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【マイプロ×公立高校②】先生が感じる探究学習の“難しさ”〜生徒の学びを一気に深めるのは「マイ感・協働・対話」〜

こんにちは、rokuyouの親川友里です!
あっという間に2020年度が終わってしまいますね…。今年度はコロナウイルスの影響を大きく受け、生徒も教員も先の見えない不安を大きく抱えながら進む年だったように感じます。休校措置に分散登校、学校現場では目まぐるしく対応に追われていました。
今回も前回に引き続き、通常授業も大変な激動の中で「総合的な探究の時間」実践1年目を駆け抜けた、宜野湾高校での学びを紹介します。

宜野湾高校では、全体よりも先立ってこの転換に着手し、一人ひとりの興味関心をテーマに扱うことで主体性を持ったプロジェクトを企画し、アクションを行う中で地域と繋がりながらより深く学ぶ「マイプロジェクト」の実践を通した総合的探究の時間を2020年度から実施し始めました。カリキュラム・授業の設計だけでなく、先生方の巻き込み、また地域のアントレプレナーと生徒を繋げるなど、より学校での学びを社会に開く仕組みづくりもコーディネートしています。

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「探究」がはじまる、その時先生は…?

高校生の時を思い返してみると、未来の自分について考える機会が多かった授業は「総合的な学習の時間」でした。進路を考えるために大学について調べたり、インターンシップの実施があったり。学校内だけでの学びから開放されるのも、他の授業とは少し異なる楽しさの理由だったかもしれません。
そんな総合が、2022年度からは「総合的な探究の時間」へと改訂されることが決まっています。

生徒が主体的に課題を設定し、情報の収集や整理、分析をしながらトライアンドエラーを繰り返して探究していく。そんな授業を担うことになった先生方、はじめての「探究」に難しさを感じる場面も多くあるようです。総合的な探究の時間(以下、総探と表記)へと改訂されるとはいえ、地域や学校ごとの特色を活かしながら、自己の生き方を考えることに繋げるという点では変化ありません。では、先生方が感じる“難しさ”の正体とは何なのでしょうか?
今回は「総合的な探究の時間」を導入して1年目の先生方と意見交換する中で見えてきた、“探究学習の難しさ”“その壁を乗り越えるヒント”について書いていこうと思います。

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1.
自律を促す「探究」は教える力〔teach〕ではなく、
促進する力〔facilitation〕が求められる

答えが何一つなく、生徒自身が主体的・自律的に行うことが重要な探究学習。基本的に「教えること」を仕事にしている先生方にとって、一番の難しさは「教えてはいけない」こと。特に総探では、教科学習ではある程度決まっている探究する分野やテーマまでも、生徒が自分の内側に問いかけ、思考し、解への道を自身で見つけていく必要があります。先生方の一番の武器である「教える力」を封じられた上で、主体性や協働性を伸ばすための「促進する力」が求められる…探究の壁を高く感じるのも無理はないですよね。

2.
自分でも実践経験が無いため、
指導するために十分な自信を持ちきれていない

そもそも「探究する」ということ自体、いま社会人として生きる私たちは学校で学んだ経験がほとんどありません。多くの人が経験したであろう生徒会活動や部活動、日々の活動の中にある試行錯誤も立派な探究活動になり得ますが、意識的に実践していないため、社会人でも「探究をした」という体感値のある人は少ないのです。
大学までを通して研究してきた専門教科と違って、自分が取り組んだ経験のない「探究」をどう教えれば…(ではなく)どうやって生徒が自走し、成長する学びを促進できるのか。迷いばかりで、自信を持つことが難しいままに実践しなければならない、そんな現実に頭を悩ませている先生は少なくありません。

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探究学習で実践してほしい、
生徒の学びが一気に深まるポイント

今回、rokuyouが伴走しながら取り組んできた宜野湾高校の総探メインコンテンツは「マイプロジェクト」というものです。マイプロジェクトでは、【主体性・協働性・探究性(学び)】という3つの要素を特に重要視して探究活動の設計をしています。先生方は“難しさ”を感じながらどのように生徒・マイプロジェクト に向き合ってきたのか? rokuyouが伴走しながら時には現場講師として体現し、時には先生方との意見交換でお伝えしてきた“難しさの壁を乗り越えるポイント(※実践1年目の学び)”をお伝えしていきます。

1.
常に「マイ感」に寄り添う

他の探究学習と異なる点として最も特徴的なのは、「マイ(my)」プロジェクトであること。全国の高校生たちがプロジェクトを発表し、学び合う機会となっている「マイプロジェクトアワード」の公式ホームページでは、評価基準である【主体性(マイ感)】についてこう表現されています。

