第32話 父母兄そしてボクも:ドラマを見ていて

 ドラマを見ていると、登場人物が何か怖い目に遭って走って逃げるシーンがある。
「はぁはぁ…」
 無我夢中で走る登場人物。
 怖い何かから逃げるために、とにかく走る。

 登場人物が逃げ着く先は…いつも決まって人通りが全く無さそうな暗い道。
 そんな場所へ逃げた瞬間、ボクの家族は牙をむく。

 母「あっほやな~、そんな場所に逃げて…」
 父「なんでそんな場所に逃げるんや!!」
 兄「バカじゃねぇのそんなとこに逃げて」
 ドラマを見ながらこんな感じのセリフをそれぞれ吐く。

 登場人物が暗がりの道にたどり着いたところで、息も絶え絶えになり、そこで足を止める。
「そんなところで足を止めんと、はよ逃げな!!」
 母の場合はだいたいこのセリフまで言う。
 ボクを含めた他の3人は言わない。

 呼吸を整えながら振り切ったかどうか確認するために後ろを振り返る登場人物。
 ——しかしそこには!!
「うわあああああ!!」
 だいたいこうなる。
「ほらみろ!!」
 みんなこのセリフを吐く。

 毎回ハラハラして、毎回みんな怒る。
 今も昔も変わらずこんなシーンがあるもんだから、家族も今も昔も変わらずに怒る。
 この十八番シーンがこの先も続く限り、ボクらもこの先も怒り続ける。

 でも最近は、家族のこういう反応を見られることが楽しみだ。
 だからこれからも十八番シーンが続いて欲しいと思う今日この頃。

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