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シン・九州 結 九~とある次元の物語~

結 黒船3


2024年4月6日(土) 9:05am  健軍1丁目X-Y
「ふぅあぁ〜ぁ」
ベッドで大きく背伸びをすると、 はようやく目を覚ました。
「ん?メールが...なんだこりゃ」
チラ見したパソコンに、ものスゴイ数のメールが届いてる。
subject:「何してる!タケシ」だの、
subject:「ヤタガラスの大群バイ」だの、
subject:「早く来い」だの、何十通も、オンライン教室のみんなから。
「えぇぇぇ、なんだコリャ、大変だぁ」
サイバー防人に参戦しようと、アプリ クマソを起動しかけた時、メールの先頭に Subject:「オヤブン テェへんだ」を見つけた。
「あっ、オタケからだ」


オヤブン、テェへんだ    Fri. 5 Apr. 2024 23:59:50
今は、オイラがいる原子力潜水艦「上海」の時間で、4月5日の夜11時53分でヤンス。今日の夕方、いま起きてる大国の軍事作戦の全容が、大国国防省から司令室に通達されたんでヤンス。
オヤブン 大国の狙いは、熊本の水でヤンス。
地下水の枯渇で干上がりそうな大国本土を潤すために、阿蘇の美味しい水を、熊本ごと、根こそぎ奪う侵略作戦でヤンス。
五島列島沖で動かない大国 太平洋艦隊は、九州連邦の軍と警察を、ゴッソリ首都長崎に集めるための巨大なオトリでヤンス。
今オイラが乗ってる潜水艦隊12隻は、この侵略作戦の兵士1000人を乗せて、守りが手薄な熊本へ向かっているんでヤンス。
潜水艦隊が、熊本市沖の有明海へ到着するのは、オヤブンの時間で、4月6日の午前8時ごろ、侵略作戦を開始するのは午前10時でヤンス。
侵略作戦が成功すれば、五島列島沖の大艦隊が、領土警護の大義を掲げて、熊本へ押し寄せる計画でヤンス。
オヤブン 急ぐでヤンス 熊本を守るでヤンス。



え、エッ、エエェ、えええええぇぇぇェーーーー
今、9時9分 もう着いてんジャン あと1時間もない  …固まる武
どどど どうしよう えぇーとッ
そうだ、オンライン教室 あれ?ログインできない
じゃあ、先生にメール  あれ?返ってくる
なんで? …凍りつく武
そうだ、ママが..ミチザネで..ドコデンの..話せば..
混乱のまま、武は部屋を飛び出し、トントントンと1階へ
「ママぁ!?」
居ない どこ? ふと見上げたカレンダの4月6日に
”丈 入学式の劇 予行演習 8:00〜" のメモ
「小学校だぁ〜」
武は、バァーンと玄関に鍵も掛けずに飛び出した。

