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融資は手段であって目的ではない

[要旨]

業績が低迷している会社は、融資を受けるために多くの労力がかかり、また、利益を得るための活動も、業績のよい会社と比較して多くの労力かかることから、そのような会社の経営者は、融資を得るための活動を目的化してしまいがちです。しかし、利益を得られない会社は、早晩、事業が行き詰るので、1日でも早く、利益を得る活動に注力しなければなりません。

[本文]

先日、ポッドキャスト番組等を製作している、岡田正宏さんのポッドキャスト番組にゲスト出演しました。ポッドキャスト番組では、銀行からの円滑な融資の受け方についてお話しましたが、その概要は、PDCAを実践することによって、事前に銀行に対して自社の情報を提供することができ、より円滑な資金調達が可能になりますが、PDCAを実践することは、自社の事業改善に役立ち、むしろ、PDCAは、資金調達のために行うものではなく、自社の事業を発展させるための基本的な活動であり、それによって副次的に資金調達も容易になると考えべきものというものです。

ところで、ここまで、融資契約と絡めてPDCAの大切さについて説明してきましたが、中小企業の多くは、PDCAを実践しないだけでなく、本来は、事業を発展させるための手段である融資契約そのものを、目的化してしまっていることが少なくありません。というのは、これまでに私が受けてきた融資申請に関するご相談は、今、目の前にある資金不足だけを解決してほしいというものが多くを占めていました。確かに、資金が底をつけば、事業活動を継続できなくなるので、資金不足に陥らないようにすることは必須です。

しかし、融資を受ける側が、融資を受けることだけに目が向いていると、事業活動も資金調達活動も安定しなくなると、私は考えています。その理由を、順を追って説明します。まず、銀行が融資相手の会社に融資をする理由を考えてみましょう。銀行は、融資を行うことによって、事業会社の発展を支援するという社会的な役割があります。だからといって、融資を希望するすべての会社からの融資申請に応じるわけではありません。では、どういう会社からの融資申請に応じるのかというと、信用力があり、また、収益力がある会社に対して応じます。

もし、そうでない会社に対して融資を行なえば、融資した資金が返済されなくなる懸念や、融資利息を得ることができなくなる懸念が大きくなり、銀行に大きな損失をもたらす可能性が高くなるからです。したがって、融資を受けた会社は、その後、銀行から信用力や収益力を評価されなければ、融資を継続して受けることが困難になり、既存の融資も意味のないものになってしまいかねません。ここで、「そもそも、銀行から融資を受けるために、自社は事業活動を行っているわけではないので、日々、事業活動には懸命に取り組んでいる」と考える経営者の方も少なくないと思います。

これについては、その通りであり、利益を得る活動は、銀行から評価を受けるために行うものではなく、会社自身の目的です。ところが、業績が低迷している会社は、実態として、銀行から融資を継続してもらうためだけに、経営者が労力をかけており、利益を得るための活動には、あまり労力をかけていないということが少なくありません。このようになってしまう理由は、その会社の業界の経営環境が厳しいか、または、経営者の能力が低いために、当面は、抜本的な収益改善が見込めないからでしょう。すなわち、いわゆる、ゾンビ会社の状態を続けているということです。

そうなると、経営者は、顧客に向き合う活動よりも、銀行に向き合う活動に力を注ぐことになってしまうことは、ある意味、当然なのかもしれません。しかし、銀行は、資金を提供することはできても、利益を提供することはできません。銀行からの融資によって。一時的に事業活動は継続させることができますが、自ら利益を得ることができなければ、早晩、事業は行き詰ります。したがって、銀行からの融資を受けることは間違っていませんが、銀行からの融資だけで事業を継続しようとすることは間違いです。

すなわち、融資を受けることは、事業を発展させるための手段なのですが、融資を受けることを目的にしてしまっている会社も少なくありません。これは当然のことであり、多くの経営者も理解していることだと思いますが、繰り返しになりますが、ゾンビ会社の状態から抜け出すことができないでいる会社も少なくありません。もちろん、これも繰り返しになりますが、ゾンビ会社の状態の経営者の方も、現状は望ましい状態ではないと認識していると思います。だからこそ、1日でも早く、経営者の取り組む活動を変えることで、業績や、銀行からの評価も変えるようにしなければならないでしょう。この続きは、次回、説明します。

2023/10/30 No.2511

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