全体は部分の総和に勝る
[要旨]
優秀な人が集まる組織は、一見、生産性が高くなるように思われますが、チームワークがうまく機能せず、よい成果は得られません。したがって、生産性を高めるには、チームワークの醸成が大切な要素であり、そのための働きかけを行うことが、経営者の役割です。
[本文]
仕事と介護の両立支援プログラムなどを提供している、リクシスの副社長の、酒井穣さんの、東洋経済オンラインへの寄稿を読みました。酒井さんによれば、動物科学者のウィリアム・ミュアは、「タマゴをたくさん産む、生産性の高いニワトリ(スーパー・チキン)だけを選別し、生産性を高めようとしたが、スーパー・チキンだけで構成されたケージでは、ニワトリ同士で激しい喧嘩をしてしまい、エネルギーを消費してしまうことから、タマゴの生産性が大幅に低下することを突き止めたそうです。
このことから、組織(群れ)として生産性の高いケージを実現するには、利己性を抑制し、利他的に振る舞えるニワトリたちの組織であるということがわかるということです。これについては、理屈はともかく、多くの人が共感できると思います。いわゆる「エース」がたくさん集まった組織は、一見するとすばらしい成果があげられそうであっても、チームプレーがうまくいかないので、結局、満足な成果はあげられなくなってしまうという例は、ときどき見ることがあるのではないでしょうか?
ちなみに、グーグルでは、アリストテレスの「全体は部分の総和に勝る」という言葉に基づいて、チーム単位でのパフォーマンスを分析した結果、チームのパフォーマンスを決めているのは、他者への共感を前提とした心理的安全性であることがわかったそうです。そして、ここまでの記述から分かる通り、成果を高める要素は、チームワークのよさです。したがって、経営者の役割は、「エース」を集めることではなく、チームワークをよくすることです。このことは、頭では分かることなのですが、なかなか実践することが難しいことです。でも、これを実践できれば、ライバルとの競争に大きく差をつけることができます。
2021/11/11 No.1793
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