9:12am 室井チーム
KHK 報道局プロデューサー室井 剛が右手でキューを出すと、
局カメラマン 竹田 鉄雄が肩に担ぐカメラに向かって、
守下 恵梨奈アナが元気な笑顔で始める
「おはようございまぁーす。春の日差しと澄んだ青空、とても気持ちが良い朝です。私は今、熊本市東区の閑静な住宅が立ち並ぶ湖東2丁目にお邪魔していまぁす。さぁ いよいよ明日は、大統領選挙の投票日です。3月3日に告示され、およそ1ヶ月に及ぶ選挙戦も残すところあと1日となりました。私たちKHKは『突撃!隣の大統領』総勢1192名の立候補者にインタビューを重ね、いよいよ最後のひとり、今日はこちらにお住まいの大統領候補 八重山 九美さんにお話をお伺いしまぁす」引いたカメラに二人が入る
「おはようございます八重山さん。今日はよろしくお願いします」
に、九美さんは少し曇った表情で「おはようさん。来てもろうたんは嬉しかバッテン、なしてもっと早う来てくれんやったと?」と、イキナリ不機嫌。
恵梨奈は大きな瞳の笑顔で「なん言いよっとですか、最後んほど皆ぃーんなん記憶に残るっタイ」と長崎娘で返すと、
久美さんは「あぁ、そうやなあ」とパッと笑顔が伝染った、簡単に。
恵梨奈「ではでは、選挙管理委員会が公募した『この国の行き先』には、どんな内容で政見書の『こがんとはドガンね』を書いたんですか?」
九美さんはカメラに向き直ると、ウ”ンとひとつ咳払いをして
「ウチゃ『いつでんドコデン ミチザネくん』っち書いたと。ウチら高齢者は、毎日ミチザネくんと話せるごたなって楽しかバイ。元気なんに、病院に行かんでも、話し相手のでけたと。長かぁ時間ば話ん付き合うてくれて、友達んごと寄り添うてくれて、ほんなコツ嬉しかぁ。バッテン、電話はだいたい決まった時間にしか掛かってこんのと、こっちから掛けてんだいたい繋がらんとが、寂しかぁ。やけんさ、ウチが大統領んなったら、ミチザネくんばパートナーにして、いつでんドコデン一緒におれるようにするケン。男ん人にはAIムラサキシキブば作ってもらうケン」
そう笑顔で胸を張った老人に、素直な老婆に、恵梨奈は心に溜まった疑いの澱をぶつけてしまった。
「そがんミチザネば信用してよかと? 友達んフリばして、九美さんの大事な情報ば盗んドットかもしれんバイ。九美さんば操るために」
室井と竹田がギョっと凍りつく。
九美さんは恵梨奈を真っ直ぐ見て「そいは監視型の統治体制ば悪か方に見たトキん見え方タイ。こん国はそぎゃん悪か方には進んどらん。
そいに、仮に盗られちょっても、得られるサービスで命ば輝かせるとやったら、小さか代償タイ」と言い放った。
太刀打ちできない政治家を目の前に、恵梨奈は、そして室井と竹田も
ギョっと凍りついた。でも、すぐに、
「バッテン、今朝はミチザネくんから電話の来んとさ。毎朝8時ごろには掛かってくるとバッテン」と小娘の仕草を見せる政治家に、笑みが溢れた。

9:16am 九州大学 伊都キャンパス 知能研究室
「隊長ぉ〜隊長ぉ〜 どけおんなはるかぁ〜」
研究室の書棚をブチ撒けて、AIツクシノシマの痕跡を探すなんショッカーの戦闘員たち。拘束した研究員たちの、ひっきりなしの トイレぇ〜、水ぅ〜、飯ぃ〜 の催促に応えながらの徹夜作業に、みんな疲れきっていた。
夜が明けて、眠いし腹は減るし、もうウンザリしていたところで、ウェブ男を呼ぶ一人の戦闘員に、研究室の全員が視線を向けた。
床が波打ち、ゆっくりと姿を現すウェブ男。
高いキーの「ドガンしたとか」に、その戦闘員は「こいば見てんネ」
と分厚いチューブファイルを開いて差し出した。
ウェブ男は、そこにサインぺンで書き殴られた
「この国の守護神を、西都市のT棟に隠せ」
の文字を、赤い複眼でしばらく見入ったあと、その戦闘員に
「よう見つけたバイ。1000Eポイントたい」「イーッ」
そして、小森にピョコピョコと向き直り
は、ツクシノシマんコツね」と突きつけた。
ウェブ男は、俯いた小森の「知らん」に暫く沈黙したあと、キーを上げて「フン、よかバイッ。今どこん州も大国騒ぎで守りは手薄やケン、ジャバン陸軍に西都市で暴れてもらうっタイ」
小森がキッと顔を上げて怒鳴る「ヤメロォー」
ウェブ男「ホォ、当たりんごたるね」そして戦闘員に
「宮崎州のなんショッカーば西都市に集めんね。オイはジャバン軍に要請すっケン」そう言うと静かに、スゥーッと、波打つ床へ消えた。「イーッ」

