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[要旨]

平鍛造の前社長の平都美江さんは、社長在任時に、新しい機械を活用し、事業を改善してきました。その際、従業員たちからは、いままでの仕事のやり方を変えることに抵抗を示されましたが、改善することのメリットを根気よく訴えることで、改善を実施し、業績を大きく向上させてきました。

[本文]

平鍛造前社長の平都美江さんのご著書、「なぜ、おばちゃん社長は『無間改善』で利益爆発の儲かる工場にできたのか?」を拝読しました。本には詳しく書かれていませんが、平さんは、同社の廃業を決めた父親から、2009年に同社の経営を引き継ぎ、その後、さまざまな事業改革を行い、社長を退任した2021年6月に同社の株式の90%を、約100億円でNTNなどへ売却したそうです。いずれにしても、12年間で、大きく業績を向上させたことは事実であり、その手法については、大きな関心をもって同書を読みました。

同書を読んで、最も注目したことは、「物事に100%はない」という考え方です。「私が、新しい機械を導入しようと提案すると、従業員からは、『その機械ではできない仕事が残る』、『この仕事を機械化したら不良がでるかもしれない』というような答えが返って来る。しかし、よく聞いてみると、それらは数年に1回しか来ない注文に対する話だったりする。したがって、改善に対して、まず、大きなところから考えればよい。もし、100%改善できる、黒を白にできる改善方法があるのであれば、是非、それを実施するべきだが、現実には、そんなドラえもんの出す道具のようなものはない。80%自動化できれば100点満点、3分の2効率化できれば十分、半分でも3分の1でもやる価値がある」

組織は現状を維持しようとする力学が働くので、多くの場合、変わることそのものを拒む傾向にあります。ですから、改善をするときに、メリットの方が大きくても、小さいデメリットを強調して、改善することを拒もうとする事例はしばしば見られます。そこで、経営者は、改善しようとする意欲を強く持つこと、改善のメリットを根気よく従業員に伝えることが大切だと、平さんは述べておられます。その一方で、平さんは、「単純な経費カットはバカのやること」と、小手先だけの改善を批判しています。経費カットのすべてが問題とは限りませんが、根本的な改善を怠り、それをはぐらかすために経費カットをすることは、本末転倒となってしまいます。

とはいえ、ここまで書いてきたことは、多くの方がご理解されることだと思います。しかし、自分が経営者になって、平さんのようなことをしようとすることきには、とても強い精神力が必要になると思います。したがって、組織は現状を維持しようとする習性があることを理解したうえで、事業を改善するには、強い意志をもって臨まなければならないという重要な役割が経営者には課せられているということを、平さんの本を読んで、改めて感じました。

2022/6/7 No.2001

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