第50話 母:1994年猛暑
冷夏による米不足になった翌年の1994年。
今度は猛暑の夏となった。
とにかく暑い。
そんな夏だった。
今でこそテレビで熱中症注意という注意喚起が促されるが、このころは今に比べてあまり注意喚起されていなかったような気がする。
それに「熱中症」という言葉ではなく、「日射病」と言われていた。
まぁ何にせよ、とにかく暑かった。
この暑さには母も苦戦していた。
まずは作り置きのカレーが腐ってしまったことだ。
今でこそ衛星管理に気をつけるようになったので、カレーを長時間常温で放置ということはしないのだが、このころは今よりはルーズだった。
火を通していたのだが、見事にカレーが腐ってしまった。
「どんだけ暑いのよ、今年は~!!」
と腐ったカレーを見ながら嘆いていた。
今思うと、中途半端に腐っていて、それを知らずに口にしなくて良かったなと思う。
そして、もう一つ。
この猛暑に急に出てきた変な虫。
これに悩まされた。
5mmくらいの小さな虫。
鈴虫を小さくしたような。
ちなみに飛行タイプだ。
母はこの虫に腹を立てていた。
「くろぐろ」と命名するくらいに。
ちなみにこんな感じだ↓
別に無害な虫なのだが、でもいるとうっとうしいみたいな。
母は目の敵にしてこの「くろぐろ」を捕えていた。
そのため、この夏は常時、掃除機が置いてあった。
一度も片づけることはなかった。
スイッチ一つですぐに「くろぐろ」を捕獲できるように。
「あっ!!またいた、くろぐろ!!」
そう言ってすぐさま電源を入れて「くろぐろ」を掃除機で吸っていた。
それから毎年のように「くろぐろ」と格闘していたのだが、ここ最近は全然見ない。
「くろぐろ」はどこに行ってしまったのだろう?
母が全部取り切ってしまったのだろうか?
まぁでも、二度と現れてほしくない。
ボクたち人間の知らないところで飛び回っていてほしい。
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