経費はすべて雑費で処理
[要旨]
税法上、問題がないからという理由で、最低限の会計処理しか行っていない会社は少なくありません。しかし、そのような考え方であると、銀行から正確な融資審査を行ってもらえないだけでなく、経営者にとっても、事業改善のための有益な情報をえることができません。
[本文]
経営コンサルタントの篠崎啓嗣さんのご著書、「社長!こんな会計事務所を顧問にすればあなたの会社絶対に潰れませんよ!」を拝読しました。私も、篠崎さんと同様に、中小企業の資金調達のご支援をすることが多いのですが、同書には、資金調達支援の専門家として共感する部分が多いので、本日から、数回に分けて、それらについて述べていきたいと思います。今回は、「(業績が悪い会社は)課税所得に関係ないからと。すべて『雑費』で処理している」という、篠崎さんのご指摘についてです。これは、極端な例ですが、篠崎さんによれば、「『交際費』、『寄付金』、『役員報酬』、『給与』以外はずべて『雑費』で処理している会社」からご相談を受けたことがあるそうです。
そして、これも篠崎さんが言及しておられますが、このような会計処理は、税法上、問題はありません。ただ、これは、見解が分かれる可能性がありますが、会社法第431条は、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」と規定しています。そして、その「企業会計の慣行」とは、企業会計審議会が定めた企業会計原則、財務会計基準機構の企業会計基準委員会が設定する会計基準を指していると解釈されています。したがって、会社法の観点からは、前述の会社のような会計処理は、法律に触れると考えられます。
とはいえ、中小企業は、現実的には、大企業と同じような基準に従うことも困難なので、中小企業向けに定められた会計基準である、中小会計指針や、中小会計要領に沿った会計処理はすべきでしょう。そして、法律に触れているかどうかは別としても、費用の科目が4つだけでは、経営者や銀行などが、会社の事業内容を分析することは不可能です。さらに、これは、具体的な方法は会社によって異なるのですが、部門別、主要顧客別、地域別などで事業を分析すると、事業改善のためにより有益な情報が得られるし、銀行からの評価も高まります。
また、篠崎さんが例示したような会社は極端な例ですが、そこまで行かなくても、会社の会計処理を、最低限のことだけしか行わず、さらには、不正確であるという例は珍しくありません。そして、にわとりとたまごの関係のようにもなりますが、業績の悪い会社ほど、会計処理はルーズです。繰り返しになりますが、あまり業績が芳しくなく、かつ、会計処理を適切に行っていない場合は、経営者の方に会計処理が大切であることを認識していただき、少なくとも、中小会計要領に沿った会計処理を行うことを、強くお薦めします。
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