたことなかバイ」と首をひねる。
「室井さんの睨んだ通りやったタイ。ちょっとカマばかけて『こん国ば動かすAIがおると?』っち聞いただけで、あがん動揺ばして。そがんAIのおるっち言っよっとと一緒タイ。わかりやすかぁ」と、ドヤ顔のアナウンス局 守下 恵梨奈。
室井「もしそうならトンデモないスクープだよ。報道局としては追いたいところだけど、しばらくは大統領候補の取材が優先だからなぁ」
竹田「AIに支配されとっとかね、こん国は」
「恐かぁ」と顔を歪める恵梨奈。
俯きながら室井は「いや、どうかな。そのAIは、この国の今を冷静に見て、支配者というよりは、もっと建設的なブレインなんじゃないかな?
であれば、この国の体制はある意味進んだ社会主義の形なのかもしれない」
「よかごた見過ぎバイ。楽観的すぎんね? そがん風に想って安心したかだけタイ」と恵梨奈にキツ目にたしなめられて、室井は「うーん」と言い返せず、目を瞑り天を仰いだ。
竹田「うん、恵梨奈ちゃんの言うごた、政府ば信用しすぎっとはどうかと思うバイ。皿うどんが『九州はジャバンに疲れた人が生き還る場所』みたいに言いよったバッテン、そがん再生工場んごた話は聞いとらんバイ。
それに、九州ば筑紫島に戻して、自分は筑紫君になるっち、なんねそれは。
ほとんど独裁者になるっち言いよっとやなかね」
恵梨奈は「ほんなごて信用できんバイ。こん国ん闇ば暴くとはうちらマスコミん使命タイ」と息巻いた。

2024年1月3日(水) 18:10pm  健軍 東家
関東風か関西風かで散々愉快にモメたあと、牛肉を牛脂で焼いて、たっぷりの割下で野菜や椎茸,しらたきと一緒に煮る、という折衷案ですき焼き作りがまとまり、ようやく晩ご飯が始まった。九州の中でも、すき焼きのレシピが違って楽しい。
「うまかぁ」吾郎は、溶き卵を纏った黒毛和牛を口一杯に頬張りうなる。
武と丈は、初めてのとろける肉に一言も喋らず食べ続けてる。
久しぶりのご馳走に箸とおしゃべりが止まらない笑顔の京子と明日香。
駿と大志は、二人のおしゃべりとすき焼きを肴に、マッカランをやる。
クリスタルグラスに注いだストレートを口にふくむと、鼻から抜けた香りが頭いっぱいに膨らみ、首から降りて胸に広がる。
グビッとやると喉を焼いて腑に落ち染みわたり、内臓も素肌もマッカランで満ちていく。ふたり一緒に「クゥゥ」と噛み締めると、丈の「美味しい?」にふたり一緒に顔をあげて「うまかぁ」とハモる。
全員の笑顔がたまらん。
「そがんいえば、キャバクラ復活は、あれからどがんなっとっと」と話を替えた大志に、京子と明日香の笑顔と箸が止まった。
大志へゆっくりと振り向き「なんで今ね」と明日香がドンヨリと返す。
吾郎が「KHKんニュースになってから、男どもの挨拶んごたなっとっケンねぇ。どがんなっとっと?」と能天気に煽ると、武が小声で
「吾郎兄ちゃん、空気読んで」「へっ?」
京子「事件のあと、何度も労働局に直訴して、何度も却下されてるの。
そもそもぉ、キャバクラやれるほどの量がないの、九州産の日本酒と焼酎だけじゃぁね。まだまだエネルギーや医薬品なんかが優先で、ビールや洋酒を輸入する余力はないんだって、皆んなが復活を望んでいるのにね」
とドンヨリ話したあと、パッと笑顔に変えて「でもね、諦めないわよ。いつか仕事として連邦に認めさせるんだから、明日香と一緒に」
駿がニコッとマッカランを掲げ「待っとっケン」と京子を見つめる。
駿と京子の顔を交互に見る武 それに気づいた駿は武の頭を撫ぜながら
「そうタイ、酔っぱらう前に渡しておかんば」とチャブ台の下から紙袋を取り出して「誕生日おめでとう 武。三人からのプレゼントたい。もう10歳やケン、そろそろ始めんばね」と武に渡した。
京子が頷くのを真ん丸な瞳で確かめて「お兄ちゃんありがとう 何だろ?」
吾郎「さぁ開けてみんね」
袋から出てきたのは、ずっとずっと欲しかったノートパソコンと、「初めてのプログラミング」それにKnet通信モジュール
真ん丸な瞳がどんどん笑顔になって
「やった、やった、やったぁぁぁ」手を挙げ何度も飛び上がって喜ぶ武
全員の笑顔がたまらん。
武と丈は、すき焼きも早々に部屋の隅で並んで寝そべりパソコンを始めた。足をバタバタさせて、武を覗き込む丈のお尻が可愛い。
すき焼きもあらかた片づき、おせちの残りを肴に2本目のマッカラン30年が半分を過ぎた頃、大志が駿のグラスに注ぎながら
「今日、建軍基地の前ば仕事んトラックで通ったら、警備の数がモノモノしかったバッテン、なんかあったとね?」
と、さりげなく なんショッカー幹部として諜報活動を始めた。
「そりゃ…ヒッ モノモノしかさぁ。なんせウチらん基地には…ヒッ 二つの守護神のおっとやケン。ひとつは…ヒッ こん国の未来ば守りよっタイ…ヒッ」
暖かい団欒に包まれ、酔いも手伝って、駿の口が滑り始めた。

