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【通信制高校】先生の変容事例②大事なのは心理的安全性だけではない!? 〇〇とのバランスを意識する

こちらの記事では、SELによる成果、変容の事例を紹介します。「SELによる成果、変容の全体像」は下記のnoteにまとまっています。今回の記事では、SELによる教員の変容をお伝えしていきます。

これまでの記事では、「ノンジャッジメンタルな空気」や「心理的安全性」の重要性にスポットを当ててお伝えしてきました。こうした学びの土台づくりはとても重要なことです。ただ、心理的安全性を担保するだけでは、学びの場として十分ではありません。

今回の記事では、「自分のつくる場」に自覚的になることで、生徒にとってより良い学びの場をつくることができるようになった先生の変容事例をご紹介します。
全国津々浦々にキャンパスがあり、エリアに紐づいてキャンパスに通うという第一学院高等学校の先生の変容事例です。

第一学院高等学校は1/1教育を理念に掲げ、全国に54キャンパスを構える通信制高校です。
「PBL&SELを活用した学びへのシフト」に取り組み始めたのは4年前。
取り組み開始当初は、たった2つの校舎の先進的なチャレンジでしたが、今では40キャンパスまでその輪が広がり、ご家族が生徒さんの成長実感の声を届けてくれるまでになってきています。

■S先生の変容

【Befor】

S先生は、町田キャンパスで勤務し、SEL導入以前から「主体的・対話的で深い学び」に対し、すでに前向きな方でした。しかし、なかなか「助けて」が言えない、自分をさらけ出しにくい特性を持っていました。
学びを促進するためには「心理的安全性」と「挑戦性」、この2つの要素が必要になります。S先生は心理的安全性に寄っていて挑戦性が低め、下記の「学習するために大事なこと4象限」でいうところの「コンフォートゾーン(快適)」にとどまりがちでした。S先生自身が自分をさらけ出しにくい特性を持っているためか、安全性が高く挑戦性が低くなりがちなところに課題がありました。

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【図】学習するために大事なこと4象限

【After】

roku youは第一学院高等学校と、リトリート〜カリキュラム化までをご一緒しています。その過程の中で、改めて「挑戦性」や「探究性」を育むアプローチを行いました。すると、やや低い傾向にあった「挑戦性」と高めの傾向にあった「安全性」のバランスが非常に良くなりました。

<第一学院さんの研修の全工程>
①リトリート
②マイプロジェクト
③生徒向け(対象を絞り)単発のイベント
④カリキュラム化

<S先生の変容プロセス>
①安全性が高く挑戦性が低くなりがち
 ▼
②「挑戦性」や「探究性」を育むことに関してアプローチ
 ▼
③「挑戦性」と「安全性」のバランスが良くなった

■S先生の変容はどのように起こったのか

「挑戦性」と「安全性」という概念との出会い

生徒に心理的な安全を感じてもらうことはとても大切なことですが、それだけでは学びが起きることは難しいです。学びを促進するためには、「安全性」と「挑戦性」の2つの要素が必要になります。
「挑戦性」と「安全性」のバランスの必要性をS先生が理解し、今後は「挑戦性」を高めていくことが求められるということが腹落ちしました。それが、これからの場を設計する際の道標となったのです。

また、S先生のつくる場に対して「安全性」と「挑戦性」のバランスをフィードバックすることにより、自分がつくる場が「安全性優位」になっているのか、「挑戦性優位」となっているのか、あるいは「良いバランス」なのかに対し自覚的になっていき、「挑戦性」と「安全性」のバランスをよく取れるようになりました。

昨年、S先生は他キャンパスへ異動なさいましたが、後任の方への引き継ぎの際には「探究」というキーワードを強くお伝えしていました。町田キャンパスにおいてはroku youと協働している「PBL×SELの時間」を「探究の時間」と表現し、大学の探究の時間とコラボレーションするなど生徒にとってはストレッチの機会(挑戦)になっています。これにより、探究が楽しいものとして生徒の中で醸成されています。

S先生は自分を開示していくという変容を遂げ、カリキュラム作成の段階においては、他の先生に関わってもらう意識を持ちながら進めている姿が見られました。

■なぜこのアプローチを行ったのか

【図】教員マインドセット変容ステップ

S先生自身が自分をさらけ出しにくい特性を持っているためか、「安全性」が高く「挑戦性」が低い場になりがちな点に課題がありました。

上記図の「教員マインドセット変容ステップ」と照らし合わせると、S先生は自分自身の特性も相まって、生徒に対しても心理的安全性のある雰囲気をとても大事にしており、それが場づくりにも表れていたと推測できます。
その結果、「安全性」が高く「挑戦性」が低くなりがちな場として発揮されていました。

そのため、「挑戦性」の重要性の腹落ちや、自身のつくる場に対して自覚的になることで、生徒の学びの場づくりにおいて大事なことは、心理的安全性(他者に対してジャッジしない、感情や思考を受容する)だけではないことに気づきました。こうした発見により、生徒にとってより良い学びの場をつくることができるようになっていったのです。

■rokuyouの関わり

<rokuyouのアプローチ>
挑戦性を育むお手伝い
・「挑戦性」と「安全性」のバランスの概念的な説明
・マイプロジェクトの実施
・S先生のつくる場に対してフィードバック

S先生に対しては、主に挑戦性を育むお手伝いを行いました。

「挑戦性」と「安全性」のバランスの概念を説明

「挑戦性」と「安全性」のバランスの概念を説明したことにより、S先生が場を設計する際の道標になり、バランスを意識するようになりました。

S先生のつくる場に対してフィードバック

自分がつくる場に対して、「安全性優位」なのか「挑戦性優位」なのか、あるいは「良いバランス」なのか自覚的ではないことが多いのものです。roku youは、S先生のつくる場に対してフィードバックすることにより "気づく" という機会を提供しました。

生徒と密接に関わるのは学びの場をつくる現場の教員であるため、教員がどのような場をつくるのかによって、生徒の状態も大きく左右されます。
「挑戦性」と「安全性」のバランスがどちらかに偏ると、生徒の可能性が閉じてしまうこともあります。自分がつくる場を客観的に捉えることは、教員にとってとても重要な力といえます。俯瞰して捉えることは簡単なことではありませんが、まずは学びの場における「挑戦性」と「安全性」のバランスを意識することからスタートしてみるとよいでしょう。

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