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【人物解体新書】行動“だけ”ではうまくいかない! “コンピテンシー”を理解してハイパフォーマーの謎に迫る


㈱ログシーキャリアコンサルタント&新米広報の鈴木さくらです。

成果を出し続けている人の秘訣が知りたい!シリーズ4回目となるこちらの記事、これまでは以下をどうぞご覧ください。

▼1回目:人材業界と営業にまったく興味のなかった私が1年目から同期で売上1位。今でも成果を上げ続けている秘訣とは《前編》
▼2回目:人材業界と営業にまったく興味のなかった私が1年目から同期で売上1位。今でも成果を上げ続けている秘訣とは《後編》
▼3回目:成果を出し続けている人の秘訣とは?スキル・能力以前にハイパフォーマーが持っている、とある動機(欲求)


業績に対する欲求(達成動機)が高いからといって、必ずしも能力が高いわけではなく、欲求と能力は常にイコールではない・・・という前回の話の続きで、ここで重要になるのがコンピテンシーという概念です。


■そもそもコンピテンシーとは

コンピテンシーとは、「高い業績を出している人の行動特性」のこと。いわゆるハイパフォーマーには共通する行動の特徴があると考えられています。

もともとは、ハーバード大学の心理学者であるマクレランド教授が1973年に発表した『Testing for Competence Rather Than for Intelligence』と題する論文で、「人の能力を測定する方法として、それまで学生や社会人の間で広く認知されていた知能テストや適性テストは社会人としての仕事や活動での成功確率を占う手段としては信憑性に乏しい」と指摘したことに端を発しています。

その後、米国務省の依頼で「トップクラスの大学を卒業し、知能テストや適性テストの成績が優れている外交官のなかで業績に格差が生じるのはなぜか」という実証研究を行い、その結果、外交官の職務について成功確率の高い人物には特徴的な行動特性が認められるという結論を出しました。

そこから「高い業績を出している人には共通するコンピテンシー(行動特性)がある」と広く認識されるようになったのです。

以来、コンピテンシーは産業界でも取り入れられるようになり、1990年代後半からは採用や人事評価などに導入する日本企業が増加しました。


■行動を生み出すには4つの要素が関わっている

コンピテンシーの導入を試みた企業のうち、うまく機能できないケースもありました。

それは、「高い業績を出す人の行動特性」がコンピテンシーなので、とかく「行動」にフォーカスされがちですが、企業がハイパフォーマーの「行動だけ」に注目し、それを他の従業員に真似させようとしたことが原因と言われています。

「行動だけ」ではうまくいかない・・・?

どうすればいいでしょうか。その答えとなるのがこちら。

コンピテンシーにもとづく能力モデルについて、人材採用選考について書かれた『コンピテンシー面接マニュアル』では、下図のコンピテンシーのイメージを用いて次のように説明されています。非常にわかりやすいので紹介しますね。

コンピテンシー4つの要素

真ん中の行動という○を囲むように四つの○(知識・経験、成果イメージ、思考力、動機)と四本の矢印が描かれています。まわりの四つの○は、従来型の能力観の中でよく語られてきた「能力」の要素であり、これらがそろっている人材が「能力がある人材」と見なされてきました。確かに、これらは能力の構成要素には違いないのですが、能力があるだけでは成果には結びつかない。だから結果につながることを示す必要があります。

上図の4要素が成果に結びつくためには、行動に還元されなければならないのです。たとえば、知識・経験はあくまで道具であって、これが行動というレベルで使われないままであるなら、いくら質や量があってもその価値はゼロです。
次に成果イメージがあることは、成果を上げる上で有利ではあります。しかしイメージがあっても行動がなければ成果は生まれません。
また、思考力がある、論理的に周囲を説得できる、議論に強い、これらもその一歩先にある行動や実行につながってはじめて意味を持ちます。
さらに、内からわき出るモチベーションが高い、あるいは周囲への動機のアピールがうまいといいうのも、やはり行動の前段階の条件にすぎず、それ自体では何ら成果を生み出しません。

したがって、コンピテンシー的な能力の観点による人物評価とは、その人が、知識・経験、成果イメージ、思考力、動機などを行動に還元して発揮し、成果を生み出すことができる特性を有しているかどうかを評価することに他なりません。