未来…

「駿、コラ やめんね 飲み過ぎバイ」と吾郎が駿のグラスを取り上げようとすると「もうひとつん守護神が…ヒッ…こん吾郎たちジャッカル電撃隊タイ…ヒッ エース キング クイーン ジャック 4人のリーダが最近ようやく揃ったケン…ヒッ 世界最強の戦隊が守護神の守護神タイ…ヒッ」
「やめんか、国家機密バイ」と吾郎が駿の口を塞ぐが、
丈の「へぇ、吾郎兄ちゃんってスゴいんだね」を皮切りに、武も京子も明日香も国家機密に容赦なくガンガン踏み込んでくる。吾郎は何も喋れず、真顔で首を振り続け、その横で駿は「ガハハハ…ヒッ…ヒック」と楽しそう。

その騒ぎを横目に大志はジャバン賀酢首相の話を想い出していた
「あんたらも良く知っているAIミチザネがその国の今を集めてよ、それを基にその国の未来を計画するのがAIツクシノシマってぇわけよ」
【シン・九州 転 六 も読んでみて】

間違いなか 賀酢首相の睨んだ通りタイ ツクシノシマは建軍基地におる
大志はグイッとマッカランを飲み干した。

2023年6月14日(木) 19:36pm  T棟
薄暗い部屋で目を覚ますと、ズキッと痛む頭を「ウゥーッ」と抱えた。
「ご気分はどがんですか?」
人がいたのか と、声の方をしかめた顔で見上げると、目の前に綺麗な顔
「顔色はそがん悪くはなかですね」と離れると、白衣? そのポケットの携帯をタップして耳にあてて振り返り
「大臣 西様が目を覚まされました。えぇ顔色は…」ガチャッ
話しながら部屋から出て行った。…大臣?
痛む頭に顔をしかめながら起き上がり、その狭いベッドに腰掛けて辺りを見渡すと、なんか 医務室っぽい なんでこんなところに と想った瞬間
スプレーの噴霧とピンボケのガスマスクが脳裏に蘇った ズキッ「なんで...」

