ホームランではなくヒットを打つ
[要旨]
事業で成功するには、経営資源の量が多い会社や、経営資源の質が高い会社のように、何か派手なことをするというイメージを持っている方も多いようです。しかし、必ずしも、派手さはなくても、他社を模倣して、少しの改良を加えるという地味な手法でも、成功することは可能です。
[本文]
小説家の犬飼ターボさんの小説、「CHANCE」を読みました。同書は、犬飼さんが、ビジネスノウハウを小説形式で書いているもので、今回は、その中で私が注目したところをご紹介したいと思います。この小説は、主人公の泉卓也が、彼のメンターである弓池から助言をもらいながら、泉が事業家として成長していく内容になっていますが、泉が起業するにあたって、弓池は、次のように泉に助言しています。
「いいかい、社会の構造を変えてしまうような大きな変化を起こしたいのなら別だけど、君のように個人のレベルで成功を目指すのならば、大リーグでホームランを狙う必要はない。草野球でヒットをたくさん打てば十分なんだよ。確実に成功するには、少しの改良で抜きん出ることができる業界を選ぶんだ。つまりこういうこういうことだ。
1.世の中に同じ商売がいくつかあること、つまり市場があること。2.2社以上の大手が熾烈な競争を繰り広げていないこと。大手の競争が激しいと、すでに多数の改良・革新の努力が重ねられていて簡単に真似ができず、入り込む隙がない。逆に1社が占有しているような場合は、独占状態に安穏としていることが多いので、チャンスがある。
3.そういう業界を見つけたら、そこそこ儲けているやり方を真似る。そして、工夫と改善を付け加えて、それより少しでもよいシステムを作り上げる。そうすれば比較的簡単に抜きん出ることができる。この3点をクリアすることはそれほど難しいことではない。こうして成功している人がたくさんいる。画期的ではないからめったに雑誌には取り上げられないけどね」(89ページ)
これは、コトラーの提唱した、地位別競争戦略(リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワー)のうち、経営資源の量が小さく、経営資源の質も低い、弱者が採るべき戦略のフォロワーの戦略です。「成功者」というと、多くの方は、リーダー、チャレンジャー、ニッチャーなどをイメージしてしまいがちではないでしょうか?いずれのポジションも、「華やかさ」があるから、そのように感じてしまうのでしょう。
でも、「成功すること=利益を得ること」と考えれば、フォロワーの戦略で利益を得ることができれば、フォロワーでも成功者になることができます。繰り返しになりますが、経営資源の量が少ない、経営資源の質が低いというと、成功者になれないイメージを持ってしまいがちですが、弱者でも利益を得ることは可能です。すなわち、ホームランを打つだけが点を取る方法ではなく、ヒットを重ねれば点を取ることができるのです。これも当然のことなのですが、経営者の方の中には、ホームランだけを狙い、なかなか点がを取るう方も少なくないと、私は感じています。
2022/6/12 No.2006