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日本の労働生産性が低い理由は…|迷想日誌

さきごろ、「成長戦略実行計画」が閣議決定されました。
政府は今後、同実行計画を断固たる意思を持って実行に移すとの決意を述べています。

「人」への投資の強化に向けたメニューでは、フリーランス保護制度の推進、テレワークの定着に向けた取組み、副業・兼業の解禁や短時間正社員の導入促進などの新しい働き方の実現などを挙げていますが、これらの対策より重要な指摘がありました。

成長と分配の好循環実現のための考え方です。
経済成長率(1人当たりGDPの伸び率)は、就業者数を人口で割った「労働参加率」の伸び率と、GDPを就業者数で割った「労働生産性」の伸び率を合計したものとしていますが、日本の場合、「労働生産性」が著しく低レベルにあると危惧しています。

日本は2010年代、「労働参加率」の伸び率は、女性や高齢者の就業が拡大したため、年0.8%のペースで、G7の中では最も高いとしています。
日本の「労働参加率」は、絶対値でも53.2%と最も高くなっています。

これに対して、「労働生産性」の低さは深刻です。
「労働生産性」の伸び率は年0.3%で、G7の中ではイタリアに次いで低いのが実態です。
絶対値で見ても7.5万ドルとG7の中で最も低い数値です。

この結果、経済成長率を上昇させるためには、日本ではとくに「労働生産性」の上昇を必要とし、カギはイノベーションにあるとしました。成長戦略によって「労働生産性」を向上させ、その成果を働く人に賃金の形で分配し、労働分配率を向上させることで、国民の所得水準を持続的に向上させる。
これにより、需要の拡大を通じた成長を図り、成長と分配の好循環を実現するというのです。

問題は原動力となるイノベーションです。
日本企業は近年、付加価値の高い新製品や新サービスを生み出すことができなかったため、高い売値で勝負できず「労働生産性」の足を引っ張ったとしています。

まさにこの通りですが、バブル崩壊後の失策により、「失われた30年」が現実化してしまった責任は、民間企業ではなく、政府にあります。経済成長率を抑え込む財政政策の失敗(金融政策は一定の成果がありました)が最大の要因です。
先が見えないデフレ経済では、イノベーションも不可能です。
企業が、AIやビッグデータの活用、ブランド力の強化などを推進できる経済環境を整えることが政府の役目です。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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