第53話 母:買い物お疲れ様です!!

 皆さんは普段、食料の買い込みに行くとき、何でスーパーへ向かうだろう?
 ほとんどの方は車を利用するのではないだろうか?
 ちょっと出かけたいとき。
 ちょっと買い物に行きたいとき。
 そんなときに車は重宝する。
 車は便利で、ボクらにとって身近な存在なのだ。

 それを他所に、我が母は自転車で買い物へ向かう。
 母は車の免許を持っていないのだ。
 理由は明確…母はどんくさい。
 これは自他共に認めており、
「私は車なんて絶対に運転できん!!」
 と自ら声を大にして言っているほどだ。

 いつもの流れならここで母をバカにするのだが、今日は逆にちょっと褒めようと思う。
 母は車の免許を持っていないので、買い物へ行くときはいつも自転車、あるいは徒歩で買い物に向かう。
 自分の足を使ってスーパーへ向かうのだ。
 どんなに暑い日だろうと。
 どんなに寒い日だろうと。
 雨ニモマケズ。
 風ニモマケズ。
 ボクら家族のために欠かさずに買い物へ行ってくれた。

 体調が悪いときもあっただろう。
 面倒くさいと思ったこともあっただろう。
 それでも母はちゃんと買い物へ行ってくれた。
「あ~疲れた!!」
 そう言って買い物袋から手を離す母の手は、スーパーの袋が手に食い込んだ痕で真っ赤になっていた。
 他にもボクらが急に熱を出すもんだから、薬局に走ってくれたこともあった。
 まるで飛ぶように。すぐに行ってくれた。
「本当にいつもお疲れ様です。どうもありがとう」
 面と向かって言えないので、ここで言っておきます。

「なんか美談になってるけど…別にこれ頑張って車の免許を取ればよかっただけじゃない?」
 …それは言わないでくれ。言わないでおくれ。お願いだ。
 ここは黙って、母の生き様と優しさを褒めて頂ければこれ幸いです(笑)

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