決算書は会社の成績表
[要旨]
決算書は会社の成績表といわれていますが、決算書を見ると、社長の経営方針などが伝わることがあります。そして、経営者が事業に不安を感じていると、どこかにひずみが現れて、儲かりにくい体質になってしまいます。したがって、経営者の事業方針を実践するために、どういった点を改善すればよいのか、適宜、専門家に分析してもらうことが大切です。そして、言うまでもなく、経営者自身も決算書に大きな関心を持って臨むことが欠かせません。
[本文]
今回も、中小企業診断士の渡辺信也先生のご著書、「おたく以外にも業者ならいくらでもいるんだよ。…と言われたら-社長が無理と我慢をやめて成功を引き寄せる法則22」を拝読し、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、中小企業の社長は、(1)従業員と家族の生活を背負っている、(2)営業、経理、総務、製造、仕入など、会社のすべてのことに関わらなければならない、(3)365日24時間、会社の代表という立場でいなければならないなど、「すごい存在」といえるということをご説明しました。
これに続いて、渡辺先生は、会社の決算書は社長の心の鏡といえると述べておられます。「決算書は、会社の成績表といわれています。1年に1回、数字になって、会社の業績が現れます。決算書は、過去の結果ではありますが、経営者の心情を表しているといえます。私は、年間、多い年で、300社以上の決算書を見ます。そすると、決算書を手に取った時点で、何が良いのか、悪いのか、何が問題であるのかがわかることがあります。決算書には経営者の想念が乗っているのかもしれません。
例えば、お客様との関係性が不安定で、いつか取引を切られるかもしれないという恐怖心がある場合、価格を引き下げて販売してしまい、売上総利益率が下がります。必要以上に在庫が増えます。売掛金の回収も不利な条件となり、現預金が減ります。そして、借入金が増えて、支払利息が増えます。結果として、儲かりにくい体質になります。不安を感じていると、どこかにひずみが出ることの典型例です。また、お金を失う恐怖心を持っていると、会社の経営とは関係のない資産を保有してしまったり、節税をしすぎることで、かえって短期的な資金繰りの悪化を招いているケースもあります」」(24ページ)
私が中小企業の事業改善のお手伝いをするときに、その会社の決算書を見るときは、最初に、貸借対照表の純資産の部をみて、その中の繰越利益(いわゆる、内部留保)を見ます。利益は、損益計算書で見ることもできますが、損益計算書の利益は、1会計期間だけの利益となるので、過去の決算期から当期までどれくらいの利益が累積しているのかを、繰越利益で把握することができます。ちなみに、当然ですが、赤字の事業期間が多いと、繰越利益はマイナスとなり、さらに、その額が大きいと、債務超過の会社になります。
その次は、総資産にしめる純資産の金額の割合、すなわち、自己資本比率がどれくらいあるかをみます。これによって、会社の安定性がどの程度かがわかります。さらにその次は、流動資産と流動負債の金額を比較します。一般的には、流動資産が多いと、経営は安定していると言えます。そして、流動資産の内訳をみます。流動資産が多くても、現預金が少なく、売掛金や棚卸資産が多いと、その一部は資産性が低い(回収不能だったり、実際の処分価額が低い)かもしれないと考えます。そして、最後に、固定資産の部を見て、事業内容から見て多すぎないか、含み損はないかなどを見ます。
ただ、これは、私の見方であって、他の専門家の方は、別の見方をするかもしれません。とはいえ、私は、中小企業経営者の方は、コンサルタントのような専門家の目線で自社の財務諸表を見る必要はないと考えています。というのは、経営者の方は、財務目線よりも、自分の独自性を優先することが、結果的に長期的に自社の事業を発展させることになると、私は考えています。もちろん、財務諸表をまったく考慮しないでいると、赤字になってしまうかもしれないので、最低限、利益は継続して計上しなければなりません。
したがって、経営者の方は、適宜、顧問税理士や、その他の外部専門家の方に、自分の考える事業方針や、自社の財務状況について点検してもらい、必要に応じて事業方針や、改善を要する点について対応していくということが望ましいと思います。そして、渡辺先生も述べておられるように、決算書は会社の成績表です。前回、会社の社長はすごい存在であるということを説明しましたが、どれだけすごいのかが、決算書に現れるわけです。社長は、日々、会社のために尽くしているわけですから、その努力が報われるようにするためにも、日々、決算書に向き合うことも重要であると、私は考えています。
2023/3/26 No.2293
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