コンビニエンスストアからCXストアへ
[要旨]
セブンイレブンでは、消費者が、モノにお金をかけるのではなく、自分が体験したいコト(イベント)にお金を使う、すなわち、モノを買う時代から、コトを買う時代へと変わってきたことに対応し、独自ブランドの商品を開発したことから、高い競争力を発揮していると考えることができます。これは、セブンイレブンがコンビニエンスストアからCXストアへ変わってきているということができます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、鈴木敏文さんのご著書、「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、セブンイレブンは、他のコンビニエンスストアと比較して、平均日販が多い理由は、セブンイレブンが創り出すCX(顧客体験価値)の大きさの差であると考えられるということを説明しました。
では、この、セブンイレブンが創り出しているCXとは、具体的なものはどういうものかということについて、鈴木さんは、次のように説明しています。「現代の消費者には、損を回避したいという心理が広がっている。ただ、その反面、何も消費したくないわけではなく、正当な理由があれば、何かを買いたいと思っている。つまり、現代の消費者は、『消費を正当化する理由』を求めているのです。(中略)
なぜ、現代の消費者は、『メリハリ消費』や『ごほうび消費』をするようになったのかというと、それは、自分の選択を納得できる理由、つまり、選択の納得性を求めるからだと思います。お客様は、何を買うかと言えば、価値を買いたいのです。セブンプレミアムゴールドは、高品質な分、価格も高めですが、『今日は週末だから』、『頑張ったごほうびだから』、買うべき価値があると自分の選択を納得できる理由を求め、消費を正当化しようとする。
単に、セブンプレミアムゴールドというモノ(商品)そのものを買うのではなく、生活にメリハリをつけるため、週末には自分へのごほうびとして、セブンプレミアムゴールド買うコト(体験)に価値を感じ、メリハリ消費やごほうび消費を楽しむ。(中略)モノにお金をかけるのではなく、自分が体験したいコト(イベント)にお金を使う、すなわち、モノを買う時代から、コトを買う時代へと変わってきたことを、メリハリ消費やごほうび消費は象徴しているように思います」(35ページ)
この、鈴木さんの指摘しているコト消費は、新しい考え方とはいえ、すでに多くの方が理解している考え方だと思います。しかし、コンビニエンスストアで効果の大きい「コト消費」を創り出すことができるのかということについては、そのように考えるビジネスパーソンは、かつては、あまり多くなかったのではないかと思います。
なぜなら、コンビニエンスストアは利便性を売る場所だからであり、利便性が最も上位にある使命だと、多くの方が考えているのではないでしょうか?しかし、鈴木さんは、コンビニエンスストアでもCXを重視すること、すなわち、コンビニエンスストアをCXストアに変えるような斬新な発想を持っています。私は、セブンイレブンの強さは、このような、顧客の行動を穿って分析できる能力を持った経営者がいることが、最大の要因だと考えています。
2022/11/3 No.2150
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