そうなんですよね。コンピテンシーは、その行動を生み出す要素となる「知識・経験、成果イメージ、思考力、動機」があってこそ。具体的にどのような知識・経験、成果イメージ、思考力、動機があって高い成果につながる行動を生み出しているのかが、カギとなってきます。

(4つ目の要素となる「動機」については、コンピテンシー概念を発展させる前の土台となるマクレランドの欲求理論モデルがあります。前回の記事で取り上げたので、併せてどうぞご覧ください。)


■5つのレベルで判別できる

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コンピテンシーにはレベル1からレベル5まであり、より高いレベルが望ましいとされています。


▼レベル1:受動行動
やるべきことを部分的・断片的に行動する
▼レベル2:通常行動
やるべきことを適切なタイミングで行動する
▼レベル3:能動行動
明確な意図・判断に基づく行動をする(明確な理由をもって選択した行動)
▼レベル4:創造行動
独自の効果的な工夫を加えた行動をする(状況を打破しようとする行動)
▼レベル5:パラダイム転換行動
全く新しく、かつ周囲にとって意味のある状況を自ら作り出す行動をする


高い成果を出すためには、さきほどの4要素である「知識・経験、成果イメージ、思考力、動機」を行動に落とし込みながら、かつレベルを上げていく必要があります。

たとえば、成果を出し続けている人のインタビューではこんなことが話されていました。

営業は営業”だけ”できてもスキルアップは全然しないですから。営業だったらたとえば自分で工夫しながら求人原稿を書けるようにならないと、お客様と話せるようにならない。ログシーはたくさんの商材を扱っているので、自分でやってみないとお客様が納得できる説明なんてできないよ、と部下には伝えています。頭で覚えたことを説明するのと、自分が体験してわかったことを交えて説明するのと、どちらがお客様のためになるか。だから私もまずは新しいものを扱うようになった時には自分でまずやってみるということを大事にしています。

営業は営業“だけ”しない。自分で体験して感触を掴んで初めて話せるようになり、お客様のためになる説明ができ、聞いてもらえるようになる・・・間違いなく、レベル4判定ですね。

また、

もし、売上が足りなかったら、あるいは受注できず失注しちゃったら、また新規で取り返せばいい。そういう転換ができるし、今までの経験値があるのであまり悩まないんだと思います。

さらっと話しているように見えますが、コンピテンシーの要素となる「知識・経験、成果イメージ、思考力、動機」が実は見事に総動員されていることがわかります。

すなわち、行間には「目標を達成しようという強い動機があって、これまでずっとそうやってきたんだから新規で取り返せばいいというタフな思考力にもとづき、売上を上げる成果イメージを描きながら、これまで培ってきた知識・経験を駆使しながら創意工夫をして行動に落とし込んでいる」ということが入っており、これこそがこの人が所属する企業での携わる仕事(この場合は営業職)におけるコンピテンシーといえるでしょう。


■コンピテンシーの活用

コンピテンシーは採用や人事評価、育成のシーンで活用できます。

採用や育成を支援させていただく弊社でも企業様にコンピテンシー選考のお手伝いをさせていただく機会が増えました。ミスマッチを防いで、ほしい人材を獲得したり、正当な評価をしたり、育成におけるわかりやすい指標になったりと、有効な手法のひとつですので、今後も導入する企業が増えていくのではないかと思います。

コンピテンシーのレベルは規定されていますが、具体的にどういう「知識・経験、成果イメージ、思考力、動機」にもとづいて、どんな行動を取る人が望ましいかについては、業種職種はもちろんのこと、企業によっても異なりますし、細かく言えば部署によっても変わってきます。

また、「レベルが高いほど良い」と思われがちですが、実は一概に言い切ることはできないのがおもしろいところ。従業員全員がレベル5であると起こり得る弊害もあるかもしれません。自社の文化や将来を考えて、どのレベルの人材をどのくらい必要かを構想することも同時に大切だということも理解しておきたいところですね。


※参考・引用文献
DC McClelland『Testing for Competence Rather Than for Intelligence』American Psychologist(1973)
川上真史、齋藤亮三『コンピテンシー面接マニュアル』弘文堂 (2005)


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