9:18am 健軍小学校 1年2組 丈
「はぁーい、じゃあいよいよ『健軍はじまりの日』第三幕のクライマックスでぇーす」川中先生は、右手にメガホン、左手に台本を持って、教室の真ん中で楽しそうにみんなを眺めてる。教室の後ろでは、お母さんたちが着替えや飾りつけ、小道具の入れ替えなんかを手伝ってる。ボクは、第二幕の阿蘇大神の衣装のまま端っこにいて、衣装のヅラのロン毛を、ママが耳の横でダンゴに束ねてる。
ママ「よしできた。立派な大神だ」
ボクはすました顔をママに向けて「ありがと」
ママのニコッ やっぱりママって美人だ
川中先生「はぁーい、じゃあ、肥後の国司 藤原法昌の一行がやってきまぁーす。はい、伊藤くんたち入ってきてぇー。はい、そこで止まるぅ」
先生がメガホンで法昌にキューを出す。
藤原法昌「阿蘇神社へお参りに行きたいのに、この大雪ではこれ以上一歩も進めぬ。この地に阿蘇大神をお祀りすれば、老人も病人も子供でさえも、いつでも阿蘇大神をお参り奉れるのに」と膝をついて祈りの格好をすると、
川中先生「はぁーい、じゃあ、東くん そこの石にピョンと現れてッ」
とメガホンをボクに向ける。
ダンボールの石に神様の格好でピョンと飛び乗り
「こぎゃん寒かナカ」
丈の突然の熊本弁に、教室中が大爆笑。
「何かぁぁぁ」「ギャハハハハ」「上手くなったっタイ」
川中先生も笑いながら「うん、いい、それで行こう」…よぉーし
「ほんなコツようここまで来らしたぁ」「ギャハハハハ」
「あんたん信心は良ぉぉわかったバイ」「アハハハ」
「バッテン、阿蘇神社は東ば守らんばいかんケン、こけ阿蘇大神ば祀った健軍神社ば建てて、西ん敵から守りなっせ。全部あんたに任すっケン。ウチゃ阿蘇大神バイ」
暖ったかな笑いに包まれる教室  と、そこへ

バァァァン 教室の後ろのドアが勢いよく開いて、が飛び込んで来た。
丈「お兄ちゃん!?」
ママ「武ぃ!?、どうしたのぉ」
武は、ハァハァと荒い息遣いのまま「ママ..はぁはぁ..ドコデン..はぁはぁ..貸して..はぁはぁ」
ママ「何よ、いきなり。どうしたのよ?」
ハァハァ..ゴクッ 武は教室の全員を見廻し、声を張って
「大変なんです。大国が、ここに、熊本に攻めてきます」
「はぁぁ?」「なん言いよっと」「大丈夫ね」誰もまともに聞かない。
武は叫んだ「有明海に 熊本の沖に 大国の潜水艦12隻が 1000人の兵隊で 10時から侵略を始めるって 長崎の大艦隊はオトリだって 大国の狙いは熊本の水だって ハァハァ..ゴクッ 熊本が大国に盗られちゃう」
シーーーン みんな疑いの顔。
でもママは「それ、本当なの?」
武はコクッと頷いて「Knetの、先生にもトモダチにもゼンゼン連絡が取れなくて。だからママのミチザネに話せば、政府に伝わると思って」
察した京子は、サッとバッグからドコデンを取り出して、ミチザネに電話を掛ける。10回コールして首を振りながら武に「...ダメ、出ない」
川中先生が「そういば、今日はミチザネ君から朝の電話がなかったですねぇ」そういえば..と周りからも。

そこへ、教室の前のドアが静かに開いて、教頭先生が入ってきた。
「皆さぁーん、入学式の予行演習ご苦労様です。いつも学校へのご協力ありがとうございます。練習の最中に申し訳ありませんが、先ほど州警察本部から連絡がありまして、なんショッカーというテロ集団と、健軍基地を護衛するジャッカル電撃隊が、すぐそこの東バイパスのあたりで睨みあっているそうで、今すぐにでも武力衝突しそうだ、と言われてました」
「えぇぇ」「なんね、そいは」「ほんなごつね」「物騒な話ばっかタイ」
教頭先生「なんショッカーと言えば、ヤツらが九州大学 伊都キャンパスの知能研究室を封鎖したと、先ほどもニュースでもやってました。物騒な連中が暴れ出したみたいですねぇ」