コンコン ガチャッ さっきの白衣の美人に続いて軍服と迷彩服と黒服がゾロゾロと入ってきて僕の前に並んだ。
「い いったいこれはどういう…」ズキッ「ウゥ」
軍服が「部下ん非礼ばお詫びしモス こん通り」と深々と頭を下げた。
「気絶させて、ゆ 誘拐したんですよ。ひ 非礼じゃなくて犯罪でしょ」
フッと美人の口元が緩んだ「おかしくない」「…すいません」
頭をあげた軍服が「じゃっどん、言い訳すっごたって申し訳なかが、君がジャバンに逃亡しようとしちょったことはわかっちょっいモシした」
「えっ、何んて?」
「失礼じゃどん君んこっは調べさせてもらいモシた。真面目で勉強熱心なエンジニアじゃケン、どげんしてん君にお願いしよごたっこっがあっど」「ん?」首を振りながら視線を軍服から美人に移して助けを求めると
「あなたに手伝って貰いたかコツがあるとです」とだけ返す
「も もうちょっとなんか言ってなかった?」に、美人は
「あなたがジャバンに逃げる前にツバつけたとですよ」
「はぁ〜?」
軍服の「お願いしたかゴツ…」を遮って
「そ その前に、ちゃんと名乗ってください」と睨むと、
迷彩服の「まだ素性を明かせる段階…」を「ヨカッ」と遮って、
軍服は「わっぜ失礼しモシた。オイは崎山と申しモス」
迷彩服が一歩前に出て「こちらは、九州連邦政府 崎山国防大臣、私は国防省 サイバー軍 大佐 田柴、大臣同席の事案としてここ迄は水に流してもらいたい。私から話す」
流せんし、上からだし…ムゥゥゥ「まず、ここはど どこですか」
田柴は静かに始めた
「ここは宮崎州西都市。天照神話にも登場するいにしえの聖地
だが今は、あまりに何もない、静かな、目立たない町。
だから、この町の州立産業技術専門校の応用実習棟を接収し、改築したT棟へ、この国の司令塔を祀った巨大サーバーを、隠した
誰もこんなところに大統領府直轄の巨大サーバーがあるとは思わない。
ここはそのT棟 ここにはこの国のすべての情報が流れ込む
なんでイチイチ芝居がかってんだよ、と田柴を睨みながら「それで」に、
田柴は表情を変えずに続ける
「知っているかと思うが、この国のITエンジニア不足は深刻で、学校でも特別枠で育てているが、すぐに増やせる状況ではない。
だが、食料や住居や医薬品、政府や病院やK社、エネルギー、輸出入、USKカード、AIミチザネと国民データベースなど 24時間365日 これらの情報は、休むことなく九州連邦ネットワーク網 Knetを飛び交う。
止まることがない労働の連鎖が生み出す情報も、この社会の恵みのひとつ。
その情報の大動脈Knetを、ITエンジニアたちは不足ながらも日々工夫して支えているが、もうそろそろ限界にきている。ほぼブラックだ」
イラッと「ITがブラックなのは、い 今に始まったことじゃないでしょ。
よ 擁護するわけじゃないけど、ブ ブラックになりたくてなるんじゃない、エ エンジニアの使命と組織の理念に染まった時、知らぬ間に み 身も心も黒く塗りつぶされるんです。でも、あ あなたたちは助ける立場でありながら、ブ ブラックだとわかってやらせているんですよね?」
少し間が空き、それには答えずに田柴は
「それに加えて、ここ最近Knetサイバー空間が、ジャバンや大国やなんショッカーなどの不逞な輩からサイバーテロ攻撃を仕掛けられている。
インターネットとは大統領府の一点でしか繋がっていないにも拘らずだ。
連邦内にヤツラの拠点があるはずだが、未だ特定できていない」
「て 敵もモバイルでKnetに繋いでるから、と 特定は難しいでしょうね」
田柴はニヤッと「そう、敵だ。だが、敵のサイバー攻撃を防衛できるセキュリティエンジニアは、サイバー軍の中にも限られた人数しかいない。
このT棟にも、セキュリティエンジニアを派遣したいが、いないのだ」
「こ この国の全情報が入ってくる よ 要所なんでしょ、ここは?」
「その通り。だから、福岡州労働局から君のITセキュリティスキルが報告された時、すぐに君に白羽の矢が立ったのだ」
「や やり方があるでしょ。もっとまともなやり方が」と声を荒げると
美人が「そいぎん、あなたが逃亡するっち情報が一緒に入ったと」

崎山「わっぜびんてくらっとうはわかりモス。こん通りじゃ、こけけ」
「は?」
田柴「ここT棟のITエンジニアとして、サイバー軍に入ってもらいたい」
「やなこった、ブ ブラック確定じゃん、お断りです」
田柴「この松元君を君につけよう」
松元は大きな瞳で「なんち? 聞いとらんバイ」と田柴を見る。
一瞬沈黙が流れ、プッと吹いて「そ そんなんで、ウンて言う訳ないじゃん」
松元が「そんなん?」とこっちを睨む「えっ?」
田柴「君のアパートの荷物は外のトラックに積んである。近くに一軒家も用意した 。サイバー軍か土木作業員か、今ここで決めてもらおう
なん…だと…

次の日、受け取った僕の名刺はこんな肩書きだった。
国防省 サイバー軍 セキュリティ本部 宮崎州支部 T棟局 西 俊 


結 参「すべてはAIツクシノシマの居場所を特定されないために」につづく

#オリジナル #小説 #創作 #短編 #物語 #フィクション #人新世



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?