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自分の内側から湧いてくる “好き・やりたい(興味関心)” はもちろん、日々を過ごす中で湧いてきた “社会/世界に対する課題や問い” など、プロジェクトテーマが生まれるタネを自分の中から見つけ出すこと。これが、お題を渡さないからこそ気づける、等身大の高校生らしさが発揮されるマイプロジェクトの譲れない要素です。

先生方や社会人メンターがいかに生徒の想い・問いに寄り添えるか、自分の内側に問いながらも「湧き出てこない…」と悩みもがく生徒とどれだけ真剣に対話できるか。生徒の「マイ感」に寄り添い、納得のいくテーマ・アクションのかたちが見えてきた時、彼/彼女らはグンと前進し、学びを深める一歩を自分の足で踏み出していきます。

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写真:あるクラスのマイプロジェクトテーマ一覧

2.
「生徒と生徒」「生徒と社会」との協働を促す

生徒のテーマが見つかったところで、プロジェクトはアクション(実行)の段階へと進んでいきます。そんな中で先生方を悩ませる “どうやってテーマを深めさせるのか?” という教えられない問題。先生方ができること、やるべきことは、生徒たちが探究の道を進むために環境を整えることです。

課題の設定 ▶︎ 情報の収集 ▶︎ 整理・分析 ▶︎ まとめ・表現のステップを進む中で、プロジェクト探究に欠けている部分に気づき、パーツを探して埋めていく作業を生徒自身ができるようにサポートする。自走する探究を目指しながら見えてきたのは、 “生徒同士の学び合い” と “先生以外の社会人との関わり” がとても重要だということです。

宜野湾高校の総探では、“生徒の同士の学び合い” を生み出すため、マイ感のあるテーマ設定や実行段階での困りごと解決など、ひとつひとつステップを踏むたびに、チームを越えて意見交換が生まれるようなワークを取り入れました。教えずして学びを深めるためには、すでに生徒の中にある気づきを個人から開放し、多くの生徒へ共有するための手立てが重要になっていきます。

そして、先生方だけでは難しい “先生以外の社会人との関わり” については、rokuyou が伴走したことで多様な業界で活躍する社会人メンターのプロジェクト講話も実現しました。子どもの頃の人生を通して取り組んでいること 、仕事をする中で見つけた熱量高く成し遂げたいこと 、社会課題から自分の使命を問い生まれたこと など…様々なテーマで社会人が「マイ感」を持って取り組む事例に触れたことにより、プロジェクトを進める上でどんな壁があり、どうやって乗り越えたのかを学ぶ機会をつくることができました。社会人メンターの中には、後日質問や協力依頼などを受けられるようにと連絡先を提示してくれた方もおり、実際に実行段階の相談に繋がった事例も複数あります。

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3.
対話によって、生徒の中にある
「潜在的な問い」を共に言語化する

生徒のマイ感に寄り添い、協働を促している。でもまだ探究までいけていない生徒がいる…。この悩みについては、私たちも総探に伴走しはじめてからずっと思考をめぐらせ、先生方と意見交換をしながら向き合い続けてきました。この壁を越えるための明確な解決策はまだ見つけられていません。しかし、マイプロジェクト の真髄は何か?ということを思い返してみると、そこには「対話」があります。

「子どもの孤食について取り組みたいけど、どうやって深めたら良いかわからない」と廊下で相談を持ちかけてくれた3名の生徒と、ほんの5分の立ち話。
「孤食って、子どものことしか問題になっていないのかな?」
「みんなはひとりでご飯を食べた経験はある?何か問題を感じていた?」
「孤食がなくなると、どんな良いことが起こるのかな?」

対話を重ねると、他者の視点を借りて深めたい問いの数を増やすことができます。出てこない問いを引っ張り出すことはかなり難しく感じますが、生徒たちが言語化できていなかった「問い」を共に見つけることならハードルが下がります。出てきた問いはメモして持ち帰ってもらい、深めたい部分を生徒自身が選択することで自走する探究に繋がる一歩となります。

終わりに

今回の記事では、「総合的な探究の時間」を導入して1年目の先生方と意見交換する中で見えてきた、“探究学習の難しさ”“その壁を乗り越えるヒント”についてお話しました。
試行錯誤を重ね、進み続けた実践1年目。授業以外でも生徒に率直な意見を求めながら、生徒の視点で見えている景色を捉えようともがき、毎回の授業が終わった後には次回の授業案を練り直す。そんなトライアンドエラーの繰り返しで実践してきた総探の時間は、まさに先生方とrokuyouのマイプロジェクト。2年目に持ち越す課題も多いですが、1年間共に生徒の探究に寄り添ってきた先生方は、少しのコツと自信を掴め始めているように感じます。学びを深める光が見えてきました!

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