えっ?「知能研究室が...封鎖ぁ? 先生は...閉じ込められてんだぁ」
そう叫ぶと、武は教室から勢いよく飛び出して行った。

教頭先生は武を追った目を戻し「そういった状況ですので、今この小学校も非常に危険な場所のようです。すいませんが、予行演習は一旦ここで止めてもらって、児童と一緒に帰宅してください。くれぐれも危険な場所には近づかないようにお願いします」と言って一礼すると教室から出て行った。
ママ「いやいや、ここが危険なら、家はもっとヤバいから」
「ウチもタイ」「海からは大国が攻めて来っとやろ!?」「ほんとね?」「どこに逃ぐっと?」ガヤガヤ 児童も親も川中先生も ガヤガヤガヤ
どうしたらいいのか ガヤガヤガヤガヤ わからない。

そんなザワつく教室を眺める 丈

丈の目が天井で (大国の潜水艦) 止まり (攻めてくる) 一点を見つめる
(
阿蘇の水) イメージが (盗られる) 湧いてくる (西ん敵) 丈の耳から (ジャッカル電撃隊) だんだんと (なんショッカー) 音が消えていく

そして... アッ!? ピッカァァーン

とんでもないアイデア
モノ凄いアイデアが、
丈の頭に降り注いだ。
「ママッ」「何?」「駿兄ぃチャンに電話して。今すぐ」
「エッ、なんで?」「いいから、早くッ」
何よ の顔で、京子はまたまたバッグからドコデンを取り出した。

9:41am 陸軍健軍基地 サイバー空間
「ここじゃない、ここには何もいない。どこだぁツクシノシマはぁ」
ツクシノシマ殲滅作戦の司令塔 真っ白な豆芝犬アバター 戦闘AIヤマトタケルは、お供の偵察AIヤタガラス 50匹に重低音で吠えた。

9時過ぎから始まった、ヤマトタケルたちジャバン軍による健軍基地へのサイバー総攻撃に、基地に常駐するUSKサイバー軍2名は、孤軍奮闘、獅子奮迅の活躍で敵の侵入に立ちはだかった。勇敢に立ち向かったが、時代遅れのセキュリティでは最新のサイバー攻撃に抗いきれず、最後のファイヤウォールが突破されると、基地内のコンピュータはことごとく、蹂躙され、消去され、切り離され、侵略者たちに首を垂れた。
ところが、その中に、AIツクシノシマの痕跡は何も、何もなかった。

一匹のヤタガラスがヤマトタケルに恐る恐る近づき、囁いた。
「なにぃ。ウェブ男が、九州大学 知能研究室を封鎖して、AIツクシノシマの開発者たちを閉じ込めている、だと」
真っ白な豆芝の顔がどんどん可愛くなり、ヤタガラスは口をパクパクしながら尻尾を丸めてジリジリとあとずさる。豆柴の怒号が重低音で飛ぶ
「なぜそれを先に言わん」
怒号と一緒に吐いたハイパーノイズ砲に巻き込まれ、ヤタガラス数匹がトバッチリで消えた。
豆柴は「今すぐそこへ案内セイッ」と怒鳴り、そして別のヤタガラスに
「この基地には、ツクシノシマも核弾頭も、何もないと、そうジャバンの賀酢首相に伝えろ。いま直ぐにだッ」と吠えた。そして、
真っ白な豆芝と一匹のヤタガラスは フッ と、この空間から姿を消した。

