見出し画像

【読書感想文】山内マリコ/あのこは貴族

#読書感想文 #あのこは貴族 #山内マリコ #婚活小説 #婚活 #アラサー女子

*ネタバレを含みます


一言、面白かった!!

 門脇麦さんが好きなのでこの映画も見たいなと思っていたのだが、気づいたら上映が終わっていた。そんな中近所の書店で「女性の本特集」みたいなのが組まれていたので、先に原作を読んでみた。

 1章は東京の上流階級のお嬢様である華子について描かれる。
祖母や母にとっての"成果"である華子は東京の一等地に実家がある絵に描いたような箱入り娘だが、苦戦した婚活を得た後にお見合いをした弁護士である幸一郎との結婚話は”すいすいとボートを漕いでもらっているように”進んでいく。

 「すいすいとボートを~」ってワードのセンスがいい。落ち着くような落ち着かないような、ふわふわした華子の心を表しているような雰囲気がする。

 ある時「時岡美紀」という女性からのLINEが来ていることをスマホの通知で見てしまう。華子はその通知を見ると不安になってGoogleで彼女のことを調べた。こういうのは男女共通なんだな。

 2章はその美紀の話。
 地方から慶應に入って成り上がるも、内部生のコミュニティの強さを思い知る。そしてお金の事情がきっかけで夜の世界に入ると、そのラウンジに来るのは内部生の象徴となる幸一郎だった、という話。

 そのことを思い出す前の帰省するシーンが共感できる。

ー 三十歳を過ぎて恋人と別れることが、こんなに堪えるものだとは知らなかった。
ー 恋人がいなくなった寂しさに耐えて、慣れて、それが平気になるまで待つしかないのだと。

 ああ、すごいわかる。
 そして、独身だと都会でも田舎でも立場がない。結婚によって疎遠になった友達もいる。僕自身もいまは独身なので、実家に帰っても都会でも孤独を感じていることは多い。このあたりの話はとても心に沁みた。


 しかしここでしんみりと終わらないのがよかったたその後、美紀は東京で感じたようだ。幸一郎は東京の貴族だが、田舎の閉じられた世界と根本は一緒なのだ。だから「どこのコミュニティに所属していない自分は自由」だと感じたのだ。

 このあたりの対比は面白い。
 
 孤独と自由は表裏一体だ。

 自由に出来るということは最終的には自分で決断をしなくてはならない。
それは孤独と似ている。

 華子は結局幸一郎と離婚してしまう。まぁ予想出来る展開。 不思議なことに、婚活をしていた時が「はじめて自分の意志で生きている感じがした」と言っていた。
 その経験が活きたのか、相楽さんの音楽コミュニティの事務をやっている。とても生き生きしているようで、ばったり会った幸一郎とは対等に話しているような感じがした。

 最初のシーンは華子がタクシーで帝国ホテルへ向かうシーンであり、気さくなタクシーの運転手に話しかけられるも逃げるように去っていく、というシーン。そして最後のシーンは美紀が新しい会社で田舎と東京を往復している中でタクシーに乗る、というものだった。
 王道かもしれないが爽やかな終わり方で気持ちのいいものだった。

 
 この方の作品は初めて読んだのだが、どことなく青春を感じさせるし、感想文にも熱がこもってしまった。
 婚活で落ち込んだ時は読み返してみよう!笑


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?