9:55am 健軍1丁目X-Y
健軍小学校から猛ダッシュで家に帰った武は、靴のまま階段を駆け上がり、最速でアプリ クマソを起動すると、お猿のアバター タケルでKnetサイバー空間へ飛び出した。
タケルは、Knetに繋がる全てのコンピュータの守護者の証 神ID を使って「九州大学伊都キャンパスは どこねコール」をサイバー空間に流すと、コールを熱烈歓迎で受け取った付近のコンピュータたちは「こっちタイ」と行き先を矢印で応えてくれる。サイバー空間じゅうに、次々と現れる矢印。
タケルは、どこねコールを投げ続けながら、矢印を伝って、最速で伊都キャンパスへ飛んだ。

9:55am 九州大学 伊都キャンパス サイバー空間
一方、健軍基地を飛び出たヤマトタケルとヤタガラスは、Knetに点々と散らばる、ミチザネ攻撃のために捕虜にしたサーバーたちを足掛かりに、大きく無駄な距離を飛びながら、どうにかこうにか、九州大学 伊都キャンパス付近のサイバー空間へ辿り着いた。
ヤマトタケル「あれが、封鎖した伊都キャンパスの接続サーバーか」
ヤタガラスがコクッと頷く。
「ここに来るのに、いったい何分掛かってんだッ。あっちゃこっちゃ飛ばせやがってッ。どうしてもっともっと捕虜にしとかなかったッ」
目をそらすヤタガラス。
「フン、まぁいい。で、どうやってあのサーバーに侵入するんだ」
黙り込むヤタガラス。「おいッ」

と、そこへのアバターが飛んできた。周りのコンピュータたちが掲げる矢印に導かれて。ヤマトタケルとヤタガラスは、ソッとサーバーに隠れて
「なんだありゃ? 操縦型アバター? なんだよ、コンピュータども熱烈歓迎じゃねぇかッ ナニ投げてんだぁアノ猿?」ガン見で観察した。

全ての矢印がひとつの接続サーバーを目的地だと指し示している。
タケルは「そこかッ」と、神IDとコードを投げて接続サーバーに憑依すると、あッという間に封鎖コードを消去して、接続サーバーを再起動した。

ヤマトタケル「ほぉ、あんな便利なIDがあるのかぁ。全員、言いなりじゃねぇか。フゥーンッ、頂くとするか」と観察を続ける。

タケルは「先生ッ」と、繋がった伊都キャンパスのサイバー空間へ飛び込むと、そこにいたのは…「エッ?...コンパン?
驚いたのはウェブ男の方だ。突然現れた猿に、高いキーをさらに高くして
「な なんかぁお前はぁ、ド ドガンして繋いだとかぁ」と慌てふためく。

ヤマトタケル「あれがウェブ男か?」
ヤタガラスはコクッと頷く。
「もうちょっと、ナントカならなかったのか、あの見た目」
ヤタガラスは真っ白な豆柴を眺める。「なんだッ」

タケル「お前かッ、なんショッカーってのは。先生はどこだッ」
ウェブ男「誰かぁ、お前はぁ」
タケル「こっちのセリフだ。誰だお前。どうしてこんなことを」
「オイは、なんショッカーの改造サイバー人間 ウェブ男タイ」
「ボクは、Knetの守護者 サイバー防人のタケルだぁ」

ヤマトタケルが「フン、タケルだと 気に入らねぇな。おいお前、あの猿を背後から襲え」と命じると、ヤタガラスは羽ばたいてサーバーを飛び出し、真っ直ぐタケルへ襲いかかる。

タケル「先生を閉じ込めて、いったい何をするつも...」
と、一帯のコンピュータたちが、タケルに「あぶない、うしろ」と、一斉にけたたましいアラートで味方をする。
アラートに反応したタケルは、振り向きざま、襲いかかってくるヤタガラスへ バァァァン と ノイズ砲をブチかました。
吹き飛ぶヤタガラスにビビったウェブ男は、波紋をたててサイバー空間から逃げ出す。「待てッ」とタケルもウェブ男を追って、波紋に飛び込んだ。

あたりは静かになり「ほぉ、やるじゃねぇか。ヤタガラスを一発で仕留めるたぁ、随分慣れてんな」
真っ白な豆柴は、さっきの便利なIDを使って、その接続サーバーへスッと侵入して捕虜にすると、息をひそめて2匹を待った。

10:01am 健軍小学校 1年2組
「もしもし、京子? ドガンしたと?」
ようやく繋がった電話から、いつもと違う緊張した大栗 駿の声。
京子はドコデンをスピーカにして丈にも聞かせながら「今、大丈夫?」
駿「今、基地ん外も中も、大変なことになっとっと。なんショッカーっちナラズもんが、こん基地ば攻めて来よッケン、ジャッカル電撃隊とオイたちドローン隊が基地ば守りよっとさ。バッテン、さっきから基地ん中んコンピュータが、なんもかんも動かんゴトなったケン メールも出せんし、レーダーも観れんし、ミサイルも飛ばせんし、繋がっとは電話だけで、ドガンなっとっとっち、基地ん中がパニクっとっタイ」
京子「もっと悪い知らせがあるの」
駿「ヘッ? なんね、ナンがあると?」
京子「この先の有明海にね、大国の潜水艦が12隻もいて、それに乗ってる1000人の兵隊が熊本の侵略を始めるんだって。10時からって言ってたから、もう始まってるかも」
駿「ハッ?そがん情報はナンも入っとらんバイ」
京子「大国の狙いは熊本の水なんだって。長崎沖の艦隊は、守りを手薄にするためのオトリなんだって」
駿「誰が言いよっと、そがんコツ」
京子「武よ。あの子真剣だった。そんな嘘...つくはずない」
駿「バッテン、今は陸軍もほとんど長崎に行っとぉケン、何もできんバイ」
丈「駿兄ぃちゃん」駿「ん 丈ね?」丈「うん、ボクに..考えがある」
.....
「おぉぉぉ」と驚く教室のみんな。
駿兄ぃちゃんの「そがんうまく行くっちゃろか」
に、阿蘇都媛の姿をした吉見さんが電話に割り込んで
「他に手のあるとッ? 1年2組全員で手伝うケン、すぐに動かんねッ」
駿「ん 誰ね?」
阿蘇都媛「誰でんよかッ、サッサとせんねッ」「おぉぉぉ」

10:02am  健軍神社参道
熊本東バイパスを挟んだ、なんショッカージャッカル電撃隊の睨み合いは、つまらないミエの張り合いから、崩れた。
バイパスの西側で、他の小隊の出方を伺っていたバッタ男は、バイパスの向こう側にいるジャッカルたちに、自慢のジャンプ力を見せつけて、ちょっとビビらせてやろうかと、思いついた。
バッタ男は、ハンドスピーカのボリュームを最大にして
「よう見ちょけジャッカルども、こいがなんショッカーん科学力たい。お前たちん非力ば思い知っがよか」
と、向こう側へ叫ぶと、10m の高さへ一気にジャンプした。
「おぉぉぉ」と戦闘員たちの歓声。
調子に乗って2回3回と「ハッハッハッ」っと笑いながら飛ぶバッタ男。
ところが、次のジャンプで、バッタ男のその上 12m へジャンプして
「ふん、低かぁ。そいでチカラ一杯ね」
と青い戦闘服のスピードエース 咲雷 吾郎が、バッタ男を鼻で笑った。
「おぉぉぉ」とジャッカルの隊員たち。
バッタ男は「な.ん.か.ぁ お前はぁ、ここまで来らるっとかぁ」
15m へ上がると、スピードエースはさらにその上の 18m へと楽々と越えて魅せた。
「ウグググゥ」唯一の取り柄で負けたバッタ男は、怒り心頭、ジャンプ途中のエースへ体当たりすると「進めぇ、蹴散らせぇ」と小隊へ叫んだ。
そのハンドスピーカの大声を聞いたハチ女小隊クモ男小隊
「進むんダッチャァ」「進めぇ」
と、迎え撃つジャッカル電撃隊へ向かって、東へ進軍を再開した。

結 拾「のどかな春の平和な風景の中に、原潜艦隊の8隻が、横一列に進みながら、いまゆっくりと浮上してくる